バンド名はFUNKIST。でもその音楽はいわゆる「FUNK」ではない。ステージに吊されるバンドロゴの色はラスタ・カラー。だけど、レゲエ・バンドというわけでもない。ボーカル+ギター×2+ベース+ドラムにパーカッションとフルートが加わる7人編成。ラップ・スタイルの曲もバラードもスカもロックもあるが、日本ではない遠い大陸のビートも感じる。スパニッシュの旋律を感じるものもある。観客を踊らせ、涙させる音楽の中には熱いメッセージがある。それはジョン・レノンが「想像してごらん」と歌い、ボブ・マーリィが「ONE LOVE」と表した世界へ導くものだ。

FUNKISTのライブ数は半端ない。年間100本を越える。日本だけではない。香港、マカオ、ベトナム、南アフリカ、インドでのライブも経験した。それらの旅の途上での出会い、繋がりがバンドを強く、音楽を豊かにしていく。昨年2月にリリースしたシングル「白い世界」はタワーレコード渋谷店のインディーズチャートで2週連続の1位。今年4月のSHIBUYA-AXでのワンマンライブは超満員。そのライブの最後に発表され、観客の大歓声で応えられたのが、この7月16日、シングル「my girl」でのメジャーデビューだ。

FUNKISTはファンタジスタなり。日本人の父と南アフリカ人の母を持つ「ジャパリカン」、染谷西郷の歌は世界に響く。

取材・文/杉山敦(TUK TUK CAFE)

僕は、肌の色が違うふたりが愛し合って、わかり合えたから生まれた

——2001年にバンドを結成して以来、すでに日本全国47都道府県をライブ制覇し、海外でのツアーも経験し、インディーでアルバムも出し、SHIBUYA-AXを満員にするというFUNKISTのこれまでの活動経緯からすると、今回のメジャーからのリリースというのは、「いよいよ!」という気持ちなんですか? それとも「ようやく!」ですか? どんな変化が待っていそうですか?

いままでのスタッフもそのまま一緒に変わらずやっていこうというスタンスなんで、「メジャーデビューするぞ、やった!」というよりは、ずっと歩き続けてきたFUNKISTの道の上で新しい出会いがあったという感覚が強いですね。

——ボーカル、ギター、ベース、ドラムに、パーカッション、フルートが入った7人編成というのは一般的なロックバンド編成ではないですよね。音楽ジャンルも多岐にわたっているんですが、「ミクスチャーバンド」と一言では言い表せないテイストがありますよね。それはリズムだったり、ラテンのメロディを感じることだったり。また、普通、フルートのような管楽器はバンドではスパイス的な扱いですが、FUNKISTでは全編にフィーチャーされていますよね。

もともと僕(ボーカル)と、小学校の同級生だった宮田(ギター)でFUNKISTを始めたんですけど、ヨシロウ(ギター)は小学校の後輩で、オガチ(パーカッション)は高校の同級生。宮田とフルートの(春日井)陽子ちゃんはバークリー音楽大学(アメリカ・ボストンにある、日本でいう東京芸大のような存在)の同級生なんです。オガチにいたってはもともとベーシストだったのが、「ベースはもうJOTAROがいるから」ってドラムに転向して、そのあと住職(ドラム)に出会って住職のほうがドラムが上手かったから、パーカッションになっちゃった(笑)。そういう友だちが集まって音楽をやっているんで、フルートが必要だったというよりは、陽子ちゃんとバンドがしたかった。彼女はサンバとかボサノヴァとかが好きで、バークリーでラテン音楽を学んで帰って来たので、FUNKISTに入った当初はすごくお堅い、「きちんと吹きたい」という人でした。でも僕ら周りに感化されてだんだんゆるくなってきた(笑)。そんなふうに、もともと好きな音楽はバラバラで、みんながやりたい音楽をやろうぜということから始まったバンドなので、思いっきりロックしてる曲もあるし、ラテンとファンクが混ざってる曲もあるし、そのまま混ぜてきたらFUNKISTになっちゃった(笑)。

FUNKIST写真

——染谷さんが音楽を始めたきっかけは何だったんですか?

僕はサッカーが好きだったんですけど、将来はサッカーをやるよりもスポーツジャーナリストになりたい、それと歌が好きだという、ふたつの別々のものに興味があったんです。でもスポーツジャーナリストにはどうやってなれるかわからなかった。歌だったら、とりあえず外で歌えば聴いてくれる人がいるから手っ取り早そうだと(笑)。それで歌い始めたときに、偶然幼なじみの宮田と出会ってバンドを始めたんです。

——染谷さんの父親はフラメンコギタリストで、宮田さんの父親はフラメンコダンサーと伺いました。染谷さんもフラメンコ、スパニッシュの影響が強いんですか?

父親は、仕事のない日は家でずっとフラメンコのギターを弾いてたんですね。「なぜうちの父親は仕事をしないでギターを弾いてるんだろう?」って子供心に不思議に思ってましたね(笑)。たまに遊んでもらえるときも、父がリズムを刻んで、「お前、このリズムの裏を取ってみろ」とか(笑)。僕にとってはそれが普通の親子のキャッチボール感覚だったんです。今思うとそれで自分の中のスパニッシュのリズム感が培われたんだなと。

でも、僕がちゃんと音楽を始めたのは20歳のときです。高校の廊下にギターとブルーハーツのスコア(楽譜)が落ちてて(笑)、それで歌い始めたら、楽しいな、面白いなと思うようになって、その延長で20歳でバンドを始めて。そうしたときに自分から自然に出てくるものが幼い頃に父からの影響を受けたものだった、ということです。なかなかそのリズムの感覚をメンバーに伝えるのは難しいんですが、幸い宮田が専門的に音楽を勉強してたからそれを楽譜にしてメンバーに通訳してくれます。

FUNKIST メジャーデビュー・マキシシングル

ジャケット写真

『my girl』 2008年7月16日発売 / 1260円(税込) / PCCA-02701 / ポニーキャニオン

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CD収録曲
  1. my girl
  2. SUNRISE
  3. 白い世界
    (Live at SHIBUYA-AX 08.4.29)
プロフィール

FUNKIST(ふぁんきすと)

染谷西郷(Vo)、宮田泰治(G)、ヨシロウ(G)、JOTARO(B)、オガチ(Per)、春日井陽子(Fl)、住職(Dr)による7人組のバンド。2001年結成以来、年間100本を越えるライブで、多くのファンの心を掴んできた。これまでにインディーでアルバムを3枚、シングルを4枚、また、染谷西郷の母親の故郷である南アフリカでのツアードキュメンタリーDVDをリリース。2008年7月16日、シングル「my girl」でメジャーデビュー。