シドのShinji(G)とRayflowerの田澤孝介(Vo)による新ユニット・fuzzy knotが、1stシングル「こころさがし」を配信リリースした。
ともに長いキャリアを誇る2人が作り出した「こころさがし」は、どこか1990年代のJ-POPを想起させる懐かしさが漂うキャッチーなナンバー。90年代のムードを織り交ぜつつ、ジャンルに縛られない音楽を発信することをコンセプトとするfuzzy knotの音楽性を明示した楽曲に仕上がっている。
今回音楽ナタリーでは、Shinjiと田澤にインタビューを行い、2人の出会いやfuzzy knot結成の経緯、お互いのミュージシャンとしての魅力などを明かしてもらった。
取材・文 / 真貝聡
初めて会って1時間後には「一緒に音楽をやりませんか?」
──新ユニットが始動するということで、まずは結成の経緯を聞かせてください。
Shinji(G) 初めて会ったのは2年前かな?
田澤孝介(Vo) うん。ある知人から「シドのShinjiくんという人が連絡先を知りたがっているんだけど、教えてもいいかな?」という連絡がきて「どうぞどうぞ!」って。
Shinji キャリアで言えば田澤さんは先輩で、昔からWaive(田澤が組んでいたバンド)のことも知ってたんですよ。すごくいいバンドだなと思っていて。やっている曲調も自分の中にスッと入ってくるし、もちろん歌もうまい。だけど対バンする機会はなかったのかな?
田澤 うん、なかったっすね。
Shinji 僕が個人活動を始めるにあたり、歌モノをやりたいと思っていて。そこで最初にパッと浮かんだのが田澤さん。ぜひ手伝ってほしい、という気持ちから「田澤さんの連絡先を教えてほしい」と知人に相談しまして。めちゃくちゃ怪しかったと思うんですけど、意を決して「飲みに行きましょう」と誘いました。
田澤 その時点で何かあるなと、うっすら思いましたね。前からシドは知ってて、なんならライブも観に行ったことがあるんです。しかも「この曲好きだな」と思ってクレジットを見たら、全部Shinjiくんが作った曲だった。だからお近付きになれるなら、という思いで飲みに行ったのが最初の出会いでしたね。
──今まで交流がなかった相手をユニットに誘うのは勇気がいることですよね。どういうふうに切り出したんですか?
Shinji もちろん「一緒にやりましょう」と誘うのはデリケートなことだとわかってました。だけど初めて会った日、飲み始めて1時間後には「一緒に音楽をやりませんか?」と切り出した気がするんですよ。
田澤 そうやね。「何かを言いたそうにしてるぞ」としゃべりながら感じてたんですよ(笑)。それで「オッケー! ちょっと腹を割って話そう! 今日はなんの用なんだい!?」と聞いたら「2人でユニットを組みたい」と。
──それが2年前の出来事?
田澤 そうです。
──この空白の期間は?
田澤 2人でやることが決まったのはいいけど、あくまで僕らだけの話だったので、「まずは事務所に話さなきゃ」とか、了承を得たところで「どうやって展開していくのか」などのハードルがいくつかあって。で、何をするにもまずは「こういうことをやりたいんです」と示すための曲がないとダメじゃないですか。そこに時間を要したんですけど、それはしょうがない部分ではあります。
Shinji そうだね。これは僕のいけないところなんですけど、何に対してもすごくこだわっちゃうんですよ。曲作りで手を抜くことはできないし、それが新しいプロジェクトの一発目の楽曲となれば、なおさら気合いが必要だった。ずっと作曲はしていたんですけど、半年経ってもAメロすら出てこないような感じで、田澤さんをずっと待たせてしまってました。で、去年はコロナが流行して、決まっていた仕事がなくなってしまい、空いた時間を利用して曲を作っていきましたね。
Waive解散ライブで泣いていたShinji、“穴のないシド”の活躍を見ていた田澤
──始動に向けて慎重に準備をされていた、と。そもそもお互いのバンドを認識したのはいつ頃なんですか?
Shinji 2000年始めに放送された「BREAK OUT」だった気がするんですけど、Waiveの「spanner」が流れていてめっちゃいいなと思ったんですよね。その後、シドのファンから「ある人に似てる」と言われることが多くなって。誰なのか聞いたら、(杉本)善徳さんだった。それからさらに聴くようになって。なんか……顔が似てるだけじゃないのかなって(笑)。
田澤 アハハハ!(笑) ホンマやな!
Shinji とにかくWaiveのファンだったので、解散したときのライブDVD「LAST GIG.」を持っているんですけど、あれを家で観て普通に泣いてましたね。
田澤 それはホンマのファンだ!
Shinji Waiveの解散以降は、僕らもいろいろと動いていたので詳しくないんですけど。たまたまRayflowerのSakuraさんがシドのディレクターをやってくれていたので、その流れで新しいバンドのことも知って「あ、田澤さんのバンドじゃん!」と。そこからまた聴くようになりました。
──田澤さんはシドの存在をいつ知りましたか?
田澤 まだシドがインディーズで、ドラムの方がイカをくわえていたアー写のタイミングかな? 「すごいバンドが出てきた!」とバンド界隈で話題になっていたんですよ。
──おそらく2004年なので、ちょうどShinjiさんとゆうやさんが加入した頃ですね。
田澤 そっかそっか。音源を聴かせてもらったときに、ホンマにええバンドやなって。自分でチケットを買ってライブを観に行きましたね。それ以降はアレよアレよとお売れになって(笑)。「やっぱええなあ」と思いながら、遠巻きに活躍を見させていただいてました。
──シドに対して、どんな印象をお持ちですか?
田澤 とにかく曲がいい、それに尽きますね。マオさんの声もいいですしね。穴のない人らって感じ。あと、音を聴けばすぐにシドだってわかるから、やっぱりヒットするバンドってそういうことなんかなと感じた次第です。
──お互いの人間性はどうでしょう?
Shinji 表面的には僕が暗くて田澤さんが明るい感じなんですけど、話していると根っこは一緒な気がします。
──根っこというのは?
Shinji お互いに人見知りとか(笑)。
田澤 そうなんですよ。しゃべりたければ知人を介さずに話せばよかったんですけど、お互いが背水の陣になるまで切り出さないところが似てる。あとは2人ともこだわりが強くて、他人から見れば「気にせんでもええやん」と思うところがどうしても許せないとか。そのへんは自分がもう1人おるくらい似てますね。
Shinji あと、よくも悪くもなんでも屋さんな気がするんだけど。
田澤 ああ、そうかも。
Shinji あとレコーディングで提案したら、田澤さんは「いいね!」と言ってなんでも順応してくれる。すごく器用な人だなと思います。
田澤 それって狙っている部分が僕の中でよしとされているからであって。やりたくないことはちゃんと言うよ。意見の衝突がなかったのは、提案されたものが本当にいいと思ったからだと思う。お互いの琴線に触れるメロディが似ているんじゃないかな。例え聴いてきた音楽が違ったとしても、その中にある根本的なモノが近しいと思うんよね。
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fuzzy knotは一番意味のない名前