Reol「Follow Your Heart & Music」|目の前にある発展を疑え

リクルートの企画「Follow Your Heart & Music」特集の第4回にReolが登場。企画のテーマ「挑戦」を受けてReolは「ウテナ」という新曲を提供し、「Follow Your Heart & Music」の特設サイトで公開されているミュージックビデオではダンサー・MIKUNANAとのコラボレーションが実現した。MIKUNANAとのコラボの背景や撮影時のエピソードを交えつつ、「文明を音楽で表現する」ために作り上げたという新曲「ウテナ」に込めたReolの思いを語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 西槇太一 撮影協力 / J-WAVE

念願のダンサーとのコラボ

──今回リクルートの企画「Follow Your Heart & Music」で「挑戦」というテーマを聞いたとき、どういう印象を持ちましたか?

「挑戦」というテーマに対しては「ありがたいな」と思う反面、私自身があまり前向きな人間ではないので「どうしようかな」という迷いもありました。去年リリースした「サイサキ」という曲も「挑戦」をテーマにした曲だったので、今回はちょっと違う切り口で「挑戦」を表現したいなと考えてました。実は去年の「Follow Your Heart & Music」のMVはリアルタイムでチェックしていたんですよ。パスピエが書道家の人とコラボしてたり、神僕(神様、僕は気づいてしまった)が面白い映像表現をしたりしてて(参照:リクルート「FYHM」特集)。

──「Follow Your Heart & Music」のMVをご覧になって、Reolさんはどのようなコラボをしてみたいと感じましたか?

まさに今回実現したダンサーさんとのコラボをしてみたいと1年前から思っていて。今回は念願が叶った形ですね。

Reol

音楽で文明を表現する

──Reolさんは「Follow Your Heart & Music」に「ウテナ」という新曲を提供しました。この曲は、本企画のために書き下ろした曲ですか?

はい。構想自体はすでにあったんですけど、今回の「挑戦」というテーマを受けて制作した新曲です。トラックメイクをお願いしたGigaとは最初に「変な曲を作りたいね」って話をしたんです。「Follow Your Heart & Music」には5組のアーティストが参加すると聞いていたので、その中で「何、この曲?」って言われるような立ち位置をまず目指したいなと。それと「事実上」(2018年10月発売のアルバム)のあとには4曲入りの新作CDを作ろうと計画していたんです。せっかくなら4曲で1つの作品を形作るようなコンセプチュアルな音源にしたくて、世の中の数ある“4つあるもの”の中から四大文明を4曲入りのCDで表現できたら面白いなと思い付いたんですよ。それは別にメソポタミアとか、エジプトとかに引っ張られるものではなくて、自分の中で4つの文明を作ろうという意味で。そういうことを考えている中で「Follow Your Heart & Music」のオファーがきて、私が作ろうと思ってた文明の1つのアイデアを使って新曲「ウテナ」を書き下ろすことにしました。

Reol

──なるほど。ただ「ウテナ」では繁栄すること自体に疑念を投げかけるような歌詞がつづられていますよね。文明が発展することをただ喜ばしいこととは捉えていない。

進みすぎた文明は滅びてしまうんじゃないかという視座と、便利なものを手にすればするほど人間って退化していくんじゃないかという疑問があって。今年の初めに、ライブで中国に行ったとき、どこかでiPhoneを落としちゃったんですよ。中国って意外と英語を話せる人が少なくて、iPhoneがないと翻訳もできないし、コミュニケ―ションが取れなくて、自分がどこにいるのかも調べられない。もともと昔はスマートフォンなんて便利なものがなくても海外旅行はできたわけですから、身に付けるものが便利になった分、人間として退化してしまったような気がしたんですよね。

──その実体験が「ウテナ」の歌詞につながるわけですね。

便利なものが作られる一方、受け取る人間たちは進歩していないのではないか?という去年から感じていたテーマをもとに作った曲が「ウテナ」です。「ウテナ」は「高いところ」という意味なんですけど、人間って力を得ると高い建物を建てたがるみたいなんですよ。ピラミッドのような歴史的な建造物だけじゃなくて、巨万の富を得た人は高いビルを建てる傾向にある。「人間の欲求と建物には深い関係があるのかな」といったことも「ウテナ」を作っているときに考えていました。

プロフェッショナルとの仕事

──コラボ相手にMIKUNANAさんを選んだ理由は?

ダンサーさんとコラボしたいという思いは最初から決まってたから、オファーする方を探していたところ、Clean Banditの「Solo」という曲のMVにNANAちゃんが出演してて。舞妓さんの格好をして踊ってるんですけど、NANAちゃんは動きだけでなくて“表情でも踊ってる”感じがした。その表現力に魅了されて、今回はNANAちゃんが所属しているMIKUNANAというユニットにお願いしてみようと思ったんです。「ウテナ」を作ってる主人が私だとして、MIKUちゃんとNANAちゃんには私に仕えるポジションの役柄を演じてほしくて。

──ReolさんはこれまでもライブやMVでダンスを披露してきたわけですが、今回のコラボで特に刺激を受けた部分はありますか?

もう刺激を受けっぱなしでした。まず2人共超ストイックなんですよ。音楽を作ってる人たちとはまた別のベクトルでストイックだと思います。体を鍛えなきゃいけないわけですし、1日の使い方がまず違うんですよ。ダンスレッスンでご一緒させてもらったんですが、年上なのに私が後輩みたいな感じでいろいろ学ばせてもらいました。

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──MVを制作するうえでReolさんが意識した部分は?

MIKUNANAちゃんは2人共身長が高いので、私がセンターに立つとちょっと見栄えが気になるんですよ。その体格の差を構図だったり、振りの動きだったりで埋めるのがけっこう大変でした。ヴォーグっぽい動きを取り入れて、2人にはセンターの私が映えるような工夫をしてもらってます。とにかく東市(篤憲)監督がずーっとカメラを回し続けるんですけど、MIKUNANAちゃんはどんな要望にもすぐ応えてくれるんですよね。例えば監督が「机を使ってフリームーブして」というアドリブを要求してもすぐに表現できる。すごいプロフェッショナルと仕事をしてる手応えがありました。

──MVの制作に関して、Reolさんはどのくらい関わっていたんでしょうか?

CGを使った表現やLEDのスクリーンを用いた撮影ができる東市監督にお願いしてみたいという案を出して、実際にMVの制作に入ると監督がかじを取っていく感じでした。けっこう細かく絵コンテを描いてくださる方だったので、私は「ウテナ」の世界観にそぐわない表現の軌道を修正するくらいで、MVの表現自体は東市監督が思い描く「ウテナ」を形にしてもらったと思っています。


2019年3月4日更新