ナタリー PowerPush - フジファブリック
キーパーソン3組とメンバー3人が語る アルバム「STAR」完成への道のり
──お二人が最初にフジファブリックと出会ったのは?
岸田 バンドの名前は知ってたんですが、あるとき家でケーブルテレビを付けてたら、フジファブリックが料理をしてる番組に偶然出くわしたんですよ(笑)。で、最初に受けた印象は「間柄のよそよそしいバンドやな」ってことくらいかな。その後、僕らがやってたJ-WAVEの番組で、番組ディレクターに勧められたフジファブリックの「銀河」をオンエアしたんですけど、イントロを聴いて「うわ、ダサっ!」って思ったんです。でも、歌が始まった瞬間、ラジオではかからないような、けったいな音楽を聴いた気分になったんですよ。歌詞もそうだし、注意して聴いたら楽器の人たちもおかしなこだわりを持っているし、意味のわからない転調があったりしたので、すごい気になったんです。それで2ndアルバムの「FAB FOX」を買ったのが最初ですね。
佐藤 僕が彼らのことを意識したのは、フジが出ていた2005年のみやこ音楽祭でのライブですね。そのときの印象は「みんなクリックに合わせてすごい練習したんだな」っていう程度だったんですけど、その後またみやこ音楽祭で会った彼らとしゃべるようになって、そこで改めてアルバムを聴いたら「あ、こんなええ歌いっぱいあるんや」と思って、普通にファンになりましたね。
岸田 ライブを観たら、山内の印象がすごい強かったですね。志村は分類できない変人でしたけど、ほかのメンバーが総じておとなしい中、山内のギターは音はデカいし、一人だけ若気の至りみたいなプレイで、すごいやんちゃな音を出してるなって思ったんですよね。
──お二人は昨年7月にフジファブリック主催の「フジフジ富士Q」で「Sunny Morning」と「銀河」の2曲に参加されましたよね。
岸田 僕はすごいテクニックがあったり、めっちゃ歌がうまかったりとか、そういうミュージシャンではないんで、彼らと一緒に何ができるかなと思ったとき、バンドのフロントに立っていた志村がいなくなってしまったわけだから、バンドを引っ張るつもりで参加しようと思ったんです。でも、よそのバンドに演奏で参加してバンドの体をなすってことは今まで経験がなかったし、これからもないと思うんですけど、彼らに混じって演奏してみたら、なんかバンドっていう感じがしたんですよね。で、その後のアンコールで山内が前のアルバムに入ってる「会いに」を歌っているのを観て「こいつはいいな!」と思ったんです。彼はギターもうまいし音楽性も独自のセンスを持っているんですけど、それ以上に歌とか思いを大事にしていることが一発でわかったんで。それで、すぐにうちらのライブに来てもらったんですよ。テクニックがありながら、思いを大事にできるプレイヤーってなかなかいないんですよね。だから「こいつ絶対に人気者になるな」って思ったら、やっぱりその後あちこちから引く手あまただったみたいですしね。
──歌とか思いを大事にしているってことでいえば、彼は3人になってからの初ライブで歌ったとき、オーディエンスのエネルギーを受けて「もっと歌いたいし、もっと作品を作りたいと思った」と言ってましたよ。
岸田 山内はね、人のエネルギーをちゃんと吸収するんですよ。
佐藤 そして、出すときは出してくれる。
岸田 あいつはそういうエネルギーのやりとりがうまいんですよ。
佐藤 くるりが5人になるときも、やっぱりバンドっていろいろあるから、ちょっとへこんでるときっていうのもあったんですね。そのときにフジフジ富士Qの映像をぼーっと観てて、「いいイベントやったね」って総くんにメールしたら、電話してきてくれて。それでそのときの状況や思ってたことを話したら「絶対正しいですよ」って背中を押してくれた。彼にはいろんな局面でアゲてもらってます(笑)。
岸田 ツアーでの山内も最高ですよ。「今すぐくるりに加入してくれていいよ」って感じ(笑)。くるりで弾く彼のギターは、フジファブリックで弾くときとは全然違ったんですよね。ガッと弾くイメージが強い人だと思うんですけど、柔らかいプレイも上手で、やりたい音楽がいろいろある人なんやなって。それでフジファブリックのデモを聴かせてもらったら気が狂っていたから(笑)、早くアルバムを聴いてみたいなって思ったんですよね。
──今回彼らが完成させたニューアルバムの感想を教えてください。
岸田 今年1月から始まった僕らのツアーに山内が参加したんですけど、僕と佐藤、そしてドラムのBOBOと山内っていうラインナップがうまくハマったんですよ。そして2月6日の金沢公演で、アンコール前に俺は「山内、お前、弾き語れや!」って言ったんです。そしたら「えー!」って言いつつ、奴は「ECHO」を弾き語って、完全にその場を持っていってしまって。「あ、しまった!」と思いましたね(笑)。で、その後フジが完成させた「ECHO」は、まだその時点ではタイトルが決まってなかったんですけど、その曲をエンジニアの高山(徹)さんのスタジオで聴きながら山内に言ったんですよ。「この曲のタイトルはホンマに大事に決めたほうがいい」って。だからアルバムは「ECHO」の印象が強いんですね。そして作品全体としてはきっちり作ってあって、聴き応えもあるし、3人でもフジファブリックの新作として聞こえるのが不思議なんですよね。
佐藤 僕はこのアルバムを聴いて、「次はどんな風にも転がっていけるな」と思ったんですよね。中でも「パレード」は「今までのフジとは全然違う感じやな」と思ったんですけど、総くんの声とすごい合ってる曲ですよね。だから今までのフジのイメージとは違ったアルバムもこれから聴けたりするやろうし、ものすごい広い可能性を感じるアルバムですよね。そしてこのアルバムを聴いたことで、前作「MUSIC」がようやく普通に聴けるようにもなりましたね。ちょっと前までは向き合うのに気力を要したんですけど、昨日新幹線に乗ってるときにすんなり聴けて、それがうれしかったです。
──最後にフジファブリックの3人にメッセージをお願いします。
佐藤 総くんとはよく飲んでるんですけど、加藤さんとは「フジQ」で電話番号を交換して以来サシで飲んでないので、金澤くん共々、ぜひ年内に実現させましょう(笑)。
岸田 個人的には小規模な会場でのライブを観たいですね。志村が亡くなったこともそうだし、今年、大変なことがいっぱいあったりする中で、アルバムを作って新しいスタートを切れたことは喜ばしいことだって思います。3人ともおめでとうございます!
CD収録曲
- Intro
- STAR
- スワン
- ECHO
- 理想型
- Splash!!
- アイランド
- 君は炎天下
- アンダルシア
- Drop
- パレード
- cosmos
初回限定盤DVD収録内容
“STAR” MUSICVIDEO
フジファブリック
志村正彦(Vo, G)を中心に2000年に結成されたロックバンド。都内を拠点に活動を開始し、2002年にミニアルバム「アラカルト」をリリース。そのユニークなサウンドと捻りの利いたアレンジ、志村の綴る独特の歌詞が注目を集める。2004年4月にシングル「桜の季節」でメジャーデビュー。「フジファブリック」「FAB FOX」「TEENAGER」といったアルバムがいずれも高い評価を受け、2009年5月発売の4thアルバム「CHRONICLE」でさらに支持を拡大するも、同年12月24日に志村が急死。バンドは山内総一郎(Vo, G)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)の3人でその活動を継続し、2011年9月に新体制で初となるアルバム「STAR」をリリース。
2011年9月21日更新