藤原さくらがニューアルバム「PLAY」をリリースした。
2016年は、フジテレビ系月9ドラマ「ラヴソング」で演技に初挑戦したほか、全国ツアーの開催や各地の大型フェスへの出演など、1年を通してさまざまなことに挑んだ彼女。それぞれの経験が反映されたという新作は、メジャー1stアルバム「good morning」以上にバラエティに富んだ作品となった。
YAGI & RYOTA(from SPECIAL OTHERS)、関口シンゴ(Ovall)、Kan Sano、永野亮(APOGEE)という個性的なプロデューサー陣や、秋田ゴールドマン(SOIL & "PIMP" SESSIONS)、H ZETT M(H ZETTRIO)、mabanua(Ovall)、Shingo Suzuki(Ovall)という手練たちがレコーディングに参加した本作。今回のインタビューでは着想から完成に至るまでの過程を語ってもらった。
取材・文 / 大谷隆之 撮影 / moco.(kilioffice)
月9で手に入れた視点
──「good morning」以来、約1年3カ月ぶりのフルアルバムですね。前作のインタビューでは「まず最初に、新しい朝の光のようなイメージがあった」と話していましたが、今回の2ndアルバムはいかがでした?
昨年2月に「good morning」をリリースしたあと、すぐドラマの撮影が始まって、それが終わるとすぐにアルバムツアーで全国を回らせてもらって。私にとって去年は、初めての演技と音楽、それぞれにみっちり取り組んだ1年でした。2ndアルバムを制作するにあたって、そんな今の自分を音楽で表現したいという気持ちがあって。だから「PLAY」というタイトルには、誰かを“演じる”ことと音楽を“演奏する”こと、両方の意味が入っています。2つの要素を遊び心も交えつつ、楽しんで表現できればいいなと。
──演じる、奏でる、遊ぶ、楽しむ。「PLAY」のひと言にいろいろな思いが込められているわけですね。月9でヒロインを演じた経験はやはり大きかった?
とっても大きかったし、今回のアルバム作りにもさまざまな面で影響していると思います。実際、ドラマの「ラヴソング」と主題歌の「Soup」で私の存在を知って、それでライブに足を運んでくださるお客さんも増えましたし。例えば英語の楽曲はちょっと少なめにするとか、そういう新しいオーディエンスにも楽しんでもらえる“入りやすさ”みたいなものは、すごく意識しました。1stアルバムを出したあとには、シングルを2枚リリースしていたので……。
──昨年6月発表の「Soup」と、今年3月に出た「Someday / 春の歌」ですね。
「Soup」と「好きよ 好きよ 好きよ」は福山雅治さんが作詞と作曲をされたドラマの曲で、「Someday」は子供向け番組「ポンキッキーズ」のエンディングテーマ、「春の歌」はスピッツさんのカバーで映画「3月のライオン」後編の主題歌だったり。これまではアルバムのためにゼロから楽曲を作っていたけれど、今回はテレビや映画で用いられた曲が先にありました。
──なるほど。
そこに自分のオリジナルをどう足して、いいバランスに着地させるかは今回の課題だった気がします。でも、一番大きな影響は、曲を作る際の視点が根本から変わったことですかね。
──どういうことでしょう?
ドラマで佐野さくらという女の子を演じた経験を通して、自分じゃない誰かを主人公にした曲も歌いたいと、自然に思うようになりました。そういう視点って、今までにはあまりなかったんです。やっぱり、誰かに恋してるときの曲とか、実家に帰りたいとか(笑)、ベースになっていたのは、私自身の気持ちだったんです。でもドラマの現場で数カ月間、自分じゃない女の子の内側の部分とじっくり向き合ったことで、客観的な部分が生まれたというか。
──お芝居をするように、歌の中で誰かになりきってもいいんだ、と。
そうですね。もともと「Soup」「好きよ 好きよ 好きよ」の2曲は、ドラマ内で佐野さくらという別人格になりきって歌ったものだし。今回、アルバムのために書き下ろした新曲も、男の子目線だったり、物語だったり、頭に浮かんだ情景を、少し引いた目線から歌ったものがほとんどなので。20歳になった自分を素直に表現した「good morning」とは、そこが大きく違います。それでアートワークの方向性も、前の2枚とはがらりと変えてみました。
「藤原さくらに戻って、いろんな曲をたくさん作ろう」
──今作のジャケットは線路の上を歩いている女の子を、どこか遠くから眺めているような絵柄で。
今回もジャケットのディレクションは、大好きなデザイナーの藤田二郎さんにお願いしたんですけれど、雰囲気がけっこう違うんですよ。 最初のミニアルバム「à la carte」は桜の木、前回の「good morning」はニワトリのイラストと、象徴的なモチーフをドン!と前面に押し出すジャケットだったんですが、このアルバムでは私から見た世界じゃなくて、登場人物を俯瞰で見てる感じが出したくて。実は「PLAY」というアルバムを作り始めて、最初にできたのが「sakura」という曲だったんですけど。
──アルバム中盤に収められた、ミドルテンポの切ないラブバラードですね。
これは実は、「ラヴソング」で演じた佐野さくらに向けて書いた曲なんです。
──へええ、そうだったんですか。
ドラマ収録期間はほぼ半年、曲作りも一旦止めて、佐野さくらとして暮らしていたので。音楽番組などでずっと「Soup」は歌っていたし、自分の中でドラマを引きずってる感じもあって、ひと区切りをつけたいというか、演技の経験から得られたものを音楽に昇華させたかったんです。「あの子は今、どうしてるんだろう……」と考えながら、ロケ地の西新宿を1人で歩いてみました。彼女のアパート裏に銭湯があるんですけど、そこにもふらっと入ったりして(笑)。
──思い出の場所をたどって佐野さくらにサヨナラをした、みたいな?
かもしれませんね。ドラマが終わって1、2カ月くらいだったかな。で、そのときの印象から「sakura」という曲が生まれたとき、「あ、これからは藤原さくらに戻って、いろんな曲をたくさん作ろう」って素直に思えました。
──面白いですね。佐野さくらというキャラクターと一度きっちりとお別れし、自分の中で消化したことで、一気にソングライティングの自由度が増したと。
実際、曲を作ってるときに今までとは違う手応えがあって、新鮮で面白かったです。例えば「SPECIAL DAY」みたいに、“僕”の視点で歌った曲や英語詞の「Necklace」は完全に物語の曲ですし。とある男女の恋愛を自分もリスナーと一緒に眺めてるような感じもありました。そういうバラエティは、前作より出せた気がします。
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私の行く道、やり方を示した1曲目
- 藤原さくら「PLAY」
- 2017年5月10日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1149 -
通常盤 [CD]
3024円 / VICL-64771
- CD収録曲
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- My Way
- Someday
- 春の歌
- play with me
- 赤
- 好きよ 好きよ 好きよ
- sakura
- Necklace
- Soup
- play sick
- SPECIAL DAY
- はんぶんこ
- 初回限定盤DVD
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- Someday (Music Video)
<藤原さくら Special Live 2017 - Live at Bunkamura Orchard Hall 20170218 ->
- Soup
- Walking on the clouds
- MC - Soup (reprise)
- 500マイル
- 1995
- Necklace
- Someday
- 「かわいい」
- 春の歌
- ツアー情報
-
- 2017年5月27日(土)埼玉県 戸田市文化会館
- 2017年6月10日(土)広島県 上野学園ホール
- 2017年6月16日(金)新潟県 新潟市音楽文化会館
- 2017年6月18日(日)宮城県 仙台市民会館 大ホール
- 2017年6月25日(日)福岡県 福岡市民会館
- 2017年6月29日(木)北海道 道新ホール
- 2017年7月1日(土)愛知県 名古屋市民会館
- 2017年7月9日(日)大阪府 オリックス劇場
- 2017年7月17日(月・祝)香川県 サンポートホール高松
- 2017年7月21日(金)東京都 中野サンプラザホール
- 2017年7月22日(土)東京都 中野サンプラザホール
- 藤原さくら(フジワラサクラ)
- 福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼少期からさまざまな音楽に親しみ、父親の影響で10歳からギターを弾き始める。高校進学後にオリジナル曲を作り始め、地元でライブ活動も行う。高校卒業を機に上京すると音楽活動を本格化させ、2015年3月にミニアルバム「à la carte」でSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビュー。2016年2月にメジャー1stフルアルバム「good morning」を発表した。また同年4月からフジテレビ系月9ドラマ「ラヴソング」に主演の福山雅治の相手役として出演。同作の主題歌「Soup」や劇中歌「好きよ 好きよ 好きよ」を歌い注目を集めた。2017年5月に、映画「3月のライオン」後編の主題歌に採用されたスピッツのカバー曲「春の歌」を含むメジャー2ndアルバム「PLAY」をリリース。