ふくろうずがニューアルバム「びゅーてぃふる」を完成させた。バンド結成から10年、通算8枚目の作品となるこのアルバムで、彼女たちは改めてその原点に立ち返り、淡く美しい独自の世界を追求している。この作品の成り立ちと狙いについて、全曲の作詞作曲を手がける内田万里(Vo, Key)に話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / moco.(kilioffice)
10年やってやっとわかった
──今回はどんなアルバムを作ろうと思って制作に臨みましたか?
アルバムのコンセプトみたいなものは特に決めず、自分がいいと思える曲を1曲1曲入れました。わりと自分の好きなことはやれたと思います。
──前作リリース時のインタビュー(参照:ふくろうず「だって、あたしたちエバーグリーン」インタビュー)でも「自分らしい素直なアルバムにしたい」「自分が作りたいものを作る」という話がありましたが、今作はその姿勢をさらに強めて、より純度の高い作品に仕上がった印象を受けました。
今回は特に、私の純度が高いんだと思う。ピアノから始まる曲も2曲あるし。
──内田さんの色が濃く出ているということですよね。それは意識してそうしたんですか?
しましたね。このアルバムを作るにあたって今までの作品を振り返ったんですけど、1枚目のアルバム「ループする」(2009年リリース)は、すごく自分の色を出したアルバムだったなと思って。でも3枚目の「砂漠の流刑地」(2011年リリース)くらいからバンド感をもっと出したい、メンバーのいいところを引き出したいみたいな考えになってきて、自分を出すのをどんどんやめていったところがあったんです。でも前作くらいから、やっぱりもっと自分を出したほうがいいんじゃないかなと思って。それが今回さらに強くなった気がします。
──自分らしさを強く出そうと思ったきっかけは?
やっぱりもうちょっとだけ売れたいなって思ったんですよね。バンドって自分たち以外にもたくさんの人が関わって活動してるものだから、やっぱりある程度は売れてないと続けられないっていう現実があるので。
──自分を出すことがヒットにつながるということ?
うん、自分は残念ながら全然商売人じゃないから、今流行ってるものとかをうまく取り入れてヒットを狙うみたいのはやっぱりちょっと難しくて(笑)。周りに合わせたりするのもヘタクソだし、だったらいっそ自分の好きなものとか自分らしさみたいなものを出したほうがいい。そのほうが、少ないかもしれないけどちゃんとわかってくれる人に届くと思うし、結局は長く続けていけるんじゃないかと思ったんですよね。
──わかります。今回確かに素晴らしいアルバムですが、売れ線を狙った感じはないですし。
やっぱりそうなんだ?(笑) でもナタリーさんがそうやってお世辞とかじゃなくて本当にいいって思ってくれるんだったら、たぶん100人中1人くらいはこのアルバムが刺さる人がいるってことだと思うし、それが集まれば大人数になると思うし、私はその人たちを大事にしたいと思うんですよね。
──そういう気持ちは以前から持っていましたか?
いや、昔は全然そんなこと考えてなくて、すっごい時間かかっちゃったけど、10年バンドやってやっとわかった。まずはそこに届けたい。やっぱりこれしかできないなって思うんです。
少女趣味のバランス
──このアルバムの世界は全体的に淡いトーンで描かれていて、少女マンガのような印象を受けました。
そうですね。それはけっこう意図的にそうしたと言うか、少女趣味=自分らしさだなっていう自覚のもとに作ったところはあります。私以外のメンバーはレッチリとかが好きだし、以前は一応バンドやってる以上3人の接点みたいなところを見つけて曲を作ったりバンドをやろうと思ってたんです。でも今回それをやめたんで。
──ふくろうずには速くて激しい曲もありますが、それらは内田さんから自然に出てきたものではなかったんですか?
うん、そこはバンドをやっていく中でメンバーに引き出してもらった部分だと思う。もちろんオルタナとかも好きでけっこう聴いてたんで自分の中にそういう要素がまったくないわけではないんですけど、ものすごく素直にやったら出てこない部分かもしれないですね。
──内田さんの核になっているのは、こういう少女性の強い世界なんですね。
少女趣味の中にちょっとした生々しさとか若干の毒っ気があったりとか。だからバランスの問題なのかな。どの作品にも自分の少女っぽい部分はずっとたぶん入ってたと思うんですけどこれまでは2割くらいだった。そのバランスがもしかしたら今は逆転してるかもしれないですね。
──素直に曲を作るとこうなるということ?
私たぶんすごく女っぽい人間で、そのことがずっとコンプレックスで、だからどうにかそこから脱却したいっていう気持ちが「砂漠の流刑地」とかを作らせたんだと思います。あれはあれで面白かったと思うんですけど、それがあったから今、自分自身と自分の好きなものに素直に向き合えたのかなって。
次のページ »
恋愛以外に書きたいことはない
- ふくろうず「びゅーてぃふる」
- 2017年9月6日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
-
[CD]
2800円 / TKCA-74549
- 収録曲
-
- びゅーてぃふる
- デイドリーム
- カノン
- 光
- スローモーション
- ジミー
- ムーンライト
- ピンクエレファントの憂鬱
- ソナチネ
- サンライズ・サンセット
- ふくろうず「君とびゅーてぃふる ツアー」
-
- 2017年9月15日(金)大阪府 天満教会
- 2017年9月16日(土)愛知県 Tokuzo
- 2017年9月23日(土・祝)東京都 草月ホール
- 内田万里の花より男子ツアー
-
- 2017年10月21日(土)岡山県 蔭凉寺
出演者 内田万里(ふくろうず) / 山中さわお(the pillows) / 小山田壮平(AL) - 2017年10月22日(日)福岡県 住吉神社能楽殿
出演者 内田万里(ふくろうず) / 山中さわお(the pillows) / 小山田壮平(AL) - 2017年10月29日(日)東京都 青山CAY
出演者 内田万里(ふくろうず) / 山中さわお(the pillows) / ホリエアツシ(ストレイテナー) - 2017年11月4日(土)東京都 晴れたら空に豆まいて
出演者 内田万里(ふくろうず) / ジョンB & ザ・ドーナッツ!(ジョンB、真城めぐみ) - 2017年11月11日(土)京都府 拾得
出演者 内田万里(ふくろうず)
- 2017年10月21日(土)岡山県 蔭凉寺
- ふくろうず
- 2007年に東京で結成。内田万里(Vo, Key)、石井竜太(G)、安西卓丸(B, Vo)からなる3人組バンド。2009年12月に初の音源「ループする」をライブ会場などで限定発売し、その後2010年4月に2曲を加えた全国流通盤として再リリースした。このミニアルバムをきっかけに人気は全国区に拡大し、2011年6月に3rdアルバム「砂漠の流刑地」でメジャーデビュー。2017年9月には通算8枚目となるアルバム「びゅーてぃふる」を発表する。ボーカルの内田はソロ名義で弾き語りライブも行っている。