ファンモン「ROUTE 16」インタビューで振り返る“忘れられない過ぎゆく日々”

FUNKY MONKEY BΛBY'Sがニューシングル「ROUTE 16」をリリースした。

解散から8年を経て、2021年にファンキー加藤とモン吉の2人体制で復活を果たしたファンモン。彼らは昨年9月に再始動第1弾シングル「エール」を発表し、10月に東京・日本武道館公演「WE ARE FUNKY MONKEY BΛBY'S in 日本武道館 -2021-」、2022年2月から5月にかけて全国12都市13公演のホールツアー「YELL JAPAN」を行うなど、止まっていた時間を取り戻すように全力疾走している。

前作「エール」は「ファンモンど真ん中」と言える熱いメッセージソングだったが、「ROUTE 16」は夏の夜の国道16号線やクラブの光景がじんわりと頭に浮かんでくるような曲だ。曲調や歌詞だけでなく、制作方法にも時代の空気を反映させた今作について、2人に存分に語ってもらった。

取材・文 / 張江浩司撮影 / 山崎玲士

思い出す、何者でもなかった時代

──「ROUTE 16」は青春のきらめきというか、現在から過去を思い返すことがテーマになっている楽曲です。ラブソングや応援ソングではない曲がファンモンのシングルになることは、実は少ないですよね。

ファンキー加藤 珍しいと思いますよ。「LIFE IS A PARTY」(2012年8月発売のシングル曲)はパーティチューンだったけど、ほかはないかもしれない。アルバムにはあるんですけどね。

──「桜」(2009年2月発売のシングル曲)にも過去を振り返る視点はありましたけど、あれは恋愛についての歌ですもんね。

ファンキー加藤 そうそう、失恋ソングですから。リスナー自身にとって曲がどう響くかが大事だなと思って、今回は聴いてる人に委ねるようにしたんです。恋愛の曲だと思って聴く人もいていいし、友達との思い出をイメージする人もいるだろうし。その人がどういう夏の思い出を持ってるかで、聞こえ方が変わってくると思うんです。

──明確なテーマを打ち出すのではなく、グラデーションを楽しんでもらうと。

ファンキー加藤 ファンモンの曲はメッセージがドーン!と前に出てる曲が多いじゃないですか。今回はそうじゃなくて、断定しないように意識して作りましたね。いつもに比べて余白が多い感じっていうか。

──トラックが持つ切なさも相まって、“二度とは戻れない青春”を想起させます。特に近年は日常が一変してしまうような出来事が立て続けに起こっていますし、そういった世界のトーンが反映されている曲だと思うんですが、いかがでしょう?

ファンキー加藤 意識したつもりがなくても、歌詞とかに出ちゃうところはありますよね、間違いなく。よく言うんですけど、コロナの影響下にない表現者はたぶん1人もいないんですよ。何か作品を作ったり発表したりするときには、自然と切なさとかやるせなさが滲み出ちゃう。だからこそ、“あの頃”がより輝いて見えるというのもあるかもしれないです。

ファンキー加藤

ファンキー加藤

──加藤さんのTwitterには、このリリースの第一報とともに昔のファンモンの写真がアップされていました。

モン吉 あの写真、ほんとやめてほしかったなあ……。

ファンキー加藤 なんで? いい写真じゃん。

モン吉 あのサングラスとか、今見るとキビしい……。友達にもイジられたもん、グイグイやっちゃってる人みたいだって。

ファンキー加藤 実際グイグイやってたよ(笑)。

──歌詞に登場する「横浜の小さなクラブ」での写真ですよね?

ファンキー加藤 そうですね。FUNKY MONKEY BABYSとして活動は始めたけど、まだデビューしてない頃で、毎週末、横浜のLOGOS(2012年に営業終了)っていうクラブに出かけてたんですよ。「ROUTE 16」の歌詞を書く少し前に、ファンクラブコンテンツの撮影で当時のLOGOSの店長と話したんですね。そしたらいろんな思い出がよみがえってきて、「これは次のシングルの雰囲気に合うかも」と。この時期のことを頭に思い浮かべながら書き上げました。

──当時のことで、まず思い出されるのはどんなことですか?

ファンキー加藤 とにかく将来が不安だった(笑)。俺は3兄弟の真ん中なんですけど、兄貴は体育の先生になってしっかりやってるし、弟も就職して、この頃に家を買ってて。一方で俺は音楽はやってるけど、ほとんどフリーター。そういう日々の中で、クラブは自分たちが演者として戦う場所ではあるけど、同時に社会から隔絶された、守ってくれるような場所でもありました。朝になったら魔法が解けて、出勤するサラリーマンの波に逆らって家に帰るっていう(笑)。楽しいだけじゃない時期ですね。

──まだ何者でもなかった時代というか。

ファンキー加藤 そうですね。ぶっちゃけ、音楽を盾にして就職から逃げてた(笑)。社会と対峙するのを避けてたんですよね。今思うとろくに音楽も聴いてなかったし、ライブにも身が入ってなかった。ただ「俺はこれでやっていくぞ」と覚悟を決めてからは、音楽をちゃんと自分の武器にできるようになったかなと。

社長がベタ褒めした、遊び心のあるラブソング

──モン吉さんはいかがですか?

モン吉 デビュー前はとにかく曲作りしてましたね。365日中、300日はやってた。

ファンキー加藤 俺がモンちゃんのおしりを叩きながらやってました(笑)。

モン吉 もう眉間のあたりがピクピクしてましたもん(笑)。でもいろいろ学べましたね。それまではサンプラーで曲を作ってて、「偶然いい曲ができたぞ」って感じだったんですけど、ポップスはコードをつけてそれに沿ってアレンジしていくじゃないですか。そういう基本的なことを独学でこの時期に身につけました。

モン吉

モン吉

ファンキー加藤 「和音ってなんだ?」というところから始まってね。

モン吉 「キーが低くて歌いづらいけどどうしよう?」とか、「家で歌ってたらちょうどよかったけど、ライブだとやりづらいね」とか。試行錯誤しながらやってました。

ファンキー加藤 モンちゃんが打ち込みの機材を持ってて、俺はバンドをやってたからギター弾けたりしたんで、その知識を持ち寄ってフワッと作ってました(笑)。

モン吉 「王道のコード進行にラップを乗せてみよう」とかいろいろ試して、だんだんファンモンのスタイルができあがっていきましたね。

ファンキー加藤 「ROUTE 16」には、俺たちの下積み時代の楽しかった思い出や苦々しい思い出が詰まっていますね。

ファンキー加藤

ファンキー加藤

モン吉

モン吉

──打って変わって、カップリングの「ラグソング」は「いつまでも変わらない愛情」がテーマになっていて、「ROUTE 16」との対比が面白いですね。

ファンキー加藤 リード曲がどちらかというとアップテンポなので、カップリングはちょっと落としたテンポにしよう、くらいしか考えてなかったんですけど、結果的に対照的になりましたね。この曲は前のシングルの候補曲だったんですよ。結局「エール」に決まったんですけど、いつかはリリースしたいなと思って。レコーディングしたら、事務所の社長がめちゃくちゃ気に入っちゃって(笑)。あんまり社長がベタ褒めすることもないから、びっくりしました。

──タイトルもかわいらしい言葉遊びになっていて、歌詞の世界観にぴったりです。

ファンキー加藤 カップリングなんで、肩肘張らずに面白いことがしたいなと。この曲はラブソングにしようというのはモン吉との共通認識であったんですけど、そのまんまじゃつまらないし、うまく遊べたらなって。

──歌詞では「もし雨なら家でNetflixでもいいよ」や「あとは一畳のラグマットだけでいいよ」など、半径1メートルの身近なストーリーが描かれています。

ファンキー加藤 「ROUTE 16」と同じく、意識したわけじゃないけど、やっぱり今はみんなの生活ってこういう感じじゃないかなと。読み返すと「久々の外食ではしゃいでる僕は」とかも、時代感を反映してる部分だと思いますね。