「私の状況は変わりませんし」

──南條さん作詞の「Answer」も八木沼さんが先ほどおっしゃった現状のいびつさ、社会の空気みたいなものがテーマになっています。

南條　希望が見えてくる瞬間ってあると思うんですけれど、逆にまったく見えない時期っていうのもあって。今まで私が書いた歌詞って「悩んでも最終的には明日を見てた」っていう内容が多いんですけど、今回は「そうじゃないときもあるよね」っていうところに寄り添いたいと思ったんです。

──「正解など無意味で」と歌っている楽曲のタイトルが「Answer」っていうのはいい意味で皮肉が利いてて面白いなと思ったんですよね。

南條　最初は「NO」っていう、未来がなさ過ぎるタイトルだったんです（笑）。本当に絶望的な状況になると、希望も光も見えないと思うんですよね。イントロの「開いた掌　なにが見える」って詞も、聴く人によって「答えなんか見えないよ」ってなるかもしれないし、前向きに捉える人もいるかもしれない。聴く人によって答えが変わってくるかなって。

──でもこの曲の歌詞では南條さんは前を向いてるし、光も見えている、むしろ光の中にいるとすら思えるんですけれども。

南條　それはないです（笑）。昔、「曲の最後には絶対希望を見出したい」って言ってた先輩がいて。私も歌うからには「聴き終わったときに楽しい気持ちになるほうがいいよね」って思ってたんですけど、本当に悲しいときに希望のある曲を聴いて元気をもらえることもあれば、「いや、そうは言っても私の状況は変わりませんし」っていうこともあって。だったら、「そうじゃないときもあるよね」って慰められるような歌詞もあっていいんじゃないかなって思ったんですよね。

うちの主役が一番がんばってくれますよ

──あなたがいて私がいて、という関係を描いた「One and Only」はすごく明るく優しい歌だなと思いました。

南條　例えば恋人や家族、友達とか大事な存在がいたとして、ずっと一緒にいたいなと思っても、それがいつまで続くかは正直わからないし、そこに対する恐怖感もあって。だからこそ、今を大事にしなきゃっていう思いを歌いたかったんです。

──「Answer」「One and Only」の詞を見て、八木沼さんいかがでした？

八木沼　……エクセレント！（笑） 「Answer」なんて、女性である南ちゃんでしか書けない言い回しもありますよね。非常に素晴らしいと思います。

──あと、「Answer」「One and Only」はアレンジも面白いですよね。「Answer」はメロウなR&Bっていう感じで。

八木沼　「Answer」の冒頭のフレーズはピアノで遊んでるときに思い浮かんだんですよ。このフレーズに乗せて南ちゃんが歌ったら、けっこうみずみずしい感じになるんじゃないかと思ったんですけど、うまくハマって。そこからAメロ、Bメロ、サビまで膨らませたんです。

──「One and Only」はクラシックなヒップホップ風で、グランドビート調の跳ねる16ビートでありつつ、ちょっとピコッた音も入ってて。

八木沼　これは一度、川﨑海くんにアレンジを委ねて、2人でいろいろやりました。川﨑くんにちょっと懐かしい感じにできないか依頼したら、こんなリズムを作ってくれて。僕だけだったらこのアイデアは出なかったと思います。逆にベースやシンセは100%八木沼サウンドになっています。

──今回のアルバムには今お名前が挙がった川﨑さんや齋藤真也さんがアレンジャーとして参加しています。

八木沼　2人共、もう10年以上の付き合いで僕のことをよく知ってるし、音楽的にも完全にわかり合っている。だけど僕とは違う音楽的背景を持ち合わせていて、それぞれ違った引き出しを持っているんですよ。アレンジは僕1人で作るのもありなんですけど、2人の力を借りて、面白いアイデアを増やすのもいいなと思っています。

──最後に来年3月18日に行われるさいたまスーパーアリーナ公演についてですけど、どんなイメージを思い描いていますか？

八木沼　まだ漠然としてますね。その前に行われる全国ツアーの準備もしないといけないので。

南條　fripSideのライブの演出って広い会場が映えると思うんです。横浜アリーナもすごく楽しかったので、また面白くなりそうだなって思います。

八木沼　何はともあれ、うちの主役が一番がんばってくれますよ（笑）。

南條　いやいや！ みんなでがんばりましょうよ（笑）。