まだこんなに試行錯誤することがあるんだな
──アルバムの序盤には、アップテンポな「オクリモノ」と「きっと感じてた」が続いて収録されています。この2曲を聴いただけでも新しい藤田さんを感じることができますよね。
その2曲は私も本当にお気に入りなので、アルバムの中でも早めに聴いてほしいなと思って頭のほうに持ってきたんですよね。ただ、しょっぱなに入れてしまうと「あれ? 方向性変わっちゃった?」っていきなり思われちゃうかもなと思ったので(笑)、1曲目には今までの流れを汲んだ王道な感じの「素敵なことがあなたを待っている」を入れることにしたんです。そうしておけばアップテンポな曲もいい流れで聴いてもらえるかなと思ったので。
──「オクリモノ」はサビでの疾走するビート感が新鮮ですよね。すごくカッコいい。
AメロBメロはハーフでテンポを取ってるんですけど、サビでは一気に速くなるっていう。その繰り返しが気持ちいいなって思ったんです。ずっと速いままだと私のよさが減ってしまう気もしましたし。
──そのあたりのバランス感覚は藤田さんらしいところかもしれないですね。振り切ってテンポの速い曲にするのではなく、あくまでもご自身の持ち味を生かした構成、アレンジにするっていう。
今まではバラードとアップテンポな曲の差が思い切り開いちゃってたと思うんですよ。だからその距離をどうすれば縮められるのかなっていうことをずっと模索してたところがあって。明るいんだけど明るすぎず、どこかに哀愁がある雰囲気とか、月と太陽で言えば月のイメージのある私の声で前向きな歌を歌ってみるとか、そういうバランスを取れば自分らしいアップテンポな曲になるんじゃないかなっていうのは頭でわかってたんですけどね。なかなかうまく表現することができなくて。でもこの曲ではそれがちょっとだけ成功したんじゃないかなとは思ってますね。
──10年を超えるキャリアをもってしてもなお、試行錯誤し続ける姿勢は素晴らしいですね。
インディーズから合わせたらもう8枚目のアルバムなのに、まだこんなに試行錯誤することがあるんだなって思いますけどね(笑)。しかも試行錯誤した成果は案外、その瞬間にはわからないものだから難しい。とは言え、それが楽しいところでもあるんです。例えば毎日がんばってトレーニングして体を鍛えていると、気付いたら風邪を引きづらくなってたとか、想像以上の力が付いてたみたいなことってあるじゃないですか。それと一緒で、音楽もがんばって試行錯誤を繰り返していることで、気付いたら新しいことができるようになった自分がいたんです。で、そこに気付くことで、また次の挑戦ができるようになるっていう。もちろんその間にも試行錯誤して苦しまないといけないんですけどね。まあそういう試練も嫌いではないんですけど(笑)。
今回はこういう曲を入れても大丈夫だろう
──先ほどお話に出たミュージカルのような雰囲気を持つ「嫉妬」はかなりの衝撃作ですよね。柔らかな印象で始まったかと思えば、後半でものすごい展開が待っていて、そこで初めてタイトルの意味を知る、みたいな。
そうそう(笑)。最初は自分の気持ちを表に出せない内気な女の子を表現して、お花畑みたいな甘い感じのアレンジになってるんだけど、そこからの激変! 歌に関してもその激変にインパクトを出すために、最初はものすごく穏やかに歌ってますからね。この曲はレコーディングもほんとに楽しかったです。実は3、4年前にはできていた曲だったんだけど、いつも音源化を却下されていた曲だったので喜びもひとしおで。
──それもやはりこういう曲を出すに時期尚早だったってことなんですかね。
それもあったし、これまでのアルバムの中に入ったらインパクトが強すぎて、こういうインタビューでもきっと「嫉妬」の質問ばかりになっちゃうだろうなって(笑)。でも今回は「素敵なことがあなたを待っている」みたいな王道の曲がバシッと強く存在してくれているので、こういう曲を入れても大丈夫だろうっていう判断になりました。
──この曲のレコーディングはどんな雰囲気だったんですか?
「嫉妬」のアレンジはかなり具体的なイメージをお伝えしていたんですけど、そこにアレンジャーのIkomanさんも乗っかってくれて「もっと劇的に、“火サス”みたいにしよう!」って言ってくださって。弦を弾いてくれた方たちにも、「今のフレーズ、もっとクレイジーに鳥肌感を追求したらどうなる?」みたいな(笑)。で、弾いてもらって怖かった、鳥肌が立ったみたいなところが採用基準になってましたね。いやーほんとに楽しかったです。
──で、そんな「嫉妬」のあとに、感情が爆発する「秋風鈴」が入っているのも最高だなと。個人的には勝手にホラーゾーンと呼んでますけど。
あははは(笑)。「秋風鈴」はホラーな曲ではないけど、確かにこの並びだとそう聴こえちゃいますよね。サウンド的な爆発感のある2曲でもあるので、アルバムの中に離れて収録しちゃうのはちょっともったいないかなと思って並べたんですけど、このゾーンだけちょっと聴いてると力が入っちゃう感じはありますね(笑)。
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今、曲にしておくべきなんじゃないか
- 藤田麻衣子「思い続ければ」
- 2018年1月10日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤 [CD+DVD]
5616円 / VIZL-1292 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64905
- CD収録曲
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- 素敵なことがあなたを待っている
- オクリモノ
- きっと感じてた
- 思い続ければ
- 恋ってどうやってするものだっけ?
- 嫉妬
- 秋風鈴
- 一緒に暮らそう
- さよならありがとう
- やるしかない
- どこまで行けば
- あなたがいるから[album Ver.]
- 初回限定盤DVD収録内容
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藤田麻衣子 Live 2017 ~緋色の欠片 10th Anniversary~ @EXシアター六本木
- 横顔 ~わたしの知らない桜~
- ねぇ
- 蛍
- 金魚すくい
- 水風船
- 秋風鈴
- 運命の人
- 高鳴る
- きっと
- それでも私は
- 二人なら
- 瞬間
- 君が手を伸ばす先に
- 今でもあなたが
- この白い雪と
- 卒業
- 恋に落ちて
- 宝物
- 藤田麻衣子 LIVE TOUR 2018 ~素敵なことがあなたを待っている~
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- 2018年2月8日(木)大阪府 なんばHatch
- 2018年2月9日(金)愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年2月18日(日)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年2月22日(木)宮城県 Rensa
- 2018年2月24日(土)北海道 cube garden
- 2018年4月10日(火)東京都 東京国際フォーラム ホールC
- 藤田麻衣子(フジタマイコ)
- 愛知県名古屋市出身のシンガーソングライター。2006年9月「恋に落ちて」でインディーズデビュー。すべての楽曲の作詞作曲を手がけるほか、アーティストへの楽曲提供も行っている。フリーライブを軸に活動しながらファンを増やし、2012年に東京・渋谷公会堂公演、2013年7月に東京・NHKホール公演を実施。同年10月には東京・日本武道館での弾き語り無料ワンマンライブを成功させた。2014年3月に「涙が止まらないのは」でメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「one way」をリリースした。2016年には47都道府県ツアーを行い、11月にCDデビュー10周年を記念してベスト盤「10th Anniversary Best」を発表した。2017年4月に東京・すみだトリフォニーホールで念願のオーケストラコンサートを初開催し、9月にシングル「素敵なことがあなたを待っている / 秋風鈴」をリリース。2017年1月にニューアルバム「思い続ければ」を発表する。