ナタリー PowerPush - fripSide

小室哲哉とのコラボで見せた デジタルJ-POPの最高到達点

fripSideのサマーチューン2態

──初回限定盤と通常盤のカップリング「scorching heart」と、初回限定アニメ盤のカップリング曲「waiting for the moment」なんですけど、「eternal reality」とはもちろん、2曲ともそれぞれ肌合いが違いますよね。「scorching heart」はピアノが16分音符でリフを刻むハウスっぽいトラックで、「waiting for the moment」はけっこう重めのトランスで。

sat 発売日が発売日なのでカップリングは「夏の終盤、まだまだ暑い日が続くよね」って感じの曲にしようと思ったんですけど、せっかく2曲作る上に、それぞれ別の盤に収録されるんなら二面性を持たせてみよう、と。「scorching heart」はオーソドックスなfripSideサウンド的な熱をもった曲にして、「waiting for the moment」では少し冒険をしてみる。ヘビーでダークな曲にしてみたら面白いんじゃないかって思ったんです。

──2曲とも詞は南條さんですよね。

南條 先に「scorching heart」のデモを渡されたんですけど、それを聴いたとき「暑苦しい夏みたいな歌詞にしよ」と思ったんですよね(笑)。

──確かに「希望があるなら 不安で足が震えても 後ろは見ないで走れ」と、ずいぶん“熱い”詞ですよね。

南條 真夏の焦げるような印象の曲だったので、その物理的な暑さに背中を押してもらうことで自分自身も熱くなって、前向きにがんばれるような歌詞になったらいいな、と思って書きました。

──一方の「waiting for the moment」は?

南條 実は「scorching heart」がアップテンポだったから「たぶんもう1曲はバラードなんじゃないかな」って勝手に思っていて。だからまずは「違ったーっ!」って焦って(笑)。ただアップテンポではあるんだけど、satさんが言っていた通り、ダークというか、温度的には冷たい曲なので、暗いところで1人葛藤していたところに、誰か明るい人が手を差し伸べてくれるっていう詞にしてみようかなって。そうしたら、satさんから「『シスターズ編』の美琴に重なる部分があるし、いいね」って言っていただけて。

sat うん。僕はさっきもお話した1人で葛藤を抱えている美琴をイメージして作曲していたので。

南條 だから、リンクしてよかったなあ、と。ホントに偶然なんですけど(笑)。

南條愛乃、失恋か!?

──ただ、こうやってお話をしていると南條さんってフラットな人だなって感じがするんですよ。「scorching heart」的というか「夏だっ!」「戦うぜっ!」っていうキャラクターでもなければ、「waiting for the moment」のヒロインみたいな「しょせん人間は孤独だから……」って感じのニヒリストでも……。

南條 全然ないですね(笑)。

──なのになんでこういう詞が書けるんですかね?

南條 声優としていろんな役を演じさせてもらっているからかもしれないですね。実際「waiting for the moment」の詞は、最近、1人葛藤していて、誰かに救いの手を差し伸べてもらうっていうキャラクターを演じることが多かったので、そういう役の心情をちょっと重ねて書いてみましたし。ただ、そうやってまったく違う誰かになりきって歌詞を書くのってけっこう珍しいらしくて。失恋の歌なんかを書くとマネージャーから「南ちゃん、最近ふられた?」って心配されたりするんですよ(笑)。

──それだけ役者として優れているってことですよね。作詞の段階から、きちんと詞の中の主人公を演じきれている。いい意味でリスナーをまんまとダマせているわけだから(笑)。

南條 でももし聴いてくださる方全員が「南條、ふられたのかな?」って思ってたとしたら、大変なこっちゃですよね(笑)。

新しいアプローチや新しい扉はまだ残されている

──最後にかなり本気で聞きたいことが1つあって。fripSideって今後どうするんでしょう?

sat 「どう」って?

──「eternal reality」って本当に「デジタルJ-POPの決定版」だと思っていて。もはやデジタルJ-POPの灯を絶やさないどころか、街中をデジタルJ-POPの火の海にしてしまったような楽曲だな、と。だからこそ、今後この曲と勝負していくことってかなりシンドイんじゃないかって気がするんです。

sat ああ、なるほど。でも、もっと進化できるし、大きくなれる気はしているんですよ。というのも、僕の最大の目標とか目的って「fripSideを愛してくださるファンの皆さんと長いお付き合いをする」ということなので。もちろん「sister's noise」も「eternal reality」もfripSideの楽曲の中で大切な1曲だとは思っていますけど、それすらもみんなと少しでも長くお付き合いするための武器の1つ、パーツの1つ。逆に言うと、目的を達成するための武器は何もこの2曲のような楽曲ばかりではないと思ってるんです。ファンの方が面白いと思ってくれるなら、例えばですけどアコースティック系の楽曲をやってみたっていい。さすがにもう10年も活動しているから、楽器が変わるくらいのことでfripSideらしさが失われることはないと思うし、そういう新しいアプローチや新しい扉はまだまだ残されていると思っているので。

南條 あと、小室さんとコラボできたことはもちろんスゴいことだな、とは思うんですけど、その楽曲に対して超える / 超えないみたいな感覚自体あまりなくて。satさんもそうだと思うんですけど、どの曲も全部同列なんですよね。

sat そうだね。どの子もかわいいんです(笑)。

南條 確かにペットっぽいですよね(笑)。どの子についても、そのときどきにできる全力投球で育てているつもりなので、全部かわいい。だから、今後私たちにできることは「sister's noise」という曲で評価をいただいたり、小室さんとコラボさせていただいたりしたことを武器に今まで以上の全力投球をして、かわいい子を育てることだけなのかな、って。で、ファンの方には「この曲が好きだ」「いや、オレはあの曲が」って、いろんなfripSideを楽しんでもらえればいいのかな、って思ってます。

sat うん。それに「小室さんとのコラボ以上のインパクトを」って肩肘張ってると、長続きしないというか、息切れしちゃいますよね、きっと。もちろん「2013年のfripSideは思いっきりやるから」って言葉にウソはないんだけど、ひと山超えたらいったんフラットに戻るようにはしていて。そうやって落ち着くからこそ、次のチャレンジに対してまた新鮮な気持ちで向き合えるし、むしろより高いテンションやパフォーマンスを発揮できるんじゃないかな、って気がするんですよ。

ニューシングル「eternal reality」 / 2013年8月21日発売 / ジェネオン・ユニバーサル
初回限定アニメ盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCA-0305
初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCA-0306
通常盤 [CD] 1260円 / GNCA-0307
初回限定アニメ盤 CD収録曲
  1. eternal reality
  2. waiting for the moment
  3. eternal reality – TV size –
  4. eternal reality – instrumental –
初回限定アニメ盤 DVD収録内容
  • 「eternal reality」PV – anime ver. –
  • Special Interview
  • SPOT – In Stores Now ver. –
  • 「sister's noise」TVアニメ「とある科学の超電磁砲S」オープニングテーマ -ノンテロップver. -
  • 「sister's noise」LIVE 2013.3.22 @SHIBUYA O-EAST “リスアニ!CIRCUIT Vol.03”
初回限定盤 CD収録曲
  1. eternal reality
  2. scorching heart
  3. eternal reality – instrumental –
  4. scorching heart – instrumental –
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「eternal reality」PV
  • PV making
  • SPOT – In Stores Now ver. –
  • 「sister's noise」LIVE 2013.3.22 @SHIBUYA O-EAST “リスアニ!CIRCUIT Vol.03”
通常盤 収録曲
  1. eternal reality
  2. scorching heart
  3. eternal reality – instrumental –
  4. scorching heart – instrumental –
fripSide(ふりっぷさいど)

コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2008年に初代ボーカルnaoとsatでデビュー。2009年に南條愛乃が加入し、テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリース。その後もアニメやゲームに楽曲を提供していき、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」ではその存在感を確固たるものとした。2011年8月に発売された4thシングル「Heaven is a Place on Earth」はアニメ映画「劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH」の主題歌に起用。これまでとは異なるさわやかなサウンドで、ファン層を拡大した。2012年12月には結成10周年を記念したアニバーサリーアルバム「Decade」をリリースした。2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表。「sister's noise」はオリコン週間シングルランキングでfripSide初となる1位を獲得した。そして同年8月、小室哲哉とのコラボ曲となる表題曲を含むシングル「eternal reality」をリリース。