自分の声がもっと好きに
──グループ活動と並行して、昨年5月にはソロ曲「鬱鬱バッキュン!」をリリースされました。翌月には小野さんもソロ曲「オチャノコサイサイ」を発表していますが、そもそもソロ曲を出すという話はどういう流れで決まったんですか?
もともと「それぞれソロ曲も欲しいよね?」という話は緑ちゃんとしていたんですけど、その意見を事務所が汲み取ってくれて。「じゃあやってみる?」という話になり、作詞作曲を手がけてくださる辻村(有記)さんに曲や歌詞のイメージを伝えて作っていただきました。
──先ほどの神聖かまってちゃんの話じゃないですけど、ずっとやりたかったことがこの曲に集約されていますよね。ソロ曲となると1曲通して自分だけで歌うことになるわけですが、声のことでからかわれた幼い頃と比べて今はご自身の声をどう捉えていますか?
好きですし、もっと好きになりました(笑)。「凪ちゃんの歌声が好き」と言ってくれる人が増えて、それが自信にもつながっています。今ではレコーディングやライブで「自分が一番!」ってくらいの気持ちで歌ってますね。でも、ないものねだりというか、ほかのメンバーの低い声がカッコよかったりすると「いいなあ。自分もこういうふうに歌えたらなあ」と思ってしまうこともあります。そんなことを言っていても仕方ないんですけどね。今はこの声を100%生かせる歌い方を身に付けようとか、どうしたらこの声が映えるかなとか、今の自分を武器にできるようにがんばっているところです。
まさにジェットコースター。私の人生みたいですよね(笑)
──初のソロ曲リリースから約1年を経て、今年9月20日には2ndソロシングル「幸あれいっ」がリリースされました。新たなソロ曲制作が決まったとき、どんな曲を届けたいと考えましたか?
「鬱鬱バッキュン!」には自分の中の応援歌というテーマがあって、この曲を聴いて自分が元気になれたらいいなと考えて制作に臨んだんですけど、曲を聴いてくれた方から「元気になりました!」「救われました!」という声がたくさん届いて。自分のために作った曲が誰かの応援歌になっているんだなと気付いたので、「次は誰かを救う曲が歌いたいです」と辻村さんにお伝えした結果、「幸あれいっ」が完成しました。
──藤咲さんが神聖かまってちゃんの曲を聴いて救われたように、今度は藤咲さんが聴き手を救う側になったと。
本当ですね。なので、もっともっと届けたいですし、届くといいなと思っています。
──その「誰かを救う曲」に関して、こういう歌詞の内容でこういう曲調という具体的なイメージは持っていましたか?
自分の声や歌い方的にもアップテンポの曲が合ってるよねという話を辻村さんとしていて。歌詞に「消えたい」とか「死にたい」とか入っていますけど、そういうネガティブな言葉を使うからこそメロディはポップな感じにしてほしいと伝えました。あと、歌詞に関しては絶対にハッピーエンドで終わりたくて。
──「消えたいと死にたいはちゃいますねん / 分かったから私が側にいます」という最後の2行は、まさにそれですよね。
そういう光が差すようなポジティブな終わり方にしたかったので、イメージ通りでした。
──おっしゃるように、歌詞にはネガティブな要素が含まれていたり、「震えて待ちな」という強めの言葉でドキッとさせられたりするものの、藤咲さんの甘い声とキャッチーなメロディラインがあるからこそポジティブに響きますし、サウンド的にも緩急の差が激しくて。3分に満たない短い曲ながらも、ジェットコースターのようなドキドキ感や爽快感が味わえますよね。
そうなんです! まさにジェットコースター。私の人生みたいですよね(笑)。
──(笑)。レコーディングする際に、意識した点や注力したポイントはありましたか?
最初にいただいた仮歌は辻村さんがカッコいい感じで歌ったものだったんですけど、そこに引っ張られることなく自分らしい歌い方に変えていて。「合言葉はポップにお届けさ」というフレーズがあるんですけど、歌詞が全体的に重ためなのでできるだけかわいく歌いたいなと思いました。あと、早口で歌うパートとか「震えて待ちな」のところは、かわいさよりもカッコよさを意識したポイントかもしれません。
──よくアイドルの皆さんにお話を聞くと、仮歌の細かなフレーズや歌い回しを意識して取り入れているとおっしゃっていますが、藤咲さんの場合は常に自分らしさを意識して歌っていると。
そうですね。そこは大事なポイントかもしれないです。
──ご自身の特徴的な声を生かすうえでは、それは必要な作業なのかもしれませんね。これを1曲通して歌うとなると、かなりカロリーを消費しそうですが。
ちょうどさっきも練習していたところなんですけど、自分の思いが込もった好きな曲だからなのかな。確かに体力は消耗するんですけど、それを楽しさが上回るんですよ。
武道館ライブを現実のものに
──ソロ名義では現在まで2曲発表していますが、もっとこういう曲を歌いたいという欲は出てきましたか?
これは初めて話すんですけど、いずれ自分でゼロから歌詞を書きたいなと思っています。今回は辻村さんが私の気持ちを汲み取って作ってくださいましたけど、いずれは自分から出てくる言葉で歌詞を作ってみたいです。
──趣味含め、これまで作詞の経験は?
私、ポエマーみたいなところがあって(笑)。昔はSNSに長文ポエムを書いていたんですよ。でも当時、事務所から「病んでるように見えるから、一旦それやめてみようか」と言われてしまって(笑)。でも、今は「(そういう面を)もっと出していいよ」と解禁されたので、またポエムを再開しようかなと思っているところです(笑)。昔からそうなんですけど、日記とか自分の言葉を文字にして留めておくことが好きなので、作詞も向いているんじゃないかなと勝手に思っています。
──それは間違いなく向いていると思いますよ。「もっとこういう曲にチャレンジしてみたい」というサウンド的な希望は?
「鬱鬱バッキュン!」も「幸あれいっ」もアップテンポだったので、もうちょっとスローな曲だったり、これまでとは違うジャンルにも挑戦してみたくて。そこは積極的にいろいろやってみたいと思っています。
──音楽活動に対して意欲的な今、藤咲さんはここからどんな存在になりたいと思っていますか?
「鬱鬱バッキュン!」をリリースしたあとに、かつての自分みたいに病んでいる若い女の子たちから「救われました!」とか、「死のうと思っていたけど、この曲を聴いてもうちょっと生きてみようと思いました」とかいろんなメッセージをもらって。今回の「幸あれいっ」はどういう層に刺さるかはまだわからないですけど、音楽を通して救える人を1人でも増やす存在になることは目標の1つです。
──若くして波乱万丈の人生を送ってきた藤咲さんだからこそ、伝わるメッセージは間違いなくあると思います。では、今達成したい目標は何かありますか?
やっぱり、最初に緑ちゃんと話した武道館に立つことですね。昔は単なる憧れだったかもしれないけど、今はより現実のものとして捉えているので、絶対に実現させたいです!(※インタビューは9月中旬に実施)
10月2日、最終未来少女のメンバー・小野緑が2025年1月をもってグループを卒業することが発表された。また小野の卒業発表を受けて、最終未来少女の新メンバーを募集する「SMS NEW MEMBER AUDITION」が開催される(参照:最終未来少女の小野緑が卒業発表、新メンバーオーディション開催)。
プロフィール
藤咲凪(フジサキナギ)
1999年9月20日生まれ、北海道出身。AIのようなルックスを持つ“AIドル”として活動する4⼈組⼥性アイドルグループ・最終未来少⼥のメンバー。2023年5月に藤咲と⼩野緑の2⼈体制で本格的な音楽活動を開始する。同月に1stソロシングル「鬱鬱バッキュン!」を配信リリース。6月に地上波で放送されたわずか5秒ほどの街頭インタビュー映像が「かわいすぎる」「AI画像なのではないか」と話題になり一躍注目される。さらに8月にはTBS系「サンデー・ジャポン」に出演し、現役アイドルながら2児のシングルマザーであることを初公表したことで“リアル『推しの子』”と評され大きな話題となった。2024年5⽉、最終未来少⼥に新メンバーとしてYuika、Tenが加⼊し現在の4⼈体制に。9月に藤咲の2ndソロシングル「幸あれいっ」が配信リリースされた。