音楽ナタリー Power Push - ふくろうず
開き直って原点回帰 エバーグリーンな新作完成
ふくろうずがニューアルバム「だって、あたしたちエバーグリーン」をリリースした。レーベル移籍後第1弾となるこの作品には、バンドの本質を凝縮した計11トラックを収録。原点回帰とも言えるこのアルバムがどのように作られたのか、メンバー3人に話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 藤田二朗
フランス人に「ダイ・ハード」は作れない
──ものすごくふくろうずらしいアルバムが完成しましたね。
内田万里(Vo, Key) 自分らしい素直なアルバムにしたいなっていうのは、作る前から思ってました。自分が作りたいものを作るっていうのが、このアルバムのコンセプトですね。
──自分らしい素直な作品というのは、具体的にはどういうことですか?
内田 私もともとヨーロッパ的なものがすごく好きなんです。ちょっと中二病的かもしれないけど、耽美なもの、暗いもの、ハッピーエンドじゃないもの。でもそういうものが好きな自分のことが、3、4年くらい前からなんだか恥ずかしくなっちゃって。ハリウッド映画とかのほうがカッコいいんじゃないかって。
──何かあったんですか?
内田 やっぱり人生長いし、暗い感じで生きててもなって思ったんですよね(笑)。あとメンバー2人がアメリカ的なものが好きだっていうのもあって、話してるうちに明るくてポップなもののほうがいいのかもなって。
──お二人はアメリカが好きなんですか?
安西卓丸(B, Vo) 確かに音楽でも映画も引っかかるのはアメリカのものが多いかも。
石井竜太(G) 俺もレッチリ(Red Hot Chili Peppers)とかNirvanaとかはやっぱり好きです。
内田 私が中高生のときは絶対そんなの聴かなくて、いわゆるサブカル好きの10代だったんです。だから1stアルバム(2009年リリース「ループする」)は当時の私のそういう趣味がすごく反映されてたんですよね。でもここ何年かはもっとポップなものとかキャッチーなものを作りたくなって。
──確かにここ数作のアルバムは明るい印象がありますね。
内田 って思って作ってたんですけど、その明るさはもともと自分の中にあるものじゃなかったんですよね。結局フランス人がどんなに「ダイ・ハード」が好きでも「ダイ・ハード」みたいな映画は作れない。フランス人はおとなしくフランス映画を作ったほうがいいものが作れるだろうって。そのことにようやく思い至りまして。だからハリウッド映画とかやっぱ無理だなって思う。今はもうやりたいことを素直にやろう、無理するのはやめようって思ってます。
民主主義はもうやめた
──ヨーロッパ派の内田さんとアメリカ派の2人との間で、意見の食い違いはなかったんですか?
安西 もともとバンド始めたときは完全に内田の趣味=バンドのカラーだったので、そこに戻った感じですよね。違和感はなかったです。内田が突然「私が好きなことをやる」って言い出して僕らは「はい!」って。
内田 どんなバンドでも活動を続けてるうちに、曲の作り方とかパワーバランスとかが変化するタイミングがあると思うんですけど、私の場合はここ数年、変に民主主義的にやろうとしすぎたっていうか。メンバーのいいところを引き出して作ったほうがいいと思ってたんですけど、それはある意味責任逃れだったのかなって。そういうバンドじゃないんです。もともとの成り立ちから私の書く曲を中心にして、私のよさをメンバーに引き立ててもらうみたいな感じだったし、このバンドはそういうやり方のほうがいいんだなって、はっきり思うようになりました。特にこの半年ぐらい。
──頼もしいですね。
内田 今は素直にそう思うし、その気持ちが作品にも反映されてるんじゃないかな。
──その感覚が特に強く出ている曲はありますか?
内田 アルバムの最後に入ってる「エバーグリーン」っていう曲は自分の趣味とか世界観みたいなものを詰め込んだうえで、みんなにちょっと助けてもらって作れた曲で、うまくいったなって思ってます。この曲の歌詞はめっちゃいいと思う。
──「エバーグリーン」はふくろうずのテーマ曲みたいなナンバーですよね。このアルバムだと特に「エバーグリーン」と「ダイナソー」の2曲は、ふくろうずらしさが剥き出しで表現されている気がします。
内田 うん、私の核みたいなものは、その2曲に凝縮されてると思う。
──その一方で「うららのLa」や「ラジオガール」といった曲はポップだし、ラジオで流れていても映えそうです。
内田 1人だけでやってたらもっと暗くなっちゃうと思うけど、2人のバカっぽい趣味のおかげでいいバランスになったんじゃないかな。「うららのLa」とかはちょうどいい感じでできたなって思って、すごく満足してます。
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- ニューアルバム「だって、あたしたちエバーグリーン」 / 2016年7月13日発売 / 2500円 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-74384
- ニューアルバム「だって、あたしたちエバーグリーン」
収録曲
- 白いシャトー
- メリーゴーランド
- うららのLa
- マイノリティ
- ラジオガール
- ダイナソー
- ファンタジック/ドラマチック/ララバイ
- 春の王国
- 夏のまぼろし
- 思い出か走馬灯
- エバーグリーン
だって、あなたたちエバーグリーンツアー
- 2016年11月17日(木)
- 愛知県 池下CLUB UPSET
- 2016年11月18日(金)
- 大阪府 OSAKA MUSE
- 2016年11月23日(水・祝)
- 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
ふくろうず
2007年に東京で結成。内田万里(Vo, Key)、石井竜太(G)、安西卓丸(B, Vo)からなる3人組バンド。2009年12月に初の音源「ループする」をライブ会場などで限定発売し、その後2010年4月に2曲を加えた全国流通盤として再リリースした。このミニアルバムをきっかけに人気は全国区に拡大し、2011年6月に3rdアルバム「砂漠の流刑地」でメジャーデビュー。2016年7月には5thアルバム「だって、あたしたちエバーグリーン」を発表する。ボーカルの内田はソロ名義で弾き語りライブも行っている。