何かがうごめくような感覚
──この曲で描かれている“嘘と真”というテーマはどういうところから?
大胡田 前作「OTONARIさん」の制作ではデータでのやり取りが多かったんですけど、今回はわりとバンドのリハーサルの中で歌詞を書くことが多くて。その中でイメージとして浮かび上がってきた色が赤と青だったんですよね。そういった対になるものと言ったら、私は“嘘と真”が思い浮かぶことが多いので。バンドの音の中でテーマが決まったような気がします。
成田 歌詞は大胡田らしさもあるけど、それが自己完結していないと言うか。ちゃんと言葉が外に向かっている感じがしましたね。言葉遊びだけじゃない部分でも楽しんでもらえたらいいなと思います。
露崎 歌詞の韻の踏み方、リズムのよさと大胡田の人間らしさみたいなところが加わって。これまでの積み重ねが凝縮されているのかなという印象を受けましたね。
──リスナーにこの曲をどういうふうに受け取ってほしいですか?
大胡田 一緒に色が見えるといいなって思います。まあ、歌詞の中に赤と青という色も入れちゃってるんですけど(笑)。いろんな人のいろんな部分に当てはまるような曲だと思うので、他人ごとではなく自分のことを歌われてるみたいな、そういう気持ちで聴いてもらえると何か感じるものがあるのではないかと。
成田 「自分たちの音楽ってなんだ?」というところにもつながるんですけど、「この音楽パスピエっぽいよね」と言ってもらって、“パスピエ”っていう形容詞ができたらいいなと思っているんです。だからどう受け取ってほしいかというよりは、説明できない何かでいたいという思いがあるかな。
──この曲を聴いた人が「一歩踏み出してみたいな」と感じるポイントはどういうところだと思います?
成田 僕としてはアッパーな感じやメロディラインのカオティックさだったり、そういう「何かがうごめいてるぞ」という感覚を伝えたかったですね。一歩踏み出そうとしている人って、アクセルをかけて進んでいこうとしている状況だと思うので。
テーマとテーマのぶつかり合い
──「挑戦」をテーマにしたコラボミュージックビデオでは、桑名龍希さんを始めとする16人の書道家さんも出演しています。この曲をどういう観点から映像で表現しようと思って桑名さんに声をかけたんですか?
成田 まず、この曲が持つ雰囲気をより増幅させるものってなんだろうと思っていたんですよ。そこで思い浮かんだのが、これまでもパスピエがずっと掲げてきた“オリエンタル感”でした。それで監督さんといろんなアイデアを考えていって、その中で書道家さんに出演してもらうという案が出てきて。書道家さんとのコラボレーションって、どういう映像になるのか想像が付かないなと思ったんですよね。筆って静と動だったら静のイメージが強いから、「マッカメッカ」のアッパーな曲調と重なり合ったときに、どう表現されるのかという期待感があって。すごく面白そうだなと思いました。
大胡田 スピード感があって、観てて続きが気になるようなものになったらいいなと思いましたね。
──16人というのはかなりの数ですね。
成田 16人の書道家さんが登場するというのは最初に出た案です。もちろん1人の書道家さんを軸にするのもインパクトはあるんですけど、今回は個人と個人がぶつかり合うよりも、テーマとテーマがぶつかったほうが面白いだろうなと思ったんですよ。大人数の書道家さんが作り上げていくものと僕ら4人が作り上げていくものが、ぶつかり合って混じり合っていく……そういうものになったらいいなという意図がありました。
──実際に撮影してみての見どころや感想は?
大胡田 こういう機会をいただけたからこそのコラボレーションなので、やはり書道家さんとメンバーとの絡み合いですかね。あと、書道家さんの書に見惚れました! 見たこともない大きな筆で、手と言うか、もう全身で文字を書いていらっしゃって、1カット撮るごとに拍手喝采でした。
成田 書道家の方が16人も集まると、ものすごい迫力のあるパフォーマンス集団になっていて、彼らから生まれる躍動感と、バンド演奏シーンや楽曲との絡み合い、せめぎ合いがとてもいい形で撮れたと思っています。僕らが筆で塗りたくられるシーンもあるんですが、なにせこんな経験はしたことないのでとても新鮮でしたね。
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“パスピエの音楽”に浸かってほしい
2018年3月29日更新