ナタリー PowerPush - ファンキー加藤

ファンモン解散からソロ活動に至る 密着ドキュメンタリー映画公開

ファンキー加藤の初主演ドキュメンタリー映画「ファンキー加藤 / My VOICE~ファンモンから新たな未来へ~」が2月14日から公開される。この映画では、昨年解散したFUNKY MONKEY BABYSのラストツアーから、ファンキー加藤のソロ活動が始動するまでの時間に密着し、そこで芽生える心の葛藤や迷い、そして強い決意を赤裸々に描き出している。

今回ナタリーでは、映画公開に先駆けてシングル「My VOICE」でソロメジャーデビューを果たしたばかりのファンキー加藤にインタビューを実施。映画のこと、今伝えたい思いを込めたという楽曲のことについて話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 小坂茂雄

背中が語るメッセージ

──映画、拝見しました。非常に人間臭い、生身のファンキー加藤がリアルに感じられる作品になっていますよね。

ファンキー加藤

いやー、ちょっと恥ずかしいですけどね。まさか自分の人生の断片がこういう形で映画になるなんて思っていなかったことなので。CDのセールスよりも、今は映画の動員数のほうが気になっちゃってます(笑)。少なくともFUNKY MONKEY BABYSというグループを応援してくれていた人たちにはぜひとも観てもらいたいなって思いますね。嘘偽りのない思いが詰まっているので。

──ドキュメンタリー映画を撮りたいという話があったとき、加藤さんはどんな気持ちでそれを受け止めましたか?

もともとはFUNKY MONKEY BABYSの解散までを追っかけるというお話をいただいていて、解散後に僕がソロで活動することになったので、だったら延長してソロ活動までを追っかけようという話になって……。正直、迷いはありました。まずプライベートなところまで密着するという話だったので、それはどうなのかなって思ったんですよ。俺、ファンキー加藤って名乗ってますけど、プライベートは全然ファンキーじゃないですからね(笑)。そんな部分を全部さらけ出していいものなのかなって。あとは単純に、俺を追いかけたところで映画として成り立つのかなっていう思いもあって。まあでも結果的には監督の熱意に負けてOKしたんですけど。

──では、仕上がったものを観たときはどう感じました?

撮っていただいて本当によかったと思いました。俺にとっての2013年は、いろんな出来事があった濃密な1年だったんです。そこに密着してもらったことで、今後音楽活動を続けていく上で観るたびに原点に立ち戻れる映画になったなって。撮影してもらってるときはね、あまりにも何も起こらないから申し訳ないなって思う瞬間が多々ありましたけど(笑)。カメラは回り続けてるのに、4~5時間ペンを持ったまま考え込んで歌詞が1行も出てこないとか。なにか1つでもアクシデント起こしたほうがいいかな、マネージャーを呼びつけて怒鳴ってみようかな、みたいなことを思ったり(笑)。

──加藤さんのサービス精神が顔を出しちゃって(笑)。

でも監督の住田(拓英)さんには「それでいいんです。それがドキュメンタリーなんです。迷ったり悩んだりしている加藤さんの背中がちゃんと語ってくれているから大丈夫ですよ」って言っていただけて。それで安心したんですけど、最初はかなり不安はありましたね。

無風状態からの再始動

──今回の映画では、加藤さんの心の中に芽生えた葛藤や迷いがかなり赤裸々に描き出されていますよね。ファンモンとしてたくさんの人の背中を押し続けた人がさらけ出している人間としての弱さにかなり衝撃を受けました。

映画の冒頭にある河川敷でのインタビューシーンなんかは、今からすると相当迷走した発言をしてますからね。要はファンモンを解散させた直後は気持ち的にかなり不安定な状態だったんです。グループとして10年間突っ走ってきたのに、最終公演が終わった翌日にはそれがピタッと止まってしまったわけですから。それまでは追い風なり、向かい風なり、自分の周りには何かしら風が吹いていたのに、一気に無風状態になった。それが何よりも不安だったし、居心地が悪くて仕方がなかったんです。

ドキュメンタリー映画「ファンキー加藤 / My VOICE ~ファンモンから新たな未来へ~」のワンシーン。

──だからこそソロで動くことを決断したわけですね。

そうです。それに対しては、発表が早すぎるんじゃないかとか、ファンモンが好きすぎるがゆえにソロは受け入れられないとか、いろんな声をもらいました。もちろんソロ活動が始まることでファンモンが過去に追いやられてしまうんじゃないかっていう気持ちは理解できるんですよ。俺にもファンモンという大きな家を失った喪失感があったわけだから。でも動き出すしかなかったんですよね。風がまったく吹いていない状態でなんの目標もないことがとにかく苦しかった。そのままだと自分が自分でいられなくなる気がしたから。

──リリースやライブの予定が見えない中で、いち早くソロ宣言をしたのもそういう感情があったからなんでしょうね。

そうそう。先々のプランなんてまったくないけど、心がそう望んだから宣言したっていう。ある意味、既成事実を作ってしまおうって思ったんですよね。

──なるほど。でも、そこからかなりの向かい風が吹くことになるわけですよね。その苦悩は映画で確認することができます。

ファンキー加藤

自ら風を求めて動き出したけど、まあかなり苦労はしましたね。楽曲制作をしていると、単純に3倍の苦労があるわけですよ、1人になったことで。さらにファンモンという大きな存在の影を常に感じなきゃいけないのも最初はかなり苦しかったです。みんなが俺の肩越しにファンモンを見ているという事実を受け入れられる器が、最初の頃の俺にはまだなかったというか。今はそれを逆にうれしいこととして受け止められるんですけどね。それだけ焦っていたっていうことなんだと思います。

──そこを乗り越えられたのはどうしてだと思いますか?

やっぱり実際に動き出したからだと思います。前に進んで行けば当然壁にはぶつかるものだし、その壁は自分を大きく成長させるチャンスでもあるわけで。でも動き出さなければ何も始まらないじゃないですか。

──まさに、デビュー曲となる「My VOICE」の歌詞のまんまですね。

そうそう。「前に進んでるから壁にぶつかれるんだ」っていうのは、そういう期間を経て生まれてきた言葉で。それはもしかすると、ファンモンとしてずっと突っ走っているだけでは生まれなかった言葉かもしれないです。

ドキュメンタリー映画「ファンキー加藤 / My VOICE ~ファンモンから新たな未来へ~」

2014年2月14日より全国劇場にて公開

  • 出演:ファンキー加藤、FUNKY MONKEY BABYS ほか
  • 監督:住田拓英
  • 製作:M-ON! Entertainment / ENNET
  • 配給:LIVE VIEWING JAPAN
  • 協力:id ENTERTAINMENT / DREAMUSIC
  • 製作委員会:M-ON! Entertainment / LIVE VIEWING JAPAN / myシアター
ソロデビューシングル「My VOICE」 / 2014年2月12日発売 / Dreamusic
初回限定盤 [CD+DVD] 1365円 / MUCD-9065
通常盤 [CD] 1050円 / MUCD-5250
CD収録曲
  1. My VOICE
  2. リスタート
  3. 桜 ふわり ふわり
初回限定盤DVD収録内容
  • 「My VOICE」VIDEO CLIP
  • 「My VOICE」メイキング映像
ファンキー加藤(ふぁんきーかとう)

1978年東京都八王子市生まれ。2004年にFUNKY MONKEY BABYSを結成し、2006年1月にメジャーデビュー。多くのヒット曲を生み出し「NHK紅白歌合戦」に4年連続出演するなど幅広い人気を集めるも、2013年6月の東京ドーム2DAYS公演を最後にグループを解散。その後「ファンキー加藤」名義でソロ活動を開始し、2014年2月にソロデビューシングル「My VOICE」をリリース。同じく2月にドキュメンタリー映画「ファンキー加藤 / My VOICE ~ファンモンから新たな未来へ~」が全国の劇場にて公開される。