自分なりの“ポップ”でいいんだ

──お話を伺っていると、作風も制作スタイルもバンドの原点に戻った感じですよね。

内田　意図的にそうしました。1枚目みたいな作品をもう1回作ろうと思って、環境とか作り方もなるべくそこに寄せて。基本的には無理しないで素直に作っただけなんですけど。

──今までは無理してたところがあった？

安西　どうだろう。

石井　してたかもですね。

──でも以前の作品もコマーシャルなテイストや売れ線狙いな印象はありませんでしたけど。

内田　たぶんそんな器用じゃないから、コマーシャル感が出せなかったんだと思う（笑）。今はちょっと原点に立ち戻って、バンド感あふれる制作をしつつ、ヨーロッパ的な趣味を出しつつ、ある程度ポップだといいなっていう、そういう感じですね。

──自分たちの原点に立ち戻るのはいいことだと思いますが、もう一方でふくろうずが掲げていた「J-POPをやりたい」「コアな音楽好きじゃない普通の人にも聴いてほしい」といったテーマはどうなったんでしょうか？

内田　そこは「うららのLa」で、ある程度いい形が作れたのかなって思ってて。以前は売れてるもの＝ポップだと思ってたけど、最近は自分なりの“ポップ”でいいんだって思うようになったんですよね。

──売れたいという気持ちは？

内田　うーん、現実的に売れないといろいろ大変だっていうのは実感してるし、売れようと思ってがんばってたこともあるけど、それを狙ってやっていくのはやっぱ無理なので（笑）。自分たちの濃いところをもっと打ち出していって、それを受け入れてもらうしかないかな。狙ってこけちゃうよりは、素直にやって受け入れられなかったほうが気持ちいいし。だから今回そういうアルバムになってると思います。

起伏がなくても心地いい曲がある

──ポップさに対する感覚について、3人の間でズレはないんですか？

安西　どうなんだろ。でもやっぱ内田が書いてくる曲を聴いて「めっちゃいいじゃん！」って思うんで、そう思えてるうちは大丈夫なのかなって。

内田　切なくて、メッセージ性はちょっとあるけど、全体的にはあんまり毒々しくなくて、ちょっとかわいい。色としては薄い感じで油絵じゃなくて水彩画みたいな。それがふくろうずなりのポップだっていう、そこは3人の共通認識としてあるんじゃないかな。

石井　あると思う。

──なんだかんだで長いこと一緒にやってますもんね。

内田　めっちゃ長い。来年で結成10年になるんです。

──もうそんなに。

内田　でも10年やってる気がしないんですよね。まだメンバーのこと全然わかんないし。

石井　だって俺、昨日LINEで内田から「好きな音の雰囲気を教えてほしい」って言われたもん。

内田　そのあたりまだわかってないんです。

石井　今それ聞かれるんだ？って思ってビックリした（笑）。

──曲を書いていく中で「いい曲だけどポップじゃないからやらない」みたいなこともあるんですか？

内田　めっちゃありますよ。

安西　「この曲サビないよね？」みたいな（笑）。

──一応バンドには持っていくんですね。

内田　いや、持ってかない曲もいっぱいあります。暗い曲とか起伏がない曲とか。でも曲自体を明るくするのは私らしくないから、できればアレンジとかでもう少しポップに寄せたいんですけどね。

石井　でも起伏がなくても心地いい曲ってあるしね。1枚目とかそういうことなんじゃないかな。