ナタリー PowerPush - fripSide
小室哲哉とのコラボで見せた デジタルJ-POPの最高到達点
目指したのは「真の意味でのコラボレーション」
──その小室さんとの共作曲「eternal reality」ですけど、初めて聴いたとき、いい意味で笑いが止まらなかったんですよ。剛速球だった「sister's noise」よりもさらに速い球、ホントに「デジタルJ-POPの決定版」みたいな曲をド真ん中に放り込んできたので。
sat ありがとうございます(笑)。
──ホントに「作曲:小室哲哉 / 八木沼悟志」というクレジットにウソがない作り方をしてる曲だな、って気がしていて。小室さんがメインメロディを書いてsatさんに渡して「はい、オシマイ」っていうコラボではない。satさんと本当に楽曲を共同制作している曲だよな、って。
sat そうですね。僕が小室さんとやりたかったのは、真の意味でのコラボレーション。そういう「楽曲をもらいました」っていうことではなかったので。小室さんと初めてお会いしたとき、そのあたりもちゃんとお話させていただいて、その上で「fripSideの音、satくんの音っていうものがあるはずだから、それを大切にしてほしい」「だから僕がまず作曲してみるから、satくんにはそれを好きにいじってほしい」って言っていただいたんです。あとは「僕にもシンセサイザー弾かせてね」って(笑)。そういう作り方をしたから、がっぷり四つな曲になったんだろうし、そもそも僕はもちろん、小室さんもがっぷり四つで相撲をとるつもりだったんですよね。
──実際、そのsatさんと小室さんの相撲はどんな展開に?
sat 「eternal reality」も「sister's noise」と同じように「超電磁砲S」のオープニングテーマになっているので、まずは「『超電磁砲S』はこういうアニメで、こういうストーリーだから、こういう雰囲気の楽曲にしてほしい」というお話をさせていただいて。で、後日、小室さんから楽曲ファイルが送られてきたので、僕なりの120%の力で遠慮なく変えさせていただき(笑)。その楽曲ファイルを小室さんに送ったら「あっ、いいね」という言葉とともに、手弾きシンセが数トラック分入った音源がまた送り返されてきたって感じですね。で、歌を録って完成、と。すごくシンプルな取り組みでした(笑)。
レジェンドが相手だからこそ遠慮なく曲に手を入れる
──satさんは以前から90年代後半の小室サウンドに代表されるようなデジタルJ-POPに影響を受けたことを隠さないし、そのデジタルJ-POPの復権を目指しているとも言っていますよね。
sat ええ。デジタルJ-POPの灯を絶やさないっていうのは僕の音楽活動のテーマの1つですから。
──それでも遠慮なく小室トラックに手を入れられた?
sat 確かに小室哲哉という人はその道の第一人者、レジェンドだから、ちょっとビビりはしましたけど(笑)、僕がヘンなところで遠慮してしまうのは逆に失礼なんじゃないかなあ、と。クリエイター同士、作曲家同士がコラボレーションするのであれば、格とか名前とかは関係なしに今の小室さんのサウンドと僕のサウンドを本気でぶつけあって新しい化学反応を起こさなければならない。逆に僕が遠慮すると小室さんの本気がムダになってしまう気がしたので、遠慮はしませんでしたね。ただ、たぶん手順が逆だったら、今回のコラボはうまくいかなかった気はします。
──「手順が逆」?
sat 僕が作曲したものに対して小室さんが手を加えるっていうのは難しいんじゃないかと思うんですよ。fripSideの音を詳しく知ってくださっているわけではないので、僕の曲に手を加えていただくとなると、完全に小室さんの音にアレンジされてしまうかもしれないし、逆に僕の音が尊重されすぎてしまうかもしれない。でも、僕は小室哲哉フォロワーですから。小室さんの歴史や音楽性を知っているから、小室サウンドの中でもキーとなる部分は生かしつつ、「でも僕だったらこうするのにな」っていう部分に対してはガッチリ手を加えられる。小室さんの音の一番オイシイところと自分の音の一番オイシイところを両立させられるんです。
──確かにそういう音になってますよね。その音を聴いた南條さんの感想って?
南條 アレンジをsatさんがしていると聞いていたのでイントロを聴いたときは「あっ、思ったよりもいつものfripSideだ」って思ったんですけど、メインメロディが流れてきたら「あれっ?」って(笑)。曲の構成や使っている音はfripSideっぽいんだけど、実際に声に出してメロディを歌ってみると、明らかにfripSideっぽくは歌えないパートがいくつかあって。あとで話を聞いたらそこが小室さんが作ったパートだったらしいので「やっぱり違うんだなあ」って驚きましたね。
──歌いやすかったですか?
南條 個性の強いお2人の色、それも原色みたいな強い色がガッツリ2つ入っている曲なので、けっこう迷いました。「このパートは赤いから私も赤い感じで歌って、あのパートは青いから私も青い感じで」ってやっちゃうと曲がとっ散らかると思ったので。その赤と青をつなぎつつfripSideの音にまとめるのが私の役目なんだろうな、とは思ったんですけど「じゃあfripSideらしさってなんだっけ?」って、けっこう考えちゃいましたね。
- ニューシングル「eternal reality」 / 2013年8月21日発売 / ジェネオン・ユニバーサル
- 初回限定アニメ盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCA-0305
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCA-0306
- 通常盤 [CD] 1260円 / GNCA-0307
初回限定アニメ盤 CD収録曲
- eternal reality
- waiting for the moment
- eternal reality – TV size –
- eternal reality – instrumental –
初回限定アニメ盤 DVD収録内容
- 「eternal reality」PV – anime ver. –
- Special Interview
- SPOT – In Stores Now ver. –
- 「sister's noise」TVアニメ「とある科学の超電磁砲S」オープニングテーマ -ノンテロップver. -
- 「sister's noise」LIVE 2013.3.22 @SHIBUYA O-EAST “リスアニ!CIRCUIT Vol.03”
初回限定盤 CD収録曲
- eternal reality
- scorching heart
- eternal reality – instrumental –
- scorching heart – instrumental –
初回限定盤 DVD収録内容
- 「eternal reality」PV
- PV making
- SPOT – In Stores Now ver. –
- 「sister's noise」LIVE 2013.3.22 @SHIBUYA O-EAST “リスアニ!CIRCUIT Vol.03”
通常盤 収録曲
- eternal reality
- scorching heart
- eternal reality – instrumental –
- scorching heart – instrumental –
fripSide(ふりっぷさいど)
コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2008年に初代ボーカルnaoとsatでデビュー。2009年に南條愛乃が加入し、テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリース。その後もアニメやゲームに楽曲を提供していき、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」ではその存在感を確固たるものとした。2011年8月に発売された4thシングル「Heaven is a Place on Earth」はアニメ映画「劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH」の主題歌に起用。これまでとは異なるさわやかなサウンドで、ファン層を拡大した。2012年12月には結成10周年を記念したアニバーサリーアルバム「Decade」をリリースした。2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表。「sister's noise」はオリコン週間シングルランキングでfripSide初となる1位を獲得した。そして同年8月、小室哲哉とのコラボ曲となる表題曲を含むシングル「eternal reality」をリリース。