可能性が渦巻いていた当時のクラブシーン
──歌詞に関しては、コロナ禍をイメージさせる言葉が使われていないことが少し意外でした。
加藤 コロナは人によって捉え方が違うし、シチュエーションをコロナ禍に限定した応援歌にはしたくなかったんですよね。でも、世の中の停滞感は無視できないし、そういったものがナチュラルに滲み出る言葉のチョイスになっていると思います。コロナ禍はいつか収束するものだから、そのあとにも長くたくさんの人に聴いてほしいなと。そういった普遍性みたいなものは意識したかもしれません。
──一方でカップリングの「今だってI LOVE YOU」には「Zoomしたって」など、時事性の高いワードが使われていて、その対比が面白いです。
加藤 「エール」で生みの苦しみを味わった分、素に近いストレスのない状態で作ろうと思った曲なんです。「ひさしぶりにラップしますか!」っていう感じで(笑)。ラップは“今”を切り取ると面白いものになることが多いので、「なかなか会えない状況からの再会」っていうテーマにして、裏には「ファンモンとファンとの再会」も忍ばせました。
──先程の“ファンモンらしさと新しさ”もそうですし、“普遍性と時事性”や“ポップソングとヒップホップ”というような二面性を、FUNKY MONKEY BΛBY'Sというグループ自体が常に抱えているんだなと思いました。そのせめぎ合いがスリリングな面白さを醸し出しているのかなと。
加藤 もともとクラブシーン出身ですからね。2人ともラップ聴きながら、同時に「サザンやばいよね」みたいな話してましたから(笑)。そういう両輪があるんだと思います。
──先日Creepy Nutsのラジオに加藤さんがゲスト出演された際に(「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0」2021年6月15日放送)、モン吉さんがHIP HOP系のライブに乱入してマイクジャックしたというすごいエピソードを語ってらっしゃいましたね。
加藤 ラジオのあとに「余計なこと言うな!」ってモンちゃんに怒られたんですよ(笑)。
モン吉 ホントそうですよ! 向こうが忘れてるのに、思い出させないでよ……。
加藤 今さら怒ったりしないから大丈夫だよ!(笑)
モン吉 ラジオ聴いてた友達から「あれ大丈夫?」っていう連絡も来ました(笑)。
加藤 俺たちもライブ中に「おい! フリースタイルやってみろよ!」って乱入されたこともありましたからね。
モン吉 あの頃は、いろんな同世代と同じ現場になってました。
加藤 そうそう、当時はクラブしかライブできる場所もなかったから。サイプレス上野とか、湘南乃風もそうだし。みんなでしのぎを削ってました。
──今と比べるとクラブシーンの規模が大きくないので、ジャンルが混ざり合ってましたよね。
加藤 いびつなものではあったと思います。でも、何かが生まれるような予感があって、すごく楽しかったですね。八王子にビッグネームも来てたもんね?
モン吉 DJプレミアも来てた。
加藤 八王子中のB-BOYが沸いた夜(笑)。
やっぱりふざけたDJをバックにつける
──当時と比べてリスナーのヒップホップに対するリテラシーが高くなっていると思うんですが、今のシーンについてはどう思いますか?
モン吉 以前より明らかに、裾野は広がってますよね。「韻ってなに?」っていう世代じゃないんだろうなと。若いラッパーとか、もう海外のクオリティと変わらないですもんね。
加藤 曲ができたらすぐ発表できる環境があるのもうらやましいですね。当時は大人を説得しなきゃCDを出せなかったので。それに比べると自由だし、行動力さえあれば誰にでもチャンスがあるのはいいことですよね。
モン吉 最先端の音をタイムラグなく吸収できるじゃないですか。ヒップホップは特に早めに取り入れた人がパイオニアになっていくので、良い面も悪い面もあると思うんですけどスピード勝負になってるのかなと思います。
──お二人が今20歳くらいの若者だったら、FUNKY MONKEY BΛBY'Sの音楽性はどうなると思いますか?
加藤 やっぱりふざけたDJをバックにつけるでしょうね。
一同 (笑)。
加藤 カッコいいグループがイライラするようなライブをすると思います(笑)。
モン吉 オートチューンとかは使うかもしれないけど、人と違うことはやりたいですよね。相変わらず「そんなもんヒップホップじゃない」って言われたいかな。
──クラブシーンから「ヒップホップじゃない」方向に進んでいったら、J-POPのど真ん中で「エール」にたどり着いたと(笑)。
モン吉 どっちのよさも知ってますからね。あ、今でもDJは募集中なので。キャラクターが強い自信がある人は、事務所まで連絡ください!(笑)
武道館ワンマンは本当の意味での再スタート
──FUNKY MONKEY BΛBY'Sといえばシングルの“顔ジャケ”も毎回楽しみな要素ですが、今回は千鳥の大悟さんです。解散前最後のシングルは明石家さんまさんでしたが、さんまさんの次となると人選は大変だったんじゃないですか?
加藤 自分の中では、さんまさんのジャケットとか東京ドームでのライブとかができたことで、1回リセットできてるんですよね。なので、今回は無邪気に好きな芸人さんやタレントさんを挙げていって。楽しく打ち合わせしていく中で大悟さんの名前が出たんです。千鳥さんはモンちゃんも俺も大好きで、今や令和を代表する芸人さんになっているじゃないですか。「お忙しいだろうし、多分無理だけど声だけかけてみましょうか?」ってことでお願いしたら、快くOKしていただけてうれしかったです。
──ミュージックビデオも最近珍しいくらいストレートなドラマ仕立てになっていますね。
加藤 大悟さんなら人間臭く泥臭く、いわゆるファンモンらしいドラマを演じてくれるんじゃないかという予感はあったんですけど、映像を見て間違いじゃなかったなと思いました。
──2時間ドラマを観ているかのような気持ちになりました。
加藤 撮れ高がありすぎて、「バラエティなら8本作れる(笑)」って大悟さんが愚痴ってました(笑)。それくらい真剣にやってくださって、ありがたいです。
──新生ファンモンの今後の顔ジャケも楽しみです。
加藤 八王子にゆかりのある方にお願いしたいなと思ってます。ROLANDに頼んだらめちゃくちゃジャケ映えするだろうけど、MVの演技はどうかな(笑)。
モン吉 いや、そのギャップがいいんだよ。
加藤 こないだヒロミさんと話したら「絶対出ない」って言われました(笑)。
──10月1日には日本武道館でのワンマンも控えていますが、どのようなライブになりますか?
モン吉 解散前にライブに来てくれていた方には当時と同じように楽しんでもらいたいですし、解散したあとにMVや音源に触れて好きになってくれてライブは初めてっていう人たちには、ファンモンは応援ソングやラブソングだけじゃなくライブも持ち味なので、そこを思いっきり楽しんでもらいたいなと思います。
加藤 今のところテレビでも歌い切ることができているし、素晴らしい音源も……自分で素晴らしいって言っちゃだめか(笑)。納得のいく音源も完成しました。メディア、音源、ライブ、この3つがそろうことで本当の意味での再スタートになると思うんです。これからどんな道を歩んでいくのか、どんな景色にたどり着くのか、今のところまったく想像つかないんですけど、少なくともこの武装感が最初の第一歩になるので、そのスタートラインをぜひ体感してもらいたいです。「また解散しちゃうんじゃないの?」ってくらい出し惜しみないセットリストを用意してるんで、期待しててください!
ライブ情報
- 「WE ARE FUNKY MONKEY BΛBY'S in 日本武道館 -2021-」
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- 2021年10月1日(金) 東京都 日本武道館 OPEN 17:00 / START 18:00
- FUNKY MONKEY BΛBY'S(ファンキーモンキーベイビーズ)
- 東京八王子出身のファンキー加藤、モン吉による2MCグループ。前身のグループであるFUNKY MONKEY BABYSはDJケミカルを加えた2MC1DJの3人組グループで、「告白」「ヒーロー」「あとひとつ」など数々のヒット曲を送り出し、「NHK紅白歌合戦」に4年間連続出場。TBS「輝く!日本レコード大賞」にも3年連続出演し、作曲賞、優秀作品賞、優秀アルバム賞の各賞を獲得するも、2013年6月に東京ドーム2DAYS公演を最後に解散し、約10年間の活動に幕を下ろした。解散から約8年の時を経て、2021年3月にTBS「音楽の日」にて1夜限りの3名フルメンバーでの再結成を果たす。同月、ファンキー加藤、モン吉の2人で、ソロ活動と並行して “FUNKY MONKEY BΛBY'S”と改名してグループとしても再始動することを発表した。9月には新体制初のシングル「エール」をリリース。10月にはFUNKY MONKEY BΛBY'Sとして初のワンマンライブ「WE ARE FUNKY MONKEY BΛBY'S in 日本武道館 -2021-」を開催する。