悲しい曲ほどきれいにしたい

──ここからは藤田さんに、新曲「おぼろ月」の制作の背景を伺えればと思います。そもそもこの曲はどういう経緯で生まれた楽曲だったんですか？

私は詞を先に書いてから曲を作るタイプなんです。この「おぼろ月」はけっこう前にノートに書き留めていた歌詞というか言葉が原形になっています。ずっとちゃんとした形にできずにいたんですが、最近になって気持ちの整理もついて、この言葉を曲にしたいなという思いが湧いてきたんです。

──この曲は失恋を歌った曲ですが、モチーフとなったのはご自身の体験ですか？

100％実体験を歌いましたって曲ではないかな。薄雲がかかった月を見て、すごく寂しそうだなって思って。力なく光る月と、失恋をして悲しかった頃の自分の気持ちとをリンクさせて書き留めたのがこの曲の詞だったんです。悲しい詞だからこそ、可能な限りきれいな曲に仕上げたいなと思って、まらしぃさんにピアノをお願いしたという経緯があります。

──期待通りきれいに仕上がりましたか？

もちろん、期待以上でした。今回まらしぃさんとご一緒させていただいて、曲をきれいにしていただいただけじゃなくて、私自身すごくいい影響を受けたんです。ピアノを直接教わったわけではないんですけど、「もうちょっと指を優しく置いてたな」とか、「ここはこういう和音を選んでたな」とか。やっぱり生で観るのは違うなあと思いました。弾いてる姿は絵になるし、指先1つとってもすごくすてきだから、皆さんにもぜひライブを観てほしいですね。

詞を書くのは歯磨きみたいなもの

──「おぼろ月」はもともとメモしてあった言葉をもとに制作したと伺いましたが、そういったメモはけっこうな量をストックしてるんですか？

毎日何かしらを書き留めているので、けっこう量がたまりますね。クセというか、歯磨きみたいに日常の一部になってるから（笑）。

──歌詞の種になるアイデアは毎日生まれてくるものなんですか？

「歌詞を書こう」って思ってなくて、どちらかというと気持ちをメモしておこうって感じなんですよね。だから毎日何かしらは書けるんです。例えば友達に何かしてもらった日があったら、その感謝の気持ちとこの友達がいてくれてよかったなって気持ちをメモしておくんです。それと、ちょっと嫌なことがあったり、モヤモヤした日があったら、その原因を全部書いていきますね。不思議なんですけど、嫌なことを書いているのに最後にはプラス思考になるんですよ。

──書き出すことで気持ちを整理してるんでしょうか？

それもありますけど、根っこのところがプラス思考なんだと思います（笑）。「こんなに辛いってことはもうすぐいいことがあるはず、これは貯金されてるぞ」とか、「大成功した人も昔は大変な思いをいっぱいしてるから、私も大丈夫」って考えたりしてるので。

──曲はどういうプロセスで作っているんですか？

言葉はたくさん書いてるんですけど、曲はホントに追い込まれないと作れなくて。曲を作るぞってときは、自分の作りたい雰囲気のものを聴くことが多いですね。いろんな人に届けたい優しい曲だったら、そういう曲をめっちゃ聴いたりとか。

──音楽漬けの毎日なんですね。

今回の「おぼろ月」もそうですけど、詞や歌にすることで心の整理ができるのって、すごくいいことだなって思ってるんです。まらしぃさんに「音楽が好きですよね」って言ったけど、私もやっぱり音楽がすごく好きなんだなあって、改めて思いました。