FUNKY MONKEY BΛBY'S|“ファンモンらしさ”と“新しさ” 2つのせめぎ合いが生んだ応援ソング

今年3月にファンキー加藤とモン吉の2人で再始動したFUNKY MONKEY BΛBY'S。DJケミカルからも背中を押されて再出発した彼らは、8年ぶりのシングル「エール」をリリースした。これ以上ないほどストレートなタイトルの応援ソングは、FUNKY MONKEY BΛBY'Sという看板の重みと、新しい自分たちを打ち出すこと、両方のせめぎ合いの結果生み出された。

音楽ナタリーでは加藤とモン吉の2人にインタビューを行い、新体制後初となるシングルの制作過程や現在のヒップホップを取り巻く環境、ディープなクラブシーン出身ならではのエピソード、そして10月に行われる日本武道館ワンマンのことなど、多岐にわたって2人に語ってもらった。

取材・文 / 張江浩司撮影 / 梁瀬玉実

収まるべきところに収まった

──改めて再始動の経緯を教えていただけますか?

ファンキー加藤 まず、TBSの「音楽の日」(2021年3月11日放送)で、DJケミカルを含めた3人でパフォーマンスすることになったんですね。一夜限りの予定だったんですけど、打ち合わせやリハーサルを重ねていくうちに「2人でやっていくのもいいかもね」っていう話になってはいたのですが、最終判断は当日の感覚に委ねようと思っていて。実際、当日一緒に歌ってみて、すごくしっくりきたんですよ。収まるべきところに収まったというか。“ふるさと”っていう感じで(笑)。

──ご自身でもブランクを感じなかったんですね。

FUNKY MONKEY BΛBY'S

加藤 最初のリハーサルは「ん?」と感じるところもなくはなかったんですけど、スタジオに入るうちに違和感はすぐなくなりました。「面白いことをやっていけそうだ」という手応えがあって、本番を迎えて確信に変わったというか。その日のうちに再結成しようと決めました。

──新曲「エール」は再結成後初の音源になりますが、2人でひさびさに制作をしてみていかがでしたか?

モン吉 自分たちでも8年ぶりとは思えなかったですね。役割分担がはっきり決まってるんですよ。僕がサウンド面で、ファンちゃんが歌詞で。

加藤 お互いの得意分野を生かしていくっていうところは変わらないですね。モンちゃんは直感やアイデアをメロディ、トラックに反映させるのが本当にうまいんですよ。俺はウンウン考えて言葉を捻り出してます。

モン吉 ケミちゃんは睡眠と祈り担当だったよね。

加藤 そう、ケミカルはスタジオに来ても祈るふりをして寝てるだけで(笑)。寝てるケミカルに癒されてた部分はあったけど(笑)。

“ファンモンのシングル”という重み

──では曲作りもスムーズに進んだんですね。

加藤 それが、なかなかできなくて。新生ファンモンの1発目ということで、自分自身でハードルを上げてしまったというか。最初の1、2回はスタジオで何時間作業しても手応えがなくて、肩を落としながら帰ったのを覚えてます。

モン吉 プレッシャーは正直ありましたね。

加藤 人生で初めてリリースを1週間遅らせることになりました。

FUNKY MONKEY BΛBY'S

──改めてFUNKY MONKEY BΛBY'Sの看板の大きさを実感したと。

加藤 大きいですね。曲のコンセプトを決める段階から大勢でディスカッションしているので、やっぱりソロとは違いますね。スタッフさんたちも明らかに目の色が変わってるなっていうのも感じたし(笑)。

──お二人ともソロでもキャリアを重ねて来られていますが、お互いの成長を感じる部分はありましたか?

モン吉 当時とあんまり変わんないよね?

加藤 モンちゃんは遅刻しなくなったよ(笑)。

モン吉 あ、そういう話?

加藤 社会人としてちょっと成長したと思う(笑)。あとは粘り強くなった気がしますね。1曲に向き合って一生懸命キーボード叩いてる姿が見れたんで、そういうスタミナはついたんだなと。解散前は「数打ちゃ当たる」という感じで曲作りしてたんで、ちょっと煮詰まったら「これはもういいな」って投げてましたから(笑)。

──モン吉さんはいかがですか?

モン吉 やっぱり改めてファンちゃんのラップはすごいなと思いました。努力だけじゃできないライミングがありますよね。

“ド真ん中”にファンモンの旗を刺す

──今回のリードトラック「エール」はあまり見かけないぐらい直球の応援ソングです。タイトルを「退路を断つ思いで決めました」とコメントに書かれていたのが印象的でした。

ファンキー加藤

加藤 すごく悩んだんですよ。むしろ今までファンモンがこのタイトルの曲を出してないのが不思議なくらい、だいぶ手垢がついた言葉だし。でも、あえて覚悟を決めてこの言葉にしました。今サブスクとかでいろいろ聴いてても、こういう「がんばれ!」っていう直球なフレーズがあるような曲はほとんどないじゃないですか。「だったらファンモンがやるしかないでしょ!」と。逆張りするつもりはないんですけど、ファンモンにしかできないのかもなって。そういう素晴らしい覚悟と勘違いをもとに作った曲ですね。あえて“ド真ん中”にファンモンの旗を刺すような気持ちで、タイトルも歌詞も考えました。

──ファンモンだからできることに向き合った結果なんですね。

加藤 そこから逃げないっていう。そういう意味で退路を断ったんです。

──「若いやつらにこれは歌えないだろう」というような矜持はあります?

加藤 いやいやいや(笑)、さすがにそれは思ってないですけど。最初に曲のコンセプトを決めるときに、応援ソングのほかにもラブソングとかパーティチューンとかいろいろと案は出たんですが、考えに考えて応援ソングに戻ってきたんです。「やっぱりここから逃げちゃダメだ!」と(笑)。特に再結成1発目なので、「ファンモン is Back!」っていうのを曲とタイトルで示すことができたかなと思ってます。

──曲調も「ファンモンを聴いてる!」という気分にさせてくれる、お家芸的なトラックになっています。

加藤 そうですね。その中に新しさをいかに込めるかという部分はモンちゃんがすごくやってくれました。

モン吉 もっと振り切ってローファイにしようと思えばできたんですけど、そうすると“熱い応援ソング”というコンセプトからは外れてしまうと思って。とはいえ、再結成前のサウンドのままだと面白くない。でも、ファンモンらしさは大事にしたい。そういう微妙なさじ加減が難しかったですね。

モン吉

──モン吉さんがこの曲に加えた新しさを具体的に挙げていただくとすればどこになりますか?

モン吉 低音ですね。今はトラップブームが一旦落ち着いて、20年前ぐらいの音がリバイバルされてるじゃないですか。なので、ドラムはその当時の音に近付けてみたりしましたね。シンセも珍しくリバーブを効かせてみました。

加藤 モンちゃんが思いっきり振り切ったトラックを作って、「ちょっとやりすぎかな?」って戻す、この繰り返しでした。

モン吉 戻しすぎると、昔の曲のリミックスみたいになっちゃうんで、兼ね合いが難しいんですよ。

加藤 結果的にいい形に落ち着いたと思います。