スカパー!×ナタリー PowerPush - FUJI ROCK FESTIVAL '12
日高正博×ブライアン・バートンルイス対談
日本における夏フェスの草分けとして、今年で16回目の開催を迎えるFUJI ROCK FESTIVAL。7月26日の前夜祭から29日にかけて新潟・湯沢町苗場スキー場で実施される今回も、THE STONE ROSESやRADIOHEAD、サカナクションなどといった国内外のさまざまなアーティストが出演する。
さらに今年は現地の熱い模様を届ける番組「FUJI ROCK FESTIVAL '12」をスカパー!で独占生放送。これを記念してナタリーでは、SMASHの日高正博代表と番組の司会を務めるブライアン・バートンルイスの対談を企画した。2人しか知らない裏話はもちろん、それぞれが考えるフェス像、そして今年の見どころなどについて話してもらった。
取材・文 / 福アニー 撮影 / 高田梓
みんながまだ知らなくても面白い音楽はある
──ブライアンさんは「オールナイトフジ」のプロデュースなどフジロックと深い関わりがありますが、そもそも日高さんとはどのような経緯で出会ったのですか?
ブライアン・バートンルイス(以下、ブライアン) ずいぶん古くなりますねえ。
日高正博(以下、日高) 六本木の料理屋だよな? まだ学生じゃなかった?
ブライアン そうです、当時18歳でした。1990年にSTEVIE SALAS COLORCODEが来日したときに、彼らが所属するレコード会社でバイトしてたので、ツアー通訳として同行していて。そのときのディナーで日高さんにお会いしたのが最初ですね。その後、BEASTIE BOYSとかSONIC YOUTHとか、SMASHで招聘した海外アーティストの国内ツアーで通訳をさせてもらうようになりました。
──2003年からスタートした「オールナイトフジ」のアイデアはどこから生まれたのですか?
日高 ブライアンからだったね。
ブライアン 当時、僕の大好物は「野外レイブパーティ」と「フジロック」だったんです。で、その大好物を「どうしても合体させたい」って、酔っぱらいながら日高さんに一晩中熱く語ったんです。そしたら日高さんが、「そこまで言うならやってみろ」って言ってくれて。それが「オールナイトフジ」の始まりですよ。で、それから特に日高さんとのディスカッションもないまま、今年で10年目を迎えるという(笑)。
──ブライアンさんの「オールナイトフジMEGA-10」をはじめ、今年もさまざまなライブや企画が目白押しですが、ずばり見どころは?
日高 ない。というか、オーガナイズする側から「ここが見どころだよ」とか、「このバンドがいいです」とかは言えないよ。あと、自分らが好きな音楽じゃなきゃオファーはしないから、個人的には全部楽しみ。けど、これを全部観ることはできないよね(笑)。
ブライアン 毎年、ステージ数もアーティスト数も増えていきますからね。ポスターの出演者情報がどんどん増えていって、そのうちポスター1枚には収まりきらなくなっちゃうんじゃないかな?(笑)
──ブッキングはどのように進めるんですか?
日高 やっぱり最初はヘッドライナーだよね。一番早いときで1年半前からスタートすることもある。今年のTHE STONE ROSESとRADIOHEADは、去年ARCTIC MONKEYSがGREEN STAGEで演奏してる裏側で決めたんだよ(笑)。
──すごい状況で決まったんですね(笑)。
日高 ただ、ヘッドライナークラスの有名アーティストはもちろん大事だけど、それと同じように小さいアーティストも大事なんだよ。俺の中では「例えみんながまだ知らなくても面白い音楽はある」っていうのが、フジロックの重要なテーマだから。その充実感はいつも考えてるよ。
ブライアン フジロックに行くことで、自分の音楽の趣向が毎年のようにテコ入れされているのは感じますね。好きなバンドを観るだけじゃない、知らないアーティストや新たな音楽に出会ってこそ、音楽人生が充実するというか。
「全然知らなかった」って言わせたい
──お2人なりのフジロックの楽しみ方はありますか?
ブライアン 僕は基本的に寝ないことと、極力ひとつの場所に5分以上いないこと(笑)。動きまくりますね。フジロックではアーティストがいろんなことを積極的にやってくれるから、普段は観られないような場面と遭遇するチャンスがあるんです。
日高 これは楽しみ方ではないかもしれないけど、お客さんに「全然知らなかった」って言わせたいんだよね。「そんなバンドがいたのか」「初めて観たけどめちゃくちゃ良かった」なんて声を聞くのがフジロックやってて一番うれしい。とある人が、「ORANGE COURTから次の目当てのバンドを観るためにGREEN STAGEへ行く途中、FIELD OF HEAVENでやってた全然知らないアフリカのバンドに釘付けになった」って言ってくれて。
ブライアン 僕は裏を突くのも好きですねえ。GREEN STAGEでビョークやってるのに、あえてORANGE COURTでジョン・ゾーンを観るとか(笑)。
日高 そういえば、昔(忌野)清志郎くんに苗場食堂で夜中に即興ライブをやってもらったこともあったなあ。そのときは、「苗場食堂で夜中一緒に飲もうね」って話してたの。で、「念のためギターも持ってきて」と言っておいて。飲んだ勢いで清志郎くんに「ここでやらない?」ってそそのかしたら、あの口調で「やりますかあ」って(笑)。
──そんなさまざまな楽しみ方があるフジロックですが、そもそも日高さんが日本でフェスをやろうと思ったきっかけはなんだったんでしょう。
日高 イギリスの「GLASTONBURY FESTIVAL」のようなものを日本でやってみたかったんだ。80年代の頭だったと思う。グラストンベリーはCND(核軍縮運動)に参加してて、売り上げのほとんどをそこに寄付してたんだよね。俺もその頃日本で「アトミック・カフェ・フェスティバル」をやり始めてたから、そういうのをやりたかったんだ。でも、最初は無理だろうなって思ったよ。マニュアル化されたものを良しとする日本と、自分の問題は自分で片付けるっていういい意味でのミーイズムがある欧米では国民性の違いもあるし。やろうと決心したのはそれから10年くらいあとだったもんね。
──決心した要因はなんだったんですか?
日高 何か特別な理由があったわけじゃないんだよ。でもそれだと時間ばかり過ぎちゃうから、「決めないともうだめだ、やるぞ!」って。それが95年くらい。それからジープにテント詰め込んで、日本国中あちこち回ってずっと場所探してた。俺は会社の連中には知らせてなかったけど、「どうも変なことやってるらしい」「会社にはいないし山にこもってるらしい」って言われてた(笑)。でも、開催地はなかなか決まらなかった。ロックって言ったら「刺青に短パンに茶髪」ってイメージだったから、地元の人の理解がなかなか得られなかったんだね。最終的に天神山に決めたのが、開催の1年前、96年だった。
──前代未聞の試み、困難や苦労もすごかったんじゃないですか?
日高 ほんとにね、暗闇の中を走ってるようなもんだったよ。チケットは売れるんだろうか? どれだけの人が山の中まで来てくれるんだろうか?って、夜中に考えてしまって。もちろん、そんなこと会社の連中には絶対言わなかったけどさ。それでもチケットが発売されて売れ始めたとき、「俺たちには見えなかっただけで、時代は来てたんだな」って思った。
FUJI ROCK FESTIVAL
1997年よりスタートしたロックフェスティバル。1997年に山梨・天神山スキー場で開催された1回目は2日間の開催を予定していたが、台風が直撃したことで2日目は中止となってしまう。翌年開催された2回目は東京・東京ベイサイドスクエアで開催。そして1999年より新潟・苗場スキー場を会場に現在まで続いている。国内外のさまざまなアーティストを招聘し、ライブパフォーマンスだけでなく、反核運動やNGOによるレクチャーなども行われている。2012年はTHE STONE ROSESやRADIOHEAD、サカナクションといったビッグアーティストから無名の新人まで、幅広いラインナップを揃えて開催する。
チケット
3日通し券 42800円
1日券 17800円
駐車券 3000円(1日1台)
キャンプサイト券 3000円(1名)
※3日通し券と7月28日(土)29日(日)の1日券は売り切れ。
FUJI ROCK FESTIVAL'12 現地より生中継
BSスカパー!(BS241ch) / スカチャン5
2012年7月27日(金) 15:00~18:20
2012年7月28日(土) 15:00~18:20
2012年7月29日(日) 15:00~18:20
日本最大級の野外ロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL '12」を新潟県苗場スキー場から独占生中継! 今年も国内外のビッグネームをはじめ、注目新人など総勢200組近くが大集結する。番組では主要5ステージのほか、音楽と自然と人が一体となる3日間の模様をさまざまな角度から伝える。司会はブライアン・バートンルイス。各日の放送アーティストは未定。