音楽ナタリー Power Push - fripSide
3度目の「無限の統合」に込めた思い
歌は楽器じゃない
──「white forces」では南條さんのボーカルにエフェクトをかけまくり、音素材として使っているのは、ファンもびっくりすると思います。
八木沼 曲の導入部に使っているものですね。でもボーカルに関していつも念頭に置いているのは、南ちゃんの歌がメインになるべきであるということで。僕らみたいな音楽家がよく陥りやすいのが「歌は楽器の1つである」という考え方なんです。僕はそれを完全に間違いだと思っていて。歌は主役なんです。だから僕はよく仲間のクリエイターさんに「八木沼さんのミックスは歌がデカい」って言われてちょっとした言い合いになるんですよ。でもみんなが聴きたいのは歌。そこを逸脱してしまったら、ユニットとしての意味がないですからね。
──あそこまでアレンジに凝るのに、あくまでメインは歌で。
八木沼 サウンドはあくまで歌を盛り上げるためのものであって、リスナーにとって、やっぱり一番重要なのは主メロでしょ。そんなにサウンドを聴かせたいのなら、インストで勝負したらいいじゃないですか。だから「歌が楽器の一部? 冗談じゃねえよ!」って思う。手法の問題だからどちらが正解というわけではないのですが。
“希望”描く3つの曲
──作詞についてなんですけど、「Dry your tears」はいい意味で想像の余地を許さないというか、ここまで直接的な言葉を届けることって、八木沼さんの作品ではけっこう珍しいんじゃないかと。
八木沼 「Dry your tears」は「Run into the light」「determination」とも関連性がありまして。毎日何かと向き合ったり、何かと戦ったりしている中で、生き続けることとはいったいなんなんだろう、ってことを実存主義的な表現方法で語りたかったんです。僕たちって必ずどこかで挫折するじゃないですか。それでも今ここにいることに感謝して、新しい光を探していくとか、壁をぶっ壊すとか、そういう希望を歌いたかったんですね。
──それはご自身の実体験や周りの状況を見て、窮屈になってきてるぞ、という感覚があったからですか?
八木沼 何かがあったわけではないんですけど、今僕たちが生きている業みたいなものを表現したかったんです。本当は「Run into the light」ですべて言いたかったんですけど、1曲だけだと表現しきれなくて。それで「Dry your tears」「determination」も同じテーマで書きました。「Run into the light」はそのあたりをぼんやり表現していて、さらに現実的なシチュエーションに落とし込んだのが「Dry your tears」。「determination」は大人の女性だったらどうかなって、想像力を駆使して書いたので、OLさんとかに聴いてほしいですね。
──確かに、「determination」は一人称が「私」になっていて。八木沼さんは歌詞にあんまり「私」って使いませんよね。
八木沼 うん、「僕」が多い。
──ここはあえて女言葉、っていう感じなんですね。
八木沼 「カッコいい女性像、大人の女性像って今まで描いたことなかったな」って気付いたんです。それでやってみたら面白そうだったので。
──南條さん、明らかにモードの違うこの3曲は歌ってみてどうでした?
南條 「そういうときあるよね」って思いながら歌いましたね。あと、歌詞に出てくる主人公の気持ちや、テンションをどう表すかに気を付けました。
八木沼 南ちゃんが歌うと説得力があるんですよ。
──南條さんが先ほどおっしゃってたテンション感ってそこなんですかね。
南條 バックに流れている音が何を伝えたいのか寄り添ってみたりするんですけど、あんまり左脳で考えてなくて(笑)。
八木沼 感覚なんだよね。
南條 あと、「ここは強く歌ったほうがいいのかな」って歌いながら試してみたり。なので「こういうふうに考えて歌いました」みたいな、カッコいいことは言えないんです。
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- ニューアルバム「infinite synthesis 3」 / 2016年10月5日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray×2] / 5724円 / GNCA-1490
- 初回限定盤 [CD+DVD×2] / 5184円 / GNCA-1491
- 通常盤 [CD] / 3240円 / GNCA-1492
CD収録曲
- 2016 -Third cosmic velocity-
- Luminize
- 1983 -schwarzesmarken- (IS3 version)
- determination
- magicaride -version2016-
- Answer
- Two souls -toward the truth-
- white forces -IS3 edition-
- crescendo -version2016-
- Run into the light
- Dry your tears
- unlimited destiny
- One and Only
- Side by Side
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
- fripSide concert tour 2015 ~infinite synchronicity~(2015.12.13[sun] 東京・府中の森芸術劇場 どりーむホール)
- fripSide オランダドキュメンタリー映像
- 1983 -schwarzesmarken- (IS3 version) PV
- PV Making
- SPOT(SPOT in Stores Now ver. / SPOT Special ver.)
fripSide concert tour 2016-2017 -infinite synthesis 3-supported by animelo mix
- 2016年10月29日(土)千葉県 市原市市民会館 大ホール
- 2016年11月13日(日)北海道 千歳市民文化センター 大ホール
- 2016年11月19日(土)神奈川県 神奈川県民ホール 大ホール
- 2016年11月27日(日)長野県 キッセイ文化ホール 中ホール
- 2016年12月4日(日)大阪府 オリックス劇場
- 2016年12月11日(日)広島県 上野学園ホール
- 2016年12月17日(土)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
- 2016年12月18日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2016年12月24日(土)福岡県 福岡国際会議場 メインホール
- 2017年1月7日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2017年1月21日(土)岡山県 倉敷市民会館
- 2017年2月19日(日)福島県 南相馬市民文化会館
- 2017年2月26日(日)新潟県 新潟県民会館 大ホール
- 2017年3月5日(日)石川県 本多の森ホール
fripSide LIVE TOUR 2016-2017 FINAL in Saitama Super Arena -Run for the 15th Anniversary-supported by animelo mix
- 2017年3月18日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
fripSide(フリップサイド)
コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年に活動を開始し、2009年に南條が加入。同年テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリース後、アニメやゲームの楽曲を多数手がける。2010年に1stアルバム「infinite synthesis」、2012年12月には結成10周年記念アルバム「Decade」をリリースし、2014年9月に3rdアルバム「infinite synthesis 2」を発表。そして2015年5月に「Luminize」、12月に「Two souls –toward the truth-」、2016年2月に「white forces」と3枚のシングルリリースを挟み、10月に4thアルバム「infinite synthesis 3」を発表した。このほかangelaとのコラボシングルとして10月19日にangela×fripSide「僕は僕であって」、12月7日にfripSide×angela「The end of escape」の発売を控えている。