音楽ナタリー Power Push - fripSide

3度目の「無限の統合」に込めた思い

10月5日にfripSideの4作目のフルアルバム「infinite synthesis 3」がリリースされる。

前作「infinite synthesis 2」から約2年ぶりとなる今回のアルバムでは「Luminize」や「Two souls -toward the truth-」といったシングル曲のほか、1期fripSideの「crescendo」「magicaride」のニューバージョン、最新シングル曲「white forces」やカップリング曲「1983 -schwarzesmarken-」のリアレンジバージョンなどが収められている。今回音楽ナタリーでは八木沼悟志と南條愛乃にアルバム制作時のエピソードをはじめ、全国ツアーや来年3月に実施されるさいたまスーパーアリーナ公演について話を聞いた。

取材 / 成松哲 文 / 高橋拓也

お客さんを待たせてしまうのは苦痛

──八木沼さんがALTIMA活動休止(参照:ALTIMA、本日アニサマ初日に活動休止を発表)やangelaとのコラボ(参照:angelaとfripSideが合体!「亜人」シリーズでコラボ実現)に向けた準備を進める中、このボリューム感満載なアルバムを作っていたことにまず驚かされました。

八木沼悟志 angelaさんとのコラボもほかのさまざまな活動も、本家fripSideの活動に影響はないんです。基本はいろんなことをやってもいいんだけど、fripSideのサウンドの核になる部分は崩さないというスタンスなので。と言っても、その代わりスケジュールは大変になりますね。

──南條さんもソロアルバムをお作りになり(参照:南條愛乃「Nのハコ」インタビュー)、さらに役者としての活動やソロツアーの準備もあって。「infinite synthesis 3」はソロアルバム「Nのハコ」と並行して制作されたんでしょうか?

南條愛乃 ちょうど「Nのハコ」の制作が終わりかけるぐらいに「infinite synthesis 3」の制作に入りました。

──休む間もなくずっと歌ってたってことですよね。しかも「infinite synthesis 3」はソロとは全然違うモードに変える必要もあったでしょうし。

南條 そうですね。ただソロはコンセプトといった土台作りからやらないといけないんですけど、fripSideは基本的に八木沼さんが作ってくれた土台に乗って、ある意味歌えばいいだけなので(笑)。

──それにしてもお二人とも、すごい仕事量だなって。これが若手のクリエイターだったらまだわかるんですけど、正直5年に1枚アルバムを出すぐらいのペースで活動しても、全然許される立場じゃないですか。

fripSide

八木沼 いやいや全然です。やっぱりお客さんを待たせてしまうのは、僕らにとって苦痛以外の何ものでもないので。皆さんの期待に応えたいですし、全国ツアーに向けて1つ、質の高いニューアルバムを作るのは必須でした。

──八木沼さんご自身の中に「ファンの要望に応えたい」という欲求があると。

八木沼 僕はプロデューサーやプレイヤー、それからコンポーザーだったりアレンジャーだったり、いろんな立ち位置があるので。100%要望に応えるのは難しいときもあるんですけど、ファンの皆さんにとって、僕たちがどう動いたらうれしいかっていう視線はなくさないよう心がけていますね。

──八木沼さんは前々から「デジタルJ-POPの復権を」とおっしゃっていたんですけど、今作の「determination」や「crescendo -version2016-」、「Side by Side」のエレピの音色がまさに、1980年代後半から90年代頭ぐらいのサウンドに近いものになっていて。PCMシンセでシミュレートしたピアノのように、いい意味での古さみたいなものを求めていたんじゃないかと感じたんですが。

八木沼 まさにおっしゃる通りで。シンセサイザーってPCM音源もあればアナログシンセもあって、技術革新と共に音が進化してきた経緯があるんです。その流れをリマインドするという試みが面白いんですよね。もしかしたら40代後半から60代の方がアルバムの楽曲を聴いたとき「おっ、これ懐かしい」「青春時代こんな音聴いてきたぞ」って思うかもしれません。

“infinite synthesis”はもうひとつのタイトル

──不思議だったのが、なぜアルバムのタイトルを「infinite synthesis 3」にしたんだろうということで。「infinite synthesis 2」のインタビューで「1stへのアンサーだから2」とおっしゃってましたけど、(参照:fripSide「infinite synthesis 2」インタビュー)、3になるとアンサーのアンサーなのか、もしくは“infinite synthesis”っていう看板で今後もアルバムを発表していくっていう姿勢表明なのか、そこがすごく気になりました。3回続けて“infinite synthesis”というタイトルを使ったことに、なんらかの意味が込められているんじゃないかと。

八木沼悟志

八木沼 「infinite synthesis 2」を発表してから、“infinite synthesis”はfripSideというユニットのサブタイトルのようなものなのではと考えたんです。infiniteは「無限」、synthesisは「合成・統合」って意味ですけど、無限に合成していく、統合していくっていうのは僕たちにとってすごくいいテーマで。fripSideはこの姿勢で活動を続けていくべきだと思ったんです。例えば楽曲についてもロックテイストだけでなくEDM、J-POP風など、いろんな曲調があってしかるべきなんですよね。 つまり“infinite synthesis”はfripSideとしての活動の幅を表す受け皿のようなもので、この皿の大きさがちょっとずつ広くなればいいかなと思っているんです。

──今回のアルバムではほんとにその受け皿をどんどん拡大させているし、既発曲もそのまま入れずにリアレンジしています。原曲も全然カッコいいのに作り直したくなる、この感じってなんでしょう?

八木沼 まあ欲張りなんでしょうね。例えば「1983-schwarzesmarken-」はゲーム「シュヴァルツェスマーケン」のテーマソングなんですけど、ゲームで使う場合とCDに収録する場合でそれぞれベストな形があるし、せっかく時間もあるのでバージョンアップさせたくなったんです。

ニューアルバム「infinite synthesis 3」 / 2016年10月5日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
初回限定盤 [CD+Blu-ray×2] / 5724円 / GNCA-1490
初回限定盤 [CD+DVD×2] / 5184円 / GNCA-1491
通常盤 [CD] / 3240円 / GNCA-1492
CD収録曲
  1. 2016 -Third cosmic velocity-
  2. Luminize
  3. 1983 -schwarzesmarken- (IS3 version)
  4. determination
  5. magicaride -version2016-
  6. Answer
  7. Two souls -toward the truth-
  8. white forces -IS3 edition-
  9. crescendo -version2016-
  10. Run into the light
  11. Dry your tears
  12. unlimited destiny
  13. One and Only
  14. Side by Side
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
  • fripSide concert tour 2015 ~infinite synchronicity~(2015.12.13[sun] 東京・府中の森芸術劇場 どりーむホール)
  • fripSide オランダドキュメンタリー映像
  • 1983 -schwarzesmarken- (IS3 version) PV
  • PV Making
  • SPOT(SPOT in Stores Now ver. / SPOT Special ver.)
fripSide concert tour 2016-2017 -infinite synthesis 3-supported by animelo mix
  • 2016年10月29日(土)千葉県 市原市市民会館 大ホール
  • 2016年11月13日(日)北海道 千歳市民文化センター 大ホール
  • 2016年11月19日(土)神奈川県 神奈川県民ホール 大ホール
  • 2016年11月27日(日)長野県 キッセイ文化ホール 中ホール
  • 2016年12月4日(日)大阪府 オリックス劇場
  • 2016年12月11日(日)広島県 上野学園ホール
  • 2016年12月17日(土)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
  • 2016年12月18日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2016年12月24日(土)福岡県 福岡国際会議場 メインホール
  • 2017年1月7日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2017年1月21日(土)岡山県 倉敷市民会館
  • 2017年2月19日(日)福島県 南相馬市民文化会館
  • 2017年2月26日(日)新潟県 新潟県民会館 大ホール
  • 2017年3月5日(日)石川県 本多の森ホール
fripSide LIVE TOUR 2016-2017 FINAL in Saitama Super Arena -Run for the 15th Anniversary-supported by animelo mix
  • 2017年3月18日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
fripSide(フリップサイド)

コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年に活動を開始し、2009年に南條が加入。同年テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリース後、アニメやゲームの楽曲を多数手がける。2010年に1stアルバム「infinite synthesis」、2012年12月には結成10周年記念アルバム「Decade」をリリースし、2014年9月に3rdアルバム「infinite synthesis 2」を発表。そして2015年5月に「Luminize」、12月に「Two souls –toward the truth-」、2016年2月に「white forces」と3枚のシングルリリースを挟み、10月に4thアルバム「infinite synthesis 3」を発表した。このほかangelaとのコラボシングルとして10月19日にangela×fripSide「僕は僕であって」、12月7日にfripSide×angela「The end of escape」の発売を控えている。