音楽ナタリー PowerPush - 藤巻亮太

ソロとして新たな方向性を示す“旅”の行方

藤巻亮太が新作ミニアルバム「旅立ちの日」を5月13日にリリースする。

昨年12月リリースのシングル「ing」で自らの音楽的キャリアと向き合い、ソロアーティストとしての新たなスタートを切った藤巻。約半年ぶりのリリースとなる今作には、彼の前向きな勢いが伝わってくるナンバーが全6曲収録されている。

藤巻はどんな思いで「旅立ち」というキーワードを選び、この作品を作り上げたのか。彼にこの作品の成り立ちと現在の心境を聞いた。

取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 佐藤類

「旅立ち」までの道のり

──まずはこの作品がどのようなきっかけで生まれたのか教えてください。

2012年に1stアルバム「オオカミ青年」を出したあとで自分がどうソロとして活動していくのか2年間悩み、いろいろな思いを受け入れてからファーストステップとしてシングル「ing」を作りました。そしてその先に何が始まるのかっていうことを考えた結果「旅立ち」というテーマが浮かんで。

──そのテーマはどこから生まれたものでしょうか?

藤巻亮太

実際に旅をしたことがきっかけの1つになっていて。登山家の野口健さんと一緒に世界のいろいろなところを旅したんです。普段いる場所から物理的に距離を置くと、精神的な距離も比例して離れていく気がするんですよね。日常からぐんと離れた場所に行って、自分が何にとらわれていたのかが感覚的にわかってきたというか。それはこれからどうすればいいのかという答えにもつながって。

──それまではどんな状態だったのでしょうか?

自分の中で「レミオロメンらしさ」と「ソロらしさ」を区別しようとして焦っていた時期があったんです。レミオロメンとしての10年間は、自分たちの音楽をどうやってたくさんの人に聴いてもらってみんなで楽しんでいけるのか、外に向かって循環させていくかを考えるもので。その反動として始めたソロ活動は当初、バンドで出せなかったパーソナルな部分を初期衝動として吐き出していくという、内面に迫っていくものでした。だから「オオカミ青年」を出して内面を出し切ったあと、どこからがソロでどこまでがレミオロメンなのか、差がなくなってしまうんじゃないかっていう怖さが出てしまって。

過去も未来も自分なんだ

──この先ソロとしてどう舵を切ればいいかという悩みが、旅をすることで解決したと。

はい。旅って、そこで新しい何かに出会うだけじゃなくて結果的に自分のルーツにも出会えるんです。自分では“魂のふるさと”って呼んでるんですけど、例えば初めてギターを買った中学生のときとか、初めて曲を書いた大学生のときとか、レミオロメンっていう奇跡的な出会いから始まった10年間とか……旅の中でそういったことを思い出して、自分が歩んできたものが何か改めて気付かされることがあって。

──それがどのように答えにつながったのでしょうか。

藤巻亮太

「嘘も方便」ということわざの「方便」の意味を何かで読んだんですけど、今の自分は過去にあった無数の選択肢の中から1つひとつ選んでたどり着いた存在で、今後も無数の選択肢から1つだけを選んでいくことになる。でも自分が選んだものこそがベストな選択なんだっていうのが方便って言葉の意味らしくて。僕が気付けたのはまさにこれで、過去があって今があるという考え方に納得したというか、「旅立ちの日」を書くにおいてはすごくヒントになっています。藤巻亮太の中に息づくものすべてが今の自分なわけだから、バンドもソロも、どちらも自分のことに変わりはない。そこに納得した上で、「旅立ちの日」というタイトルをソロとして作る気持ちの整理ができましたね。

──何かにとらわれることなく活動していけるようになった。

そうですね。今の僕は自分の中にあるものを素直に表現していけばいいっていう気持ちになれたんです。今という場所から音楽をしっかり歌っていこうっていう、内側にも外側にも向けられるマインドがミニアルバムに込められています。「旅立ち」っていうテーマが決意表明としてタイトルや歌詞に入っているんです。

──なるほど。

あとソロになってからアコースティック形式のツアーを何本かやったことで、僕が歌というものを強く意識することができたんですね。それはたぶんバンドのときも含めて初めてのことで。歌の持ってる力、響き、言葉といった部分に自分の意識が向くようになりました。

藤巻亮太 TOUR 2015「旅立ちの日」
2015年5月14日(木)愛知県 DIAMOND HALL
2015年5月15日(金)東京都 中野サンプラザホール
2015年5月28日(木)大阪府 なんばHatch
藤巻亮太(フジマキリョウタ)

藤巻亮太

2000年12月に前田啓介(B)、神宮司治(Dr)とともにレミオロメンを結成し、ギター&ボーカルを担当。「3月9日」「南風」「粉雪」などの楽曲群が多くのファンからの支持を集める。2012年2月にレミオロメンの活動休止を発表し、初のソロシングル「光をあつめて」をリリース。同年8月に2ndシングル「月食 / Beautiful day」、10月に1stソロアルバム「オオカミ青年」を発表し、2013年1月から初のワンマン全国ツアーを開催した。2014年12月に3rdシングル「ing」をリリース。2015年5月にはミニアルバム「旅立ちの日」を発表し、東名阪でバンド編成でのリリースツアーを展開する。