ナタリー PowerPush - FUNKIST

メンバーの死を乗り越え語る新曲に込めた意味と思い

陽子ちゃんのインスト曲が残せたのは本当に良かった

──そしてもう1曲、陽子さんが作曲したインストナンバー「Brave」も収録されています。

染谷 これもタイミングが奇跡的だったというか。僕らはシングルにインストを入れたことが一度もなかったんですけど、ゲーム会社の方がインスト曲もぜひ入れたいっておっしゃってくれたんで、じゃあやろうってことになって。そういう流れで陽子ちゃんのインスト曲が残せたのは本当に良かったなって思いますね。それがなければ最後に陽子ちゃんが作曲することもなかったと思うので。

──フルートの持つ柔らかい響きの中に、明確な力強さを感じました。

染谷 たぶん震災のこともあったし、未来に向かって勇気を出していこうねっていうことを陽子ちゃんは伝えたかったんだと思います。元々陽子ちゃんはすごく繊細で優しい曲を書く人なんですけど、今回の曲はほんとに力強いというか。バンドの中で一番、意志が強い人だったから、そういう部分が曲としてすごく出てますね。

ヨシロウ 今回は3曲ともそうなんですけど、フルートとギターでユニゾンしたりハモったり追っかけっこしたりっていう面白さがいろいろ散りばめることができたなって思うんですよね。フルートのファンタスティックでファンタジックな音色に、歪んだギターの音がどうハマるんだろうって一緒にやり始めたころはすごく思ってたけど、それがいつの間にかなんの違和感もなく同居できるようになっていった。そういうことを改めて思い出して、すごく感慨深くなりました。

インタビュー写真

宮田 フルートっていうとクラシックっていうイメージが強いけど、こういうバンドにフルートが合うっていう可能性を広げてきたのがFUNKISTだと思うんです。この1枚でもそういうところをすごく感じることができると思いますね。フルートって優しさとかあったかさだけじゃなくて、こんなことも表現できるんだなっていうことを「Brave」はしっかり提示してると思うし。

染谷 FUNKISTがきっかけでフルートを始めたっていう人もけっこう多いんですよ。これからもそういう人が増えてくれたら陽子ちゃんは絶対にうれしいはずだし、これまでの活動でその可能性は彼女がしっかり広げてきたと思うんです。だからそれを今度は僕らがより多くの人に伝えていく番だなって思ってます。

これからもFUNKISTは7人でずっと歩いていきます

──陽子さんの意志とともに、これまでと変わらず7人で歩いていくことを決めたFUNKISTですが、フルートの音色が欠けてしまうという事実は確実にあります。そのあたりはどう考えていますか?

染谷 すごく根本的なところで言うと、僕らはフルートのサウンドが欲しくて陽子ちゃんと音楽をやっていたわけじゃないんですよね。陽子ちゃんと一緒に居たかった、一緒に遊んでたかったんです。で、その陽子ちゃんがたまたまフルートを持っていたっていう。だから、もし陽子ちゃんがギタリストだったら僕らはギター3本でやってただろうと思うんです。

──なるほど。

染谷 だから僕らのアンサンブルの中からフルートの音が欠けることって、もちろん大きなことではあるんですけど、実はそんなに恐れてはいなくて。それよりは、陽子ちゃんがバンドに与えてくれた優しさだったり笑顔だったり愛だったりっていうものをちゃんと僕らが受け継いで、「7人のFUNKIST」をちゃんと感じてもらえるようなライブやCDを作り続けていくことが一番大事だなって思うんですよね。で、そのことにはものすごく自信もあるんです。俺らだったらできるなって。だからこそ歩いていくことを決められたっていう部分もあるので。

JOTARO 陽子ちゃんがいなくなってしまったことは残念なことなんですけど、そのことで7人で音楽をやってきたことの素晴らしさや尊さにも気付けたんですよね。なので、そこでわかったことを大事にしながら、世界中の人に届くようなバンドになっていきたいと思います。「SHINE」がそのきっかけになる1枚だと思うし。

──この先、バンドがどんな壁にぶち当たったとしても、この「SHINE」という作品があれば乗り越えていける気がします。

染谷 本当にそうですよね。陽子ちゃんのためにとか言いながら、実は俺らが一番、陽子ちゃんに背中を押してもらってるんですよね。これからもいろんな曲を作っていくと思うけど、FUNKISTの曲を聴くとフルートの音が聴こえてくる感じがするよねって思ってもらえるような音楽を作れたらいいなって思います。あとは、陽子ちゃんと最後に立ったステージが日本武道館で開催されたプロレスのリングの上だったんですよ。だから次は自分たちの力でその場所に帰りたいなっていう目標もできたんでね。これからもFUNKISTは7人でずっと歩いていきます!

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FUNKIST盤 CD収録曲
  1. SHINE
  2. NEW DAYS
  3. Brave
  4. Waiting for your call
テイルズ盤 CD収録曲
  1. SHINE(OPテーマ)
  2. NEW DAYS(EDテーマ)
  3. Brave(挿入歌)
  4. スペシャルミニドラマ
FUNKIST(ふぁんきすと)

染谷西郷(Vo)、宮田泰治(G)、ヨシロウ(G)、JOTARO(B)、オガチ(Per)、春日井陽子(Fl)、住職(Dr)による7人組バンド。2001年結成以来、年間100本を越えるライブで、多くのファンの心を掴んできた。インディーではアルバムを3枚、シングルを4枚のほか、染谷の母親の故郷である南アフリカでのツアードキュメンタリーDVDをリリース。2008年7月にシングル「my girl」でメジャーデビューを果たした。2009年2月にはメジャー1stアルバム「SUNRISE 7」を発売。同年4月には2度目となる南アフリカツアーも実施された。しかし、7月から春日井が体調不良のためバンド活動から離脱。その後は6人で活動を続けてきたが、2011年10月に春日井が逝去。バンドはそのまま残された6人でバンド活動を継続している。2012年2月には、春日井もレコーディングに参加した7人で最後のシングル「SHINE」をリリース。