ナタリー PowerPush - ふくろうず
J-POPの頂点を目指す! 3rdアルバム「砂漠の流刑地」
2010年に2枚のアルバム「ループする」「ごめんね」をリリースして好評価を得たふくろうず。代官山UNITでのワンマンライブも成功させ、インディーズシーンで熱い注目を浴びてきた彼らが、3作目にしてEPICレコードジャパンからメジャーデビューする。今回ナタリーでは、この3rdアルバム「砂漠の流刑地」で大きくスケールアップしたバンドの真実を探るべく、すべての楽曲を手がける内田万里(Vo, Key)にインタビューを行った。
ふくろうずについてのテキストやインタビューは決して多くはない。その上、内田万里はステージでほとんど喋らない。そこで今回は新作の話題だけにとどまらず、ふくろうずというバンドについて、そして内田万里というソングライターについてトータルに話を聞いた。何度も「人見知りだから」と繰り返しながらも、コミュニケーションへの強い意志を感じさせるインタビューだった。この記事が、ふくろうずワールドへの入口になってくれたらうれしい。
取材・文/津田真(クレーター通信)
作曲に楽器を使わないので、曲ができるのは早いです
──多作ですよね。「ループする」(全7曲)と「ごめんね」(全9曲)の間が半年、それから「砂漠の流刑地」(全11曲)までが8カ月半。短期間でがんがん曲を書いてますが、内田さん、今ソングライターとして爆発してるんですか?
初めてちゃんとした曲を作ったのが20歳過ぎたくらいなので。……だからじゃないですかね。普通みんな、高校ぐらいからやってるじゃないですか。
──蓄積されてきたものが、いま出てきている。
たぶんそういうことなのかなあ、と。“降りてくるの待ち”ですけど。
──そうは思えないペースですよね。
作曲に楽器を使わないので、曲の良し悪しを別にすれば、できるのは早いと思います。こう言うとちょっとすごい人っぽくてイヤなんですけど、頭の中で結構一気にできることが多くて。1日経って忘れてなかったらメンバーに伝えます。忘れてたら良くなかったんだなって。
──じゃあデモとかは作らない?
作り方がわからない(笑)。スタジオでメンバーにコードを伝えるところから始めます。
──内田さんにとって、ふくろうずが生まれて初めてのバンドということですけど。もしふくろうずがなかったら、曲作りやバンド活動はしてなかったんでしょうか?
絶対しなかったと思います。
──今でもそうですか? 内田さんが音楽をする上で「ふくろうず」という装置が必要なんですかね?
このバンドじゃなかったら……誰かが抜けたり、解散になったら、やらないんじゃないかと。もともと裏方っていうか、曲とか提供する人になりたいんですけど、自分が前に出るって考えたらこのバンドじゃないと、と今は思ってます。
人生は砂漠だけど希望を持ってがんばろう
──では「砂漠の流刑地」というタイトルのニューアルバムについてですが。1曲目「もんしろ」のエンディングが2曲目「砂漠の流刑地」につながるのは、コンセプトアルバム的な印象がありますね。
今回はちょっとコンセプトを持って作りました。意識としては1曲目が「砂漠の流刑地」で「もんしろ」はそのイントロ、みたいな扱いにしたいと思ったので、つなげたらよりコンセプトアルバム的な感じが出るかなーと。
──蝶々に導かれて砂漠へ行く。
そうです。
──歌詞に「流刑地」は出てこないですね。
出てこないですね。ほんとだ(笑)。
──「砂漠」は出てくるので、砂漠の囚人でいる、といったイメージですか?
そうですね。
──この曲もそうですが、アルバム全体が肯定的で、前向きで、力強い。でも世界認識はシビアで、ソングライター内田万里の恋愛や人生の原風景が見えるようですけど……それが「砂漠」なのか、と(笑)。
あ、でもそういうことだと思います(笑)。人生は砂漠だけど、希望を持ってがんばろう、みたいな。
ふくろうず
内田万里(Vo, Key)、石井竜太(G)、安西卓丸(B, Vo)、高城琢郎(Dr)からなる4人組バンド。2007年に東京で結成し、ライブを中心に活動を展開する。2009年12月には初音源となる5曲入りミニアルバム「ループする」をライブ会場等で限定発売。スーパーカーやクラムボン、キセルなどを手がけた益子樹(ROVO他)をエンジニアに迎えたこの作品は、独特の世界観と完成度の高いサウンドで大きな話題を呼び、2010年4月に2曲を加えた全国流通盤として再リリースされる。この全国流通盤をきっかけに人気を全国区に拡大させ、メディアのライブイベントにも精力的に出演。2010年10月にニューアルバム「ごめんね」をリリース。2011年6月に3rdアルバム「砂漠の流刑地」でメジャーデビュー。