音楽ナタリー PowerPush - フジファブリック
音楽をやるために生きている 10周年で思う“LIFE”の意味
デビュー10周年を迎えたフジファブリックが、前作「VOYAGER」以来、約1年半ぶりとなるニューアルバム「LIFE」をリリースした。タイトルの通り、人生、生活、命をテーマに掲げた本作は、普遍的なメッセージと音楽的な探究心がひとつになった充実作に仕上がっている。
今回ナタリーでは、メンバーの山内総一郎(Vo, G)、加藤慎一(B)、金澤ダイスケ(Key)にインタビュー。「LIFE」の制作プロセスと武道館公演を含む全国ツアーなどについて聞いた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 小原啓樹
「大傑作、完成!」
──前作「VOYAGER」から約1年半ぶりのアルバムリリースですね。この1年半も精力的な活動を続けていたので、あっという間だったと思うのですが。
山内総一郎(Vo, G) そうですね。「VOYAGER」のツアーがあって、「FAB STEP」(2013年10月に発表された4曲入りCD)をリリースして、ライブハウスツアーをやって。今年に入ってからはシングルを2枚(「LIFE」「ブルー / WIRED」)を出してますからね。もはや時間の感覚もないというか、もう今年が終わりそうな感じがする(笑)。
加藤慎一(B) それ、よく言ってるよね。
山内 6月までは“ずっと正月”みたいな感じだったんですけどね。
──(笑)。今年前半は時間が止まってたんですか?
山内 「FAB STEP」のツアーのあと、ずっと制作をやってたんですよ。半年くらい?
加藤 うん。
──「このタイミングでじっくり曲作りをやりたい」という意思のもと?
山内 いや、そうでもなくて、たまたまなんですけど(笑)。もちろん「このあたりでアルバムを出しましょう」っていうリリースの目安はあったんですけど、それとは関係なく、曲をたくさん作りたくなって。去年の暮れから4月くらいまでは曲ばっかり作ってましたね。
加藤 そういう時間はひさしぶりでしたね。
山内 それでもあっという間でしたけどね。いつか、もっとじっくり時間をかけて制作したいという気持ちもあるし。時間だけあっても、やる気がないとダメなんだけど。
──制作に時間をかけた効果は、明らかに出てると思います。今回のアルバムはフジファブリックの最高傑作じゃないかな、と。
山内 やった! イエーイ!!
金澤ダイスケ(Key) ありがとうございます。
山内 それ、ドカーンと書いておいてくださいよ。「大傑作、完成!」って。
アナログテープの恩恵
──音がめちゃくちゃいいですよね。すべての楽器の音がクリアだし、ライブ感もすごくあって。
山内 今回、アナログでレコーディングしたんですよ。ずっとやりたいと思ってたんですけどね。
──アナログレコーディングは初めて?
山内 いや、デビュー当時はアナログだったんです。そのときはよくわかってなくて、「スタジオにある機材を使って録ってるんだろうな」くらいに思ってたんですけど(笑)。でも、それから10年経って、自分たちの好みがわかってきたんですよね。やっぱりアナログで録った音が好きだなっていう。例えばシンセを使ったバキバキの曲でも、アナログで録ることによってパンチが増したり、音が太くなったりするので。
加藤 そうだね。
山内 もちろんPro Toolsも便利なんですけど、24トラックしかないアナログもいいんですよ。“その中ですべてを収める”っていう感じが。
──当然、入れる音を精査するわけですよね。
山内 そうですね。「これ、とりあえず入れとく?」みたいなのはなくなりました。「絶対、これしかない」と思う音しか入れてないというか。だから自然とシンプルになりますよね。
金澤 アナログだとキーボードもギターも、すべての楽器の音が違ってきますからね。音の温かさが増すのがやっぱりいいし、あとから直せないっていうのもいいんですよ。「まあ、いいか」って、いい意味で割り切れるというか。実際、音決めが終わったら、すぐに録り終わりましたからね。
山内 “昔っぽい音がいい”ということではなくて、自分たちにとっては(アナログのほうが)普通な感じなんですよね。普段、リハーサルで出している音を脚色なしで録れるというか。それがアナログテープの恩恵だと思います。
金澤 そうだね。
──そういえば先日、The Beatles「MONO LP BOX」の試聴会に参加したんですけど、「実際にスタジオで鳴ってた音も、こういう感じだったんだろうな」と思えたんですよね。ファルセットで歌うと声が細くなったり、ギターソロの最初のフレーズはピッキングが強かったり。演奏していると普通に起こることが、はっきり感じられるというか。それは「LIFE」も共通してるんじゃないかな、と。
山内 そうですよね。例えばコーラスにしても、1人ずつ録るとトラックが足りないから、みんなで一緒に歌うんですよ。高いパートはマイクから離れたり、低いパートの人は近づいたり、距離を測るところか始めるんですけど、その感じもわかってもらえるんじゃないかな。
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- ニューアルバム「LIFE」 / 2014年9月3日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / AICL-2718~9
- 通常盤 [CD] / 3240円 / AICL-2720
CD収録曲
- リバース
- Gum
- LIFE
- シャリー
- ブルー(Album Version)
- F.T.79
- 祭りのまえ
- efil
- WIRED
- フラッシュダンス(Album Version)
- robologue
- バタアシParty Night
- sing
- カタチ
- 卒業
初回限定盤DVD収録内容
- フラッシュダンス(MUSIC VIDEO)
- バタアシParty Night(MUSIC VIDEO)
- LIFE(MUSIC VIDEO)
- ブルー(MUSIC VIDEO)
- 特典映像「モグライフ(Documentary)」
- LIVE TOUR 2014 "LIFE"
- 2014年10月17日(金)宮城県 Rensa
- 2014年10月19日(日)北海道 Zepp Sapporo
- 2014年10月24日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2014年10月25日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2014年11月1日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2014年11月2日(日)大阪府 Zepp Namba
- 2014年11月4日(火)香川県 高松MONSTER
- 2014年11月7日(金)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2014年11月8日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2014年11月14日(金)熊本県 DRUM Be-9 V1
- 2014年11月15日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2014年11月20日(木)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2014年11月21日(金)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- フジファブリック10th anniversary LIVE at 武道館 2014
- 2014年11月28日(金)東京都 日本武道館
フジファブリック
志村正彦(Vo, G)を中心に2000年に結成されたロックバンド。都内を拠点に活動を開始し、2002年にミニアルバム「アラカルト」をリリース。そのユニークなサウンドと捻りの利いたアレンジ、志村の綴る独特の歌詞が注目を集める。2004年4月にシングル「桜の季節」でメジャーデビュー。「フジファブリック」「FAB FOX」「TEENAGER」といったアルバムがいずれも高い評価を受け、2009年発売の4thアルバム「CHRONICLE」でさらに支持を拡大するも、同年12月24日に志村が急逝。バンドは山内総一郎(Vo, G)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)の3人でその活動を継続し、2011年9月に新体制で初となるアルバム「STAR」をリリースした。2013年10月にはダンスロックをテーマにした4曲入りCD「FAB STEP」で新境地を開拓した。デビュー10周年を迎えた2014年は、2月に発表されたシングル「LIFE」を皮切りに、「FAB BOX II」「FAB LIVE II」という映像作品を連続リリース。9月に8thアルバム「LIFE」を発表し、11月にはデビュー10周年を記念した東京・日本武道館公演を行う。