感覚ピエロ「Follow Your Heart & Music」|挑戦し続けるバンドからの、挑戦する人々へのメッセージ

新たな一歩を踏み出そうとする人々を音楽の力で応援するリクルートの企画「Follow Your Heart & Music」。この特集シリーズのラストを飾るのは感覚ピエロだ。彼らはこの企画のテーマ“挑戦”を基にして新曲「ARATA - ANATA」を書き下ろし、映像作家の加藤マニ、女優の新條由芽とのコラボでミュージックビデオを制作した。メンバーの秋月琢登が自ら代表取締役となってレーベル&マネジメント会社を運営するなど、これまでDIY精神を貫きながらさまざまな挑戦を繰り返してきた感覚ピエロ。彼らは、どんな思いで“挑戦”をテーマにした今回の企画に参加したのか。メンバー4人に話を聞いた。

取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 斎藤大嗣

僕らはまだ出会えていない人たちのほうが多い

感覚ピエロ

──感覚ピエロは今回、リクルートの企画「Follow Your Heart & Music」の一環として“挑戦”というテーマに基づいてミュージックビデオを制作しましたが、オファーがあったときの感想はいかがでしたか?

秋月琢登(G) 僕ら自身、11月に幕張メッセでのワンマンが決まってたり、2019年はまさに挑戦の年だなと思ってて。このコンセプトの企画に僕らが参加できるのはすごく意味があることだし、光栄だなと。

横山直弘(Vo, G) 僕は大学に通ってたから、リクルートさんといえば就活、つまり「自分の新しい世界を切り拓くための手助けをしてくれる企業」というイメージがあったんです。新しい世界を切り拓くというのは、僕たちが今までの活動で積み重ねてきたこととリンクする気がしたので、一緒にクリエイティブなことができたら面白そうだなと思いました。

──この企画のために書き下ろされた新曲「ARATA - ANATA」は、秋月さんが作詞作曲を担当したんですね。

横山 僕らは4人それぞれ、作る曲や歌詞のバリエーションやカラーが明確に違うんですけど、今回のお話をいただいたときは「このテーマにハマるのは彼(秋月)のカラーしかない」って、方向性ががっちり見えてたんです。

滝口大樹(B) うん、そうだね。

西尾健太(Dr) 「琢登のカラーやろな」ってのは総意やったと思います。

秋月 でも難しかったですけどね。途中でほかのメンバーに歌詞を書いてもらってもいいかも、と悩みましたし。結局「この曲は自分で書きたいな」と思って全部書かせてもらいましたけど。

秋月琢登(G)

──感覚ピエロはこれまでもタイアップ曲を多く作ってきましたが、テーマをもらって曲を書くのは難しいところもあるんでしょうか?

秋月 そうですね。例えばドラマや映画の主題歌を書き下ろすときに、与えられたテーマにできるだけ沿いつつも、僕らが本来言いたいことも入れて曲にしないと、ただのドラマや映画を観た感想文になってしまうので。でも、そこがハマったときにすごく意味のあるタイアップになるんですよ。

──今回の曲の場合“リクルートのイメージに沿った部分”と“感覚ピエロが本来言いたいこと”はそれぞれなんだったんでしょうか。

秋月 リクルートさんの「まだ、ここにない、出会い。」というコーポレートメッセージが印象に残ってて、「僕らはまだ出会えていない人たちのほうが多いんだろうな」と思ったんです。僕たちのことを待ってる、まだ会えていない人もきっとたくさんいるだろうし。だから、明日僕らと出会うであろう人、明後日、1年後、5年後、10年後に出会うかもしれない人をイメージしながら、いろんな選択肢の中で新生活を選んで歩んでいく人を後押ししたいと思ってこの曲を書きました。

11月の幕張メッセワンマンに向かう今年を象徴する1曲になった

──秋月さんが作ってきた曲を聴いたときに、皆さんはどう感じました?

横山直弘(Vo, G)

横山 意外だなと思いました。「等身大アンバランス」とか「拝啓、いつかの君へ」「加速エモーション」のような曲を想像していたら、予想外にドライブ感のある激しい曲で。リクルートさんからのお話に対して感覚ピエロがどんな曲を提示するべきなのか、すごくもがいた跡が見える気がしたんですよ。そういう意味で、この曲を作ること自体がある種の挑戦だったんだろうなと僕は感じました。

秋月 うまいこと言うね(笑)。

滝口 作詞する中で「まだ、ここにない、出会い。」って言葉に引っかかってるというのは聞いてたから、サビの「新たに会いたい」ってフレーズを聴いて「あの言葉をあえてダイレクトに使ったな」と思った。

西尾 僕はいつも「琢登の歌詞は透明」って言ってるんですよ。聴く人によって見える色が違うと言うか。今回もその透明さはあったんですけど、いつもと違う力強さがあったのでビックリしましたね。

──確かに、この曲には聴く人を奮い立たせようという意識を感じますよね。

秋月 まあ、曲の冒頭で「Ladies and gentlemen!! 『選択』の連続を生きる全人類に捧ぐ」って言ってますしね(笑)。仕事にしろ学問にしろ恋愛にしろ、それぞれみんないろんな選択を続けてきた結果が今なはずなので、これも聴くタイミングによって刺さり方が違う曲だとは思います。

──横山さんはレコーディングのときに、曲を届ける相手をイメージしながら歌っているんですか?

横山 そうですね。誰を思い描いて歌うかはすごく真剣に考えてます。声は人間の体から出ているものなので、歌うときに何を頭に描くかによって揺らぎ方とかが少し変わるんですよ。だから今回もいろんなパターンを試してみたんですが、一番しっくりきたのが“織姫と彦星”で。会いたくても今は届かない、でも必ずいつか出会いたい人。そういう誰かを待ち望んだときに、こんな歌が歌えるんだなって納得したんです。

──そのイメージは曲を作った秋月さんと共有していたんですか?

西尾健太(Dr)

横山 はい。9割方できた段階で僕にも歌詞を見せてもらって、そこから2人で「ここはこういうふうにしよう」みたいな話し合いをずっと一緒にやってました。感覚ピエロはみんな曲を作るけど、僕は誰の曲でも歌うので、作詞した人が何を考えて書いたのかは密に共有してますね。僕が勝手に自分だけの解釈で歌うのもちょっと違うと思うので。

──演奏面で、いつもとは違う“挑戦”をした部分はありますか?

西尾 ドラムはある程度のパターンを琢登が考えてくれてたので、そのテイストを残しつつ、スパイスとして自分らしさをいかに出せるかを考えたのが挑戦だったかな。

滝口大樹(B)

滝口 ベースに関しては、イントロではドライブ感が出るように音数を詰め込みつつ、サビでは歌詞の本質をちゃんと伝えるために、歌が聴きやすくなるように刻もう、みたいなことを考えてフレーズを組み立てました。

横山 去年までは各メンバーの担当楽器について、言い方は悪いけどそれぞれに丸投げしていたところがあったんです。その人が作ってきたものに対して誰も何も言いませんよ、みたいな。でも最近、それに対して「自分たちの意見をぶつけ合おうぜ」ということにしたんです。1曲の中で自分たちが関わる部分が増えたほうが、よりバンドらしくなるので。結成から5年経った僕ら4人の関係性が、最近は音楽に乗せられているような気がします。

──それはいい状況ですね。

横山 だから、これからどんな曲が生まれるのかが楽しみなんです。今回の「ARATA - ANATA」は2018年の年末に、2019年を思い描きながら制作した曲なので、11月の幕張メッセワンマンに向かう今年の感覚ピエロを象徴する1曲になった感触がありますね。