ナタリー PowerPush - レミオロメン 藤巻亮太
本人が告白、ソロ始動の真意とバンドへの思い
レミオロメンの藤巻亮太がソロ活動をスタートさせた。デビュー曲となる「光をあつめて」は、これまで東日本大震災の被災地における活動で、彼が歌い続けてきた1曲だ。誰もが未来に不安を感じ、光を求めようとしているこの時代に、その光を皆で分け合っていきたい、という思いに満ちたバラードに仕上がっている。
しかしこの曲、非の打ちどころのない藤巻節で、一聴すると、バンドでやらない理由が思い当たらない。なぜ藤巻は、この曲をレミオロメンではなくソロとしてリリースしなければならなかったのか。それは彼の、音楽に対する誠実さがあふれ出したからである。「光をあつめて」はその意志が強く表れており、彼がソロ活動をスタートさせるのは必然だったのだと感じさせてくれる。今回は震災後の活動やバンドに対する気持ちについて、藤巻本人に語ってもらった。
取材・文 / 金光裕史(音楽と人)
バンドをどうにかするために音楽を作るサイクルになっていた
──まず今回、ソロデビューすることになったきっかけを教えてください。
いろんなことが絡みあってるんですけど、まず、レミオロメンは2010年に結成10周年を迎えたんです。「花鳥風月」というアルバムを出したり、全都道府県を回るツアーに出たり、いろんなことができた1年だったんですよ。それ自体はとても充実してたし、やり切ったなあと思っていて。その後、震災前から、これからのレミオロメンをどうしていこうかずっと考えていました。例えば、自分の中から音楽が生まれて誰かの元に届くまでに、なんだかシステム化したサイクルがあって。その中でも自分なりにジャッジして、こっちの意志を貫いてやってきたつもりなんだけど、見えない大きな流れみたいなものまでは動かせなかった気がしたんですよね。
──うん。そういうところでずっともがいてたもんね。
だからもう、そういうところを断ち切って音楽と向き合わなきゃいけない、と思ってたんです。リリースのスケジュールとか、メンバーの状況とは関係ないところで。もちろんこのままバンドでできないのかってことも含めて、いろいろ考えたんですよ。でもバンドを組む前というか、音楽を作り始めた頃の自分に戻って考えてみたら、きっと表現方法はなんでもよかったはずだよな、と思って。
──つまり、そのときは音楽だけがまずあったわけで、バンドという形にこだわってたわけじゃないよな、と。
そう。音楽を表現するために、ある人はバンドを組むし、またある人はシンガーソングライターになるし、テクノというスタイルを求める人もいるわけですよね。僕は気付いたら、バンドをどうにかするために音楽を作るサイクルになっていたんじゃないかなと思って。それはそれで正しい面もあるんだけど、音楽をやるって決めた初心を考えたら、本末転倒になってる部分があるな、と。
──ただ音楽を好きになった自分の気持ちになろう、と。
ですね。だから一度最小単位まで戻るというか、最初にあった音楽と自分の関係を見つめ直さなきゃいけないな、と思ったんです。
──それを長いツアーの中で考えていたんですか?
うん。この曲のゴールはどこにあるんだろう……ってみんなで探りながら「ああ、これなんだ」って気付くんじゃなくて、自分が全て責任を持って作っていく必要があったんです。そしてそれを整理して考えたら、ソロに挑戦することがベストだと思った。きっとね、自分の深層心理の中に思い込みみたいなものがいっぱいあったんですよ。
──思い込み?
例えば「レミオロメンはこういうバンドだ」とか「自分たちにはこういう役割があるんだ」とか。自分が作ってるものなのに、すごく縛られている部分があったというか。それもまた順番が逆になってて、自分の中で「共有」とか「共感」とか、そういう言葉にすごく支配されていた時期があったんです。本当はね、清々しくサラッと心に思ったことを音楽にしていけばいいのに、いろんなことを複雑に捉えていたんでしょうね。それをシンプルにしていく作業が、どうしても必要だったんですよ。
各々好きなことをやることが、いつかレミオロメンに返ってくる
──それを他のメンバーはどう考えていたと思う?
僕と同じように、啓介(前田啓介 / B)やオサ(神宮司治 / Dr)も、レミオロメンでの“役割”を感じていたんじゃないかな。それを越えた何かに一度チャレンジしたい気持ちはあったと思います。
──なるほど。
でもね、みんなレミオロメンが大切なんですよ。そこでハッピーになれれば一番良いと思ってる。だけどバンドで充実感を得ることが、ちょっと難しくなってきてた。だからこのタイミングで各々が好きなことをやることが、いつかレミオロメンに返ってくるんじゃないかな、と思っていて。そこで新たな価値観に出会ったり、いろんなものを積み上げたりした先に、3人で集まってまたレミオロメンとして音を鳴らすことが、今一番良い選択なんじゃないかと思うんです。
──今のレミオロメンには時間が必要だと?
はい。今本当にやりたいこと、面白いことは、そこからはみ出した部分にあるから。それを歌にしていきたいと思って始めたのが、このソロになったんですよね。今作っている曲には、役割なんかなくて、守られる殻もなくて、生身の自分でしかない。そこを削り出したり、磨き出したりした作業の中で生まれる曲なんです。今の自分はそこに向き合わないと、音楽の喜びや楽しさみたいな、プラスのエネルギーが得られないような気がしていて。聴いてくれる人たちに届けるには、それが流れてないとダメだから。今の自分はそれを模索していく道を選んだんです。
藤巻亮太(ふじまきりょうた)
2000年12月、前田啓介(B)、神宮司治(Dr)とともにレミオロメン結成。ギター&ボーカルを担当。インディーズを経てメジャーデビューを果たし、「3月9日」「南風」「粉雪」などのヒットを飛ばして多くのファンから支持を得る。レミオロメンが結成10周年を迎えた2010年には、セルフプロデュースアルバム「花鳥風月」をリリースしたほか、全国47都道府県を回る全国ツアーを敢行。その後2011年3月に東日本大震災が発生してからは、1人で被災地へ赴き歌を届ける活動を続けてきた。2012年2月29日に初のソロシングル「光をあつめて」をリリースする。