ナタリー PowerPush - FUZZY CONTROL
亀田誠治とタッグを組んだ自信作「SWEET RAIN SWEET HOME」
FUZZY CONTROLが約1年ぶりとなるニューシングル「SWEET RAIN SWEET HOME」をリリースした。プロデューサーに亀田誠治を迎えたこの曲は、「大丈夫 そのままでいいからね」「今はこのまま帰ろう」といった言葉が優しく強く響く“歌”を中心に、伸びやかなストリングスの音色が寄り添うミディアムナンバー。デビューから8年、さまざまな経験を重ねた3人の絆と、お互いが持つバンドへの信頼が生んだ、珠玉の1曲だ。またカップリングには今年の4月に開催されたツアーの中から「1℃(イチド)」や「SUNSET」などのライブ音源を7曲収録。初のアコースティック音源も聴き逃せない。
今回のインタビューでは、メンバーが新曲に込められたメッセージを語ってくれた。音楽に対する真摯な姿勢と共に、笑いが絶えない3人の底抜けに明るい人柄と関係性も感じてもらえるはずだ。
取材・文/上野三樹
どんな状況でも3人でやれば喜んでもらえるような音楽が作れる
──「SWEET RAIN SWEET HOME」は、今のFUZZY CONTROLのどんな部分を打ち出したいと思って作った楽曲ですか?
JUON(Vo, G) 今回はメンバー3人共に「みんなにポジティブなメッセージを伝えられる曲を作りたいよね」っていう気持ちがありました。
JOE(B, Vo) 昨年はDREAMS COME TRUEのライブにオープニングアクトとして出演させてもらう機会も多かったんです。そういう、言ってみればアウェイな状況の中で、大きな舞台に立つという経験をさせてもらって。そのときにメンバーの大切さや絆を実感して「やっぱりこの3人でずっとやっていきたいな」って思ったこともあるし。そういう気持ちも、この曲を作るきっかけになったと思います。
SATOKO(Dr, Vo) どんな状況でも3人でやれば喜んでもらえるような音楽が作れる、お客さんが1人でも何万人でも、どこででも絶対に喜ばせられる、っていう気持ちをこの1年で作り上げることができたんです。そこから「誰かがちょっと元気がないときに、元気になれるような曲にしたいね」っていう思いで「SWEET RAIN SWEET HOME」は生まれました。
──3人の気持ちがひとつになってたから、やはり制作もスムーズでした?
JOE 制作当時、JUONはたくさん曲を作ってて、その中のどれもすごい好きだったんです。でもその中からプロデューサーの亀田(誠治)さんがこの曲を選んでくれたということが興味深かったし、制作が進んでいくうちに、すごく納得がいきました。
SATOKO 音楽って目に見えないし触れないから「こうなんだ!」って全員で確定していく作業って難しいし、簡単でもあるんですよ。今回みたいに、みんながわかってるときは、すぐできちゃう。
JUON それがやっぱり、いい曲が生まれるときの感覚だよね。そこからはもう、歌詞もアレンジも早かったです。
SATOKO うちらは割と、すぐ曲ができちゃうことが多いんですよ。ほかのアーティストはどうかわからないけど、JUONはたくさん曲が書ける人で。あんまり見たことないですね、こういう人。だってうちら、出してない曲めちゃくちゃあるもん。出してない曲だけで10枚アルバム作れるくらい(笑)。
──じゃあアレンジを練って練って煮詰まる、みたいなことも少ない?
JUON うん。
SATOKO 練って練って煮詰まるのは、JUONが最初に曲を私たちに聴かせてくれる前に、第1段階としてやってるから。
JUON お、よくご存知で!(笑)
自分たちにとっても必要な言葉を歌詞に散りばめた
──「SWEET RAIN SWEET HOME」のアレンジはストリングスも入ってるけど、決して前に出すぎず、曲にスケール感を添えていて。引き算のバランスも絶妙だなと感じました。
JUON そう言っていただけてありがたいです、うれしいです。この曲では、鳴ってほしい音しか鳴ってないんだと思う。確かにコレもアレも入れて、っていう足し算の作り方じゃなかったな。そういう方法をとる場合ももちろんあるんだけど、今回はやっぱりこういう歌詞だから、引き算をするほどメッセージがどんどん伝わるようになると思って。
──歌詞はどのようにできていったんですか?
SATOKO JUONはいつも仮歌のときに、その歌に必要な言葉を少しだけ散りばめていて、それを元に3人で話しながら作っていくんです。だから今回の「sweet rain, sweet home」という歌い出しも、最初の段階からありました。こういう時代だから、みんな文句もいっぱいあると思うんだけど、でも文句を言っても何も変わらない世の中に生きている。そんな中で必要な言葉を書きました。
──人生や生き方を感じさせる内容になっていますが、どんなことを伝えたかったですか?
JUON これは自分たちにとっても必要な歌詞なんですよね。いろんなことを考えすぎると、自分が本当にやりたかったことが見えなくなることも多かったんです。だから、「そんな自分も間違いじゃない、大丈夫、そのままでいいよ」「だけど本当の心を取り戻して」っていう趣旨の言葉が、今の自分たちに必要だった。考えすぎると、ほんとキツイんですよ。
──例えばどういうことを考えすぎるんですか?
JUON 音楽のこともそうだし、私生活のことも。みんなも同じように悩んで感じてることなんだと思うんですけど。でも自分の中では「大丈夫 そのままでいいからね」という歌詞が必要で。これが歌えたときに「大丈夫、まだできる!」って思えたんですよね。この感覚をみんなも今、求めてるんじゃないかなと思って。
SATOKO アレをしなさい、コレをしなさい、って言ってるんじゃなくて、「今日はもう帰ろう、大丈夫だから、明日もあるから」って歌ってるんですよね。1人で家に帰るのは寂しいかもしれないけど、でも誰かが「今日は帰るか」って一緒に帰ってくれたら、明日またがんばろうって思えるかなって。
──なるほどね。がんばり続けるんじゃなくて、一度帰ろうって。それも勇気が要る場合もありますもんね。
SATOKO そうですね。日本人は我慢する美学があるみたいなので。我慢しない勇気も必要ですよね。
──最後の「雨の中帰ろう」という歌詞に託した思いは?
SATOKO 嫌なことがあって、取り返しがつかないと思うようなときってあるじゃないですか。この失敗は人生最大だって感じるような。そんな渦中にいる誰かに言える言葉ってほんとに少ないけど、せめて「雨の中帰ろう」って言ってあげたかったんですよね。
──なるほど。それにしても今回は、JUONさんが断片的に書かれたワードから読み取るようにしてSATOKOさんが歌詞を完成させていったというのは面白いですね。
SATOKO もちろん違うパターンで書くこともあるけど、いつもちゃんとはまっていくよね。
JUON 常に今の3人に、なきゃいけない音楽を作ってるから。絶対3人に同じ温度で返ってくる曲を作って前に進んでいってる感じです。
SATOKO いいこと言うね!
CD収録曲
- SWEET RAIN SWEET HOME
- GC/BC(Live Version)
- You don't understand(Live Version)
- my Guitar says(Live Version)
- 1℃(イチド)(Brazil Version)
- this world(Brazil Version)
- SWEET RAIN SWEET HOME(Brazil Version)
- SUNSET(Brazil Version)
FUZZY CONTROL(ふぁじーこんとろーる)
JUON(Vo, G)、SATOKO(Dr, Vo)、JOE(B, Vo)からなる3ピースバンド。バンド結成を志したJUONがメンバー探しの末にSATOKOと出会い、後にベーシストのJOEが加入して現在のメンバーが揃う。2003年にシングル「SHINE ON」でメジャーデビューを果たす。2004年にはアメリカ・オースティンで行われた恒例のショーケースライブイベント「SXSW」に出演するなど、頭角を現し始める。日本のロックの王道を行く楽曲やエネルギッシュなライブパフォーマンス、ダイナミックなアンサンブルを特徴とする。
2009年9月にDREAMS COME TRUEのシングル「その先へ」へフィーチャリング参加し、その後も度々彼らのツアーにバックミュージシャンとして参加。
2011年7月13日に、1年ぶりとなる12thシングル「SWEET HOME SWEET RAIN」を発売する。