音楽ナタリー Power Push - 水本有(フリサト)×小高芳太朗(LUNKHEAD)対談

1980年生まれが語る“オールドルーキー”の魅力

フリサトは歌詞がダサいところがいい

──小高さんにとって、フリサトの「ハグミーハグミーハグミー」の魅力はどんなところですか?

小高 まず、歌詞が好きっすね。いろんな人がいて、いろんな音楽があるけど、「音は好きなんだけど、歌詞が自分の中に入ってこない」ということもあるんですよ。歌詞を読んで「いいな」って思っても、曲と歌が一体化してなかったり。フリサトは「すごく歌詞を大事にしてるな」というのが伝わってくるし、水本くんの声によって、さらに説得力が増す感じがするんですよね。

水本 ありがとうございます。そんなふうに言ってもらえると、すごくうれしいですね。

小高 俺らもキャリアが長くなってきてるけど、自分たちの音楽がだんだん尖ってきた感覚があって。でもフリサトのような雰囲気の曲をやっていた頃もあるんですよ。

左から小高芳太朗、水本有。

──そうですね。特にデビュー直後は思春期特有の青さがあったと思います。

小高 そうなんですよね。だからフリサトの曲を聴いて「すげえ若いんだろうな」と思った。歌詞があまりにもダサくて(笑)。

水本 ハハハハハ!(笑)

小高 もちろんいい意味で言ってるんですけどね。「35歳でこういう歌を歌えたら、一生楽しいだろうな」って。俺らはデビューした頃に「青くさい」とか「中2」ってずっと言われていて、自分としても「こういう歌を一生歌い続けることはできないだろうな」と思ってたんです。30歳、40歳になったときに、これを歌ってたらイタいなって。そこから脱却するために足掻いたし、ポップな方向に行こうとしたこともあるけど、30歳を越えたときに「一生、イタくてもいい」と思って、戻ってきた。

水本 僕は基本的にすごく近い世界のことを歌ってるんです。電車の中で人にぶつかられてムカついたこととか。あと今回はメンバーに向けた曲も入ってます。そのメンバーがバンドに入るかどうかっていう時期に「これからフリサトでやっていく自信がない」って言われて、「すげえ想像力だな」と思って。そいつを勇気付けるために書いたのが「原始」なんです。「怖くなったのは発達しすぎた想像力のせいだ」っていう。

──そのエピソードも青春っぽいですね。35歳はもう青春という年齢ではないですけど、すごく生々しいリアリティがあって。

小高 でもね、年齢は関係ないと思いますよ!

水本 そうですよね。僕、ボブ・ディランがすごく好きで、「Forever Young」という曲が30歳を越えたときからのテーマ曲なんです。たとえば同級生に会ったときに「老けたなあ」って思う人っているじゃないですか。そういう人は、学ぶことをやめたり、次のステップに進むことをやめた人だなって思ったり。

小高 「めっちゃオジサンやな」っていう同級生、いるからね(笑)。俺はそれもひとつの生き方だと思うけどね。ちゃんと仕事して、家庭を持って、真っ当に歳を取るっていう。

水本 あ、なるほど。

小高 ただ、俺らは歳を取ってはいけないと思っていて。実際の年齢と自分自身は関係ないというか……。甲本ヒロトさんもそうだけど、今のアラフォー、アラフィフのミュージシャンってヤバいじゃないですか。50年生きれば50歳になるんだけど、魂まで老いることはない。あ、今のは永ちゃん(矢沢永吉)の言葉を借りましたけど(笑)。

「ふんばれ」はあまりにもダサくて使うか迷った

小高 水本くんの歌詞の言葉遣いって、いちいち“男子”なんだよね。たとえば「ジョハリの窓」の最後の「嗚呼言っちゃった」もそう。その言葉があるかないかで、歌詞がまったく違ってくるなって。

──その前に「『あなたを選んでよかった』なんて言わせてみせる」という歌詞があって、最後が「嗚呼言っちゃった」ですからね。「春が来た」の「これまで何度がんばって来たのだろう」「それは夢のため 生きるため」という冒頭のフレーズも、水本さんが歌うとすごく説得力ありますね。

水本 ありがとうございます。まず僕は“がんばれ”という言葉が苦手というか、違和感があるんですよ。がんばってる人に“がんばれ”って言いたくないし、“がんばって”という言葉が必要な人って、かなり煮詰まってて、つらい状況じゃないかなって。そういうときに何かいい言葉がないかなって考えたのが、サビの「ふんばれ」だったんですよね。「ふんばれ」だったら、あとちょっと、最後の力を出せるんじゃないかって。ただ、あまりにもダサい言葉だから、どうしようか迷いましたけど(笑)。

小高 「ふんばれ」の後に「辛いよな 痛いよな」「苦しいよな 泣けてくるよな」って歌ってるのもいいよね。これはまさに寄り添ってくれる言葉やなって。ただね、俺は“がんばれ”もいいと思うんだよね。インストアイベントなんかでファンの人と会う機会があるんだけど、中には「明日、受験なんです。がんばれ!って言ってください」っていう子もいて。がんばりたい人には、“がんばれ”って言う意味があるんやなって思うんだよね、そういうときは。

水本 なるほど……。勉強になります。

フリサト ニューアルバム「ハグミーハグミーハグミー」 / 2015年11月11日発売 / 2160円 / LookHearRecords / UK.PROJECT / LHRUK-1982
「ハグミーハグミーハグミー」
「ハグミーハグミーハグミー」
収録曲
  1. 春が来た
  2. ジョハリの窓
  3. YaYaKo-C
  4. 原始
  5. トマト
  6. ふうてんさん
  7. 藍いこころたち
  8. EEE
フリサト
フリサト

2006年に水本有(Vo)を中心に結成され、数回のメンバーチェンジを経て現在は5人編成のバンドとして活動中。フォークロックやギターロックをベースに、ユーモラスかつ実直な歌を歌っている。下北沢CLUB Queの店長・二位徳裕氏をプロデューサーに迎えて制作したアルバム「ハグミーハグミーハグミー」を2015年11月にリリースする。

フリサトライブツアー2015-2016「ハグユー!」
2015年11月21日(土)東京都 下北沢CLUB Que
<出演者>
フリサト / HANZI BAND / SUNDAYS
2015年11月26日(木)大阪府 FANDANGO
<出演者>
フリサト / 空団地 / and more
2015年11月27日(金)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL
<出演者>
フリサト / qualm / Third fly / suicide in April / and more
2015年12月10日(木)千葉県 千葉LOOK
<出演者>
フリサト / CHERRY NADE 169 / BARICANG / YUEY / オオヌキシンゴ
2015年12月15日(火)千葉県 柏Thumb Up
<出演者>
フリサト / Helloes / and more
LUNKHEAD(ランクヘッド)
LUNKHEAD

小高芳太朗(Vo,G)、山下壮(G)、合田悟(B)桜井雄一(Dr)からなる愛媛県出身のロックバンド。メンバーはともに愛媛県立新居浜西高校の在学時に出会い、卒業記念に1度だけライブを実施。その後全員が大学進学で上京する頃に改めてLUNKHEADを再結成し、下北沢のライブハウスを中心に活動し始める。2004年1月にシングル「白い声」でメジャーデビュー。自主企画イベント「みかん祭」を主催するなど精力的に活動を行い、ライブバンドとしての評価を高めた。結成10年目に突入した2008年3月には初のベスト盤「ENTRANCE~BEST OF LUNKHEAD age18-27~」をリリース。2010年にメンバーの脱退により桜井雄一(ex.ART-SCHOOL)が加入。2015年1月にはメジャーデビュー10周年イヤーを締めくくるライブイベント「一世一代のみかん祭」を東京・新木場STUDIO COASTにて開催し、同年4月にはレーベルを徳間ジャパンコミュニケーションズに移籍して10枚目のアルバム「家」をリリースした。11月にアコースティック編成のワンマンツアーを行い、2016年3月には東京・TSUTAYA O-EASTにてワンマンライブ「千客万来のみかん祭」を開催する。

LUNKHEAD東名阪アコースティックワンマンツアー~Very Best of Acoustics~
2015年11月22日(日)東京都 渋谷7th FLOOR
2015年11月26日(木)大阪府 cafe Room
2015年11月27日(金)愛知県 ell.FITS ALL
千客万来のみかん祭
2016年3月19日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST