恋愛以外に書きたいことはない
──内田さんの素直な感情は歌詞にもしっかりと描かれていますよね。ヘンな言い方ですが、この歌詞を書いてる人はちゃんとしたいい人だな、と感じました。
それ、ねごとの(蒼山)幸子ちゃんにも同じこと言われた。「ちゃんとして真面目な人だ」って。恥ずかしいけどそう思ってくれる人がいるってことはうれしいです。やっぱり中高生のときにずっと1人な気がしてて、今思うと中二病的なやつかもしれないけどいつも孤独を感じてたから。だから共感してくれる人が欲しくて、そういうのが今の創作活動のもとになってる。そのために歌ってる。だから私にとって歌詞は本当に大事です。
──内田さんは普段飄々として見えるのに、歌詞には真面目さがにじみ出てしまうんですね。
自分自身はクソな人間だけど、歌詞書くときくらいは真摯でいたいっていう気持ちなんですよね。変に真面目ぶるのも嫌いだけど、でもやっぱり素直でいたいなって。嘘だけはつきたくないから、そうならないようにっていうのは心がけてます。
──そして今回は特にラブソングが多い気がするんですが。
はい、私は恋愛以外のことで書きたいことはないなってはっきり思いました。ほら、村上春樹とか読んでると、だいたいセックスシーンがあるし、それがすごく大事じゃないですか。自分にとっての恋愛もそれと同じで、そこから逃げることはできないなってわかったんです。もっともちろん抽象的で詩的な歌詞とか書きたい気持ちもあるんですけど、今それをやっても嘘になっちゃうから。
──開き直った?
うん、そこはすごく開き直ったし、例えば1枚目のアルバムとかって恋愛の歌詞しかなくて、恋愛っていう形を借りてその中にそれだけじゃない伝えたいことみたいなのを自分なりに散りばめたつもりで。で、今回のアルバムもそうなんです。パッと見、恋愛のことしか言ってないように思われるんだろうけど、自分的にはもうちょっとその中に、自分が普通に生きてくうえでいろいろ感じてることみたいなのも織り交ぜたつもりです。
──あと、このアルバムの言葉はすごく生々しいですよね。男の立場からはちょっと怖さみたいなものを感じるほどで。
わかります。それも意図的にそうしたから。自分が好きな女性アーティストってちょっと怖いんですよね。そもそも女の人が作って歌ってるもので怖くないものってないと思う。ある程度生々しかったり、人によってはちょっとオエってなるようなものが好きなのかもしれない。なんの制約もなかったらそういう曲ばっかりになるんです。だから今までメンバーの存在を意識してたことによって、もしかしたらマイルドになってた部分も少しあるのかもしれないですね。
このアルバムを作れてよかった
──ところで今作のドラムは、2011年に脱退した高城琢郎さん(Dr)が全曲叩いているそうですね。これはどういう経緯で?
高城は別にケンカして辞めたわけじゃなくて、もともとすごく仲よかったわけでもないし仲悪かったわけでもないんです(笑)。人間関係的には今も昔もフラットで。あのとき高城は絵を描きたいって言って辞めて、今はイラストレーターとして収入をけっこう得てるっぽくて。今回ちょうどタイミングが合ったので頼んでみようと思ったんですよね。
──ひさびさに一緒にレコーディングしてみて、オリジナルメンバーならではの阿吽の呼吸みたいなものはありました?
どうなんだろう。
──何も言わなくても通じ合うみたいな感覚は?
そういうのは最初からないですね(笑)。まあ高城と卓丸(B)は多少あるかもしれないけど、特に石井(G)とはそういうの全然ない。だからある意味まだやれてるってところもあります。石井は私が新曲持っていって合わせてるときにすごいつまんなそうにしてるときがあって、「なんでお前つまんなそうなんだよ。ふざけんなよ」って思ったり(笑)。
──不思議な距離感ですね。石井さんはこのアルバムについてどう思ってるんでしょう?
気に入ってる部分もけっこうあるんじゃないかな。「光」って曲はすごく好きだって言ってました。
──このアルバムはすごくふくろうずらしいんですけど、そのぶん音楽的な冒険とかサウンド面での進化みたいな要素は薄いですよね。
うん、全然ないと思う(笑)。
──それについては「まあいいや」って感じですか?
そうですね。歌詞と同じで、今それを求めたら嘘になるなっていう感じがしてる。もちろん音楽的に新しいことをやりたいとか、そういうものに対する憧れとかはあるんですけど、まずは今の自分たちができることをやって、自他共に認められるような作品を作らなきゃならない。それができないまま次のステップに行っても、表面的なものしか作れないなってすごく思ってます。
──じゃあこのアルバムは、今のふくろうずの持てるすべてを詰め込んだという感じですね。
うん、このアルバムを作れてよかったなと思うし聴いてほしいなってすごく思ってます。ただこれを作ったことによって、次はもっとこうしたいっていう気持ちも生まれてきていて。
──次はどういうものを?
派手なアルバム(笑)。今回は弾き語りの延長って言うか、自分の純度が高いアルバムだったけど、次はもう少しフレーズとかにこだわって、バキバキしたものを作りたいなっていう気持ちになってきてます。
- ふくろうず「びゅーてぃふる」
- 2017年9月6日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
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[CD]
2800円 / TKCA-74549
- 収録曲
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- びゅーてぃふる
- デイドリーム
- カノン
- 光
- スローモーション
- ジミー
- ムーンライト
- ピンクエレファントの憂鬱
- ソナチネ
- サンライズ・サンセット
- ふくろうず「君とびゅーてぃふる ツアー」
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- 2017年9月15日(金)大阪府 天満教会
- 2017年9月16日(土)愛知県 Tokuzo
- 2017年9月23日(土・祝)東京都 草月ホール
- 内田万里の花より男子ツアー
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- 2017年10月21日(土)岡山県 蔭凉寺
出演者 内田万里(ふくろうず) / 山中さわお(the pillows) / 小山田壮平(AL) - 2017年10月22日(日)福岡県 住吉神社能楽殿
出演者 内田万里(ふくろうず) / 山中さわお(the pillows) / 小山田壮平(AL) - 2017年10月29日(日)東京都 青山CAY
出演者 内田万里(ふくろうず) / 山中さわお(the pillows) / ホリエアツシ(ストレイテナー) - 2017年11月4日(土)東京都 晴れたら空に豆まいて
出演者 内田万里(ふくろうず) / ジョンB & ザ・ドーナッツ!(ジョンB、真城めぐみ) - 2017年11月11日(土)京都府 拾得
出演者 内田万里(ふくろうず)
- 2017年10月21日(土)岡山県 蔭凉寺
- ふくろうず
- 2007年に東京で結成。内田万里(Vo, Key)、石井竜太(G)、安西卓丸(B, Vo)からなる3人組バンド。2009年12月に初の音源「ループする」をライブ会場などで限定発売し、その後2010年4月に2曲を加えた全国流通盤として再リリースした。このミニアルバムをきっかけに人気は全国区に拡大し、2011年6月に3rdアルバム「砂漠の流刑地」でメジャーデビュー。2017年9月には通算8枚目となるアルバム「びゅーてぃふる」を発表する。ボーカルの内田はソロ名義で弾き語りライブも行っている。