ナタリー PowerPush - FRONTIER BACKYARD
TGMXが回想する10年+「BEST SELECTIONS」全曲解説
今年デビュー10周年を迎えたFRONTIER BACKYARDが、ベストアルバム「BEST SELECTIONS」をリリースした。メンバー自らが選曲を手がけた本作では、彼らにとって特に思い入れのある全22曲をじっくり楽しむことができる。
今回ナタリーではフロントマンのTGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI(Vo)に単独インタビューを実施。彼はこの10年の活動を振り返りつつ、バンドマンとしての基本的なスタンスも語ってくれた。また特集後半ではTGMX、KENZI MASUBUCHI(G)、福田“TDC”忠章(Dr)による「BEST SELECTIONS」全曲セルフライナーノーツも掲載している。
取材・文 / 宇野維正 インタビュー撮影 / 福本和洋
これからもがんばっていくためのベスト
──今回、FRONTIER BACKYARDの10周年を記念して初のベスト盤がリリースされるわけですが。そういえば、SCAFULL KINGでも10周年のときにベスト盤を出してましたよね? TGMXさんにとって、10年という節目はそれだけ大きいものなのかなって。
10年ってなかなかやれないじゃないですか。これまで、同じことを10年続けたことって自分にはなかったんで。
──そうですよね。活動休止や再始動を挟んでのSCAFULL KINGのときと違って、FRONTIER BACKYARDの場合はコンスタントに活動をし続けての10年ですもんね。
そうです。今回はこれからもバンドとしてがんばっていくための、10周年記念のベストです。
──昨年、アルバム「fifth」をリリースしたタイミングでは「もうこのバンドは解散することはないと思う」って言ってましたよね。
もともと、もっといろんなことをしたい、だから決まった形を持たないで活動しようと思って始めたのがFRONTIER BACKYARDだったので。このバンドでできない音楽はないってところを目指してここまでやってきて。やりたいことはこのバンドでやればいいという、今はそういうところまでこれた感覚があるんですよね。
──「決まった形を持たない」と言いつつ、その基礎として3人の音というのは不変のものとしてあるわけですよね。この形は10年前に予想していたことですか?
いや、この3人で10年目を迎えるとは思ってなかったですね。もともと、結成当初はあまりライブをしないようにしてたんですよ。それまでずっとライブハウスをメインに活動してきたこともあって、このバンドではもうちょっと裏方的というか、プロデュース業とかもやる音楽集団でありたいと思ってたんですね。で、ライブのときにはその都度サポートメンバーに入ってもらうっていう。
活動初期はライブを避けていた
──それがこうして、バンドの形態として10年以上続いた、その一番の理由はなんだったんでしょう?
その時代その時代、いろんな理由はあったんですけど、ちょうど半分の5年前くらいからライブをすることが楽しくなってきたんですよね。
──それまでは、あまりライブを楽しめなかった?
楽しめなかったってわけじゃないんですけど、最初の頃は曲を作ったり、スタジオに入ってレコーディングをしてるほうが好きでしたね。
──バンドの出自を考えると、意外に思う人も多いかもしれません。
ライブって、受け手の反応がダイレクトに見えるじゃないですか。SCAFULL KINGの活動を休止して、FRONTIER BACKYARDの活動を始めた頃はそれが嫌だった。自分の作りたい音楽だけを作りたくて。受け手の意見とかは、あんまり聞きたくなかったんです。とにかく曲を作ってリリースすること、それだけをやりたくて。でも、だんだんライブが増えてくると、やっぱり反応が気になってきて。いざ気になり始めると、その反応をもっと探りたくなってきちゃうんですよね。お客さんの中につまんなそうにしてる人がいたら、それはどうしてなんだろうとか。今日はやけにウケてるけど、その理由はどこにあるんだろうとか。
──ちょっとDJの感覚に近い?
そうですね。僕、DJもやるんで。DJって1人でいろんな曲をかけて、そこでいろんな時間作って、ピークタイムをどこかに作ってってやっていくじゃないですか。それってライブに似てるなって思って。そう考えるようになってきたら、ライブも面白くなってきて。
90年代以前と以後の決定的な違い
──ライブはアーティストの表現活動でDJはサービス業っていう、そういう区分けみたいなものが昔はもっと強固にあったと思うんですけど、最近はその境目がなくなってきてるように思うんです。そういう時代に、バンドが自然に対応していったという感じですか?
そうですね。ただ、今の若いバンドと僕たちの決定的な違いって、先輩がいるかいないかだと思うんですよ。
──ほお。
僕らの時代は、参考にできるような先輩がいなかったんですよ。もちろん素晴らしいミュージシャンの人は先輩にもたくさんいましたけど、90年代まではパンクとロックとポップスのシーンがまだはっきりと分かれていて、僕らのいたインディーズのシーンでは、みんなゼロからどうやって自分たちのバンドを運営していくか、自分たちの音楽を探求していくか、試行錯誤しながらやっていくしかなかった。でもフェスとかが増えてくるにしたがって、そういう違うシーンにいるバンド同士も交流するようになって、対バンの壁とかもなくなっていって、周りに参考になる例がたくさん出てきたと思うんですよ。最近のバンドを見ていて思うのは、みんなムダがないなって(笑)。
──ああ、その通りですね(笑)。
僕らの時代はムダばかりだった(笑)。まあそれをよく言えば、やりたいことをただやってたってことなんですけど。だって10年前とかは、レコ発ツアーとか、そういう概念もまだあまりなかったですからね。制作とライブと日常が全部地続きというか、行き当たりばったりというか(笑)。今の若いバンドは、冬に曲を作って、春にリリース、夏はフェスに出て、秋以降にツアーみたいな(笑)。いい悪いじゃなくて、そういう大きな流れみたいなものができてる。でも、同じバンドを10年もやってると、そういう若いバンドからも吸収させてもらうことがあるってことに気付くんですよね。周りの風景も周りのバンドも変わってきましたけど、長くやればやるほどバンドの面白味って増えてくるんだなって。
- ベストアルバム「BEST SELECTIONS」/ 2014年6月4日発売 / Niw! Records / NIW-97
- [CD+ブックレット] 2484円 / NIW-97
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収録曲
- everybody say [introduction]
- hope
- wonderful world
- WHITE WORLD
- city lights
- TWO
- Putting on BGMs
- cool down clam down
- TRACE NONE
- missing piece
- picture of the sun
- tic tic
- MUSIC IS A BASIS
- POP OF D.
- Wish featuring TAKESHI ARAI from the band apart
- pairyland
- Flower of shanidar
- EVERY
- Waste of Time
- DAYS OF "R&S"
- Parties and our music echoes
- FLASH
- ライブ情報
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10th Anniversary BEST SELECTIONS RELEASE PARTY
- 2014年6月29日(日)
東京都 新代田FEVER(※チケット完売)
- 2014年6月29日(日)
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水戸一隅―MitoIchigu
- 2014年7月5日(土)
茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2014年7月5日(土)
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TOWER RECORDS SENDAI PARCO 6th Anniversasy "仙台一偶"
- 2014年7月6日(日)
宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2014年7月6日(日)
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ROKKO SUN MUSIC 2014 ~Music Shower from the Sun!~
- 2014年7月12日(土)
兵庫県 六甲山カンツリーハウス
- 2014年7月12日(土)
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聖地巡礼!! 2014 ~夏期講習編~
- 2014年8月17日(日)
滋賀県 豊郷小学校旧校舎群内講堂
- 2014年8月17日(日)
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BAYCAMP 2014
- 2014年9月6日(土)
神奈川県 東扇島東公園
- 2014年9月6日(土)
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10locations
- 2014年11月7日(金)
宇都宮 HEAVEN'S ROCK VJ-2 - 2014年11月8日(土)
千葉県 千葉LOOK - 2014年11月11日(火)
愛知県 APOLLO BASE - 2014年11月12日(水)
香川県 高松TOONICE - 2014年11月14日(金)
福岡県 Queblick - 2014年11月15日(土)
広島県 福山Cable - 2014年11月16日(日)
大阪府 LIVE HOUSE Pangea - 2014年11月18日(火)
宮城県 仙台MACANA - 2014年11月19日(水)
岩手県 the five morioka - 2014年11月21日(金)
北海道 BESSIE HALL
- 2014年11月7日(金)
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FRONTIER BACKYARD 10th anniversary presents "10 surroundings"
- 2014年12月14日(日)東京都 新木場STUDIO COAST
FRONTIER BACKYARD
(フロンティアバックヤード)
スカコアバンド・SCAFULL KINGのメンバーであるTGMX aka SYUTA-LOW TAGAMI(Vo)、KENZI MASUBUCHI(G)、福田“TDC”忠章(Dr)の3人が活動休止中に結成したスリーピースバンド。2001年のエスカレーターレコーズのコンピレーションアルバムへの参加を機に活動を開始する。2004年9月に1stアルバム「FRONTIER BACKYARD」をリリースして以降精力的に作品を制作し、2013年9月には5thアルバム「fifth」を発表した。2014年6月、CDデビュー10周年を記念したベストアルバム「BEST SELECTIONS」をリリース。12月に"10 surroundings"と銘打ったライブイベントを東京・新木場STUDIO COASTで開催する。