東京育ちなりの泥臭さ

──「ベッドタウン」の歌詞は新境地ですよね。「ベッドタウンにポツリポツリと火が灯る」「季節が変わっても 世界が変わっても 君が変わっても ここに帰ろう」という、こうした内容をここまではっきりと伝えたことは今までなかったんじゃないですか？

内田　そうですね、うん。それは私もそう思います。「ループする」とか「ごめんね」（2010年発表の2ndアルバム「ごめんね」に収録）とか、そういう曲で言いたかったことをより明確に言ってます。

──大切なものは自分の中ではなく、他者との関わりの中にある、みたいなこと？

内田　あ、そう思ってもらえたらうれしいです。あと、みんな田舎への憧れみたいな気持ちってあると思うんですよ。そういう感情を刺激したいと思って書きました。

──「ベッドタウン」だからいわゆる田舎の風景じゃないけれど、誰の中にもある郷愁を歌っているというか。

内田　はい。あと単純に「カントリー・ロード（Take Me Home, Country Roads）」と、あとQueenの「Fat Bottomed Girls」の歌詞がすごく好きで。田舎について書きたいなっていうのがすごくあったんです。自分なりの「カントリー・ロード」が書けたらなあって。

──内田さんは「赤い糸」で「たぶん答えはないかも」って言ってるように、先のことはわからないという気持ちを歌い続けているように思うんですが、でも今回はわからないなりに本当のことをちゃんと言おうとしてる。そういう意識はありますか？

内田　そうですね。そう思います。そうしようと思って書いたから。

──そうしようと思ったのはどうして？

内田　単純に時の経過もあるし、ずっとシニカルでもいられないっていう意識も漠然とあります。まあシニカルとか言ってても「ごめんね」の歌詞なんかもけっこう泥臭いと思うし。もともとそういう性分だと思うんですけど。

──ふくろうずって東京育ちでどこかオシャレなイメージがありますけどね。

内田　あー、たぶん“東京育ちなりの泥臭さ”みたいなのがこのバンドのテーマかもしれないですね（笑）。

仮タイトルは「GINGA GINGA GINGA」

──最後に「マジックモーメント」というタイトルについて聞かせてください。アルバムタイトルが曲名じゃないのは今回初めてですよね。

安西　そうですね。

内田　最初は「GINGA GINGA GINGA」ってタイトルを考えてて。

安西　でもレーベルに伝えたらすげえ感触悪かったんです（笑）。

内田　売れると思ったんだけど。

──じゃあどういう経緯で「マジックモーメント」に？

安西　なんかこのアルバムに関しては「この曲名をアルバムタイトルに」っていうのがあんまり考えられなかったんですよね。すごくいろんな曲があったので。

内田　で、共通のキーワードとして「マジックモーメント」っていう言葉が出てきたんです。曲ができあがる瞬間っていうのはまさに「マジックモーメント」みたいなものだから。でも実際ありますよね？ 一瞬のひらめきというか「マジックモーメント」って感じの瞬間が。

──あると思います。

石井　さっきマンガ読んだり刺激を受けたときに曲ができるって言ってたんですけど、どの曲もたぶんそういう瞬間、そのときその場所で何か起こったりとか感じたりとかがあるはずで。

内田　このアルバムが聴いた人にとっての「マジックモーメント」だといいね、みたいな気持ちもあるんです。1曲1曲に「マジックモーメント」を感じてもらえたらいいなって思ってます。