ナタリー PowerPush - FreeTEMPO
ラストアルバムで表現された半沢武志のネクストステージ
FreeTEMPOでやれることはすべてやりきった
──この作品をFreeTEMPOの最後の作品にしようと思ったのはなぜですか?
FreeTEMPOっていうプロジェクトでできることを出しきった感覚があったんです。1年くらい前にアルバムを作り始めたころは、これで最後になるなんて思わなかったんですよ。でも作業を進めていくうちに満足感を感じてきて、「これで最後かな~」みたいな気持ちになってきて。あんまり最初のうちから「よし、ラストアルバムを作るぞ」みたいな気負いをもって作り始めたわけではないんですよね。
──意外です。生音を追求した今作のサウンドを聴いて、「ダンスミュージックユニットFreeTEMPOとの決別」みたいな意思表明なのかな、なんて深読みもしたんですが。
いや、そういうのもなんとなくの流れでした。これまでのアルバムはどれも2~3年後のことを見越して作っていたところがあったんですけど、今回に限ってはその先が見えなかったんです。やりきった感があるというか、まあ悪い言葉で言うとネタ切れなんですけど(笑)、それで次に進む気持ちになったので結果的に僕にとってすごく良いことだったみたいで。
──確かにそうですよね。まだこんなことやりたい! あんなことやりたい! みたいなモチベーションを抱えたまま、不完全燃焼で終わってしまったのでは悲しいですもんね。
そうそう。これを節目として踏ん切りつけて、新しいことができるようになるし。
──でもやっぱり、FreeTEMPOの終了について「残念だ」という反応もたくさんありましたよね。それについてはどう思いますか?
いやぁ……、すいません(笑)。まぁ僕は性格上そういうことをプレッシャーに思わないというか。これからも音楽は続けていくので、聴いてくださる方がいればがんばっていきたいなと。
──FreeTEMPOっていう名前を残して、いろんなことを並行してやっていくっていう選択肢はなかったんですね。
なかったですね。多分、性格上ダメなんですよね。1個終わんないと次に進められないっていう。例えば10年後とかにまたFreeTEMPOっていうものが復活するかもしれませんけど、でも今はここで終わらせたほうが良いんだろうなって思っています。ただ、これからも人のプロデュースとかもやりたいし、映画の音楽とかもやってみたいし。名義は「半沢武志」になりますけど、バンドはバンドでやりつつ僕自身の音作りもやっていきたいなとは思いますね。
──これまでFreeTEMPOとしていろんな名曲を作ってきて、そこで得たネームバリューや信頼はリスナーにとって大きいものだと思うし、それを一旦リセットするのは勇気がいるような気がしますが。
確かにもったいないとは僕も思います。でも、その分メリットもあると思うんです。今までとはガラッと違った音楽をやる余裕も出てくるし。とにかく今は、自分の中だけからは出てこない、まだ見ぬ音っていうものに魅力を感じてるんです。
──ところで、次はバンドがやりたいということですけど、FreeTEMPO終了後の活動について具体的に決まっているんですか?
いや、全然ですよ。(笑)。ただ、ずっとそういう構想は練ってて。例えばマルチプレーヤーだらけのバンドだったり、クラブ系アーティストを集めたバンドだったり、1作品ごとに新しいバンドを組んでいこうとかね。でもバンドって難しいじゃないですか。特に人間関係とか。だから仲がいい人たちでやりたい(笑)。別に自分がリーダーにならなくてもいいんです。本当に気の合う人たちで集まって、一緒に音楽のことを考えられたらいいなと。
──今回のアルバムみたいな“バンド風の音を出してる”っていうのと、実際にバンドを組むっていうのは全然意味が違いますもんね。
そうですよね。今回はバンドっぽく見せただけで実際はひとりでやってるけど、バンド活動って本当に別物なので、自分でもどうなるのかすごく興味がありますね。
こんなに長くやるなんて全然想定してなかった
──この10年を振り返ってみて、半沢さんにとってFreeTEMPOとはどんなものでしたか?
2000年に活動を始めて、イタリアのIRMA RECORDSからデビューして、その後1stフルアルバムを出して……、2~3年ぐらい活動できれば、ぐらいしか当時思ってなくて。長くやるなんて全然想定してなかったし。だけどいろんな反響もあって、お仕事もいただいてって感じで、知らず知らずにFreeTEMPOっていう道が僕なりに見えてきて、そうこうしているうちに10年経っちゃったっていう。
──ああ、そうだったんですね。
自分ひとりの力でここまでくるのは到底無理な話で。この10年の間にいろんな人に出会って、いろんな曲にも出会って、いろんな影響をもらって、スタッフとか聴いてくれる方々とかいろんな人の協力があって成り立ったFreeTEMPOだったんだなって思います。お陰さまで、本当に楽しい10年でした。
──2000年というとちょうど大学を卒業するくらいの時期ですよね。そこで音楽の道を選んだのは、タイミング的に結構な決断だったのでは。
そうなんですよ。その頃は日本国内では全然名前が知られてなかったし。でもイタリアに送った音源がある程度認められたのもあり、結局音楽しかないだろうなと思って。
──結果として、その決断のおかげで僕らリスナーもFreeTEMPOの音楽を楽しめたわけですよね。
あと、また何か新しいものを作りたいなって意気込んでます。僕自身もすごく楽しみにしてるので、だからみなさんにも楽しみに待ってていただきたいんです。
CD収録曲
- Tomorrow feat. Takuji Aoyagi (Little Creatures / Kama Aina)
- Breezin' feat. Yasuyuki Horigome (Kirinji / Uma No Hone)
- Heart feat. blanc.
- a Walk feat. Xavier Boyer (Tahiti 80)
- 逆光
- Mistake feat. Elizabeth Ziman (Elizabeth & The Catapult)
- Holiday feat. Tomoko Mitsuda (achordion)
- メモライズ feat. Satokolab
- 時代 feat. Miyuki Hatakeyama (Port of Notes)
- Time Machine feat. another side
- Family feat. Ichiko Aoba
- My Song feat. another side
FreeTEMPO(ふりーてんぽ)
仙台を拠点に活動する、アーティスト/DJ/リミキサーの半沢武志によるソロプロジェクト。2000年より活動を開始。イタリアのIRMA RECORDSからリリースされたコンピレーション盤への参加を経て、2002年1月に1stミニアルバム「Love affair」に発表する。翌2003年7月には1stフルアルバム「The World is Echoed」をリリースしている。2007年2月に発表した配信楽曲「HARMONY」がiTunes Storeや各FM曲で1位を記録する快挙を達成。2008年6月にはSAWAのデビューミニアルバム「COLORS」のプロデュースを手がけ、プロデューサーとしての手腕も発揮する。2009年9月には自分の曲を歌ってほしいアーティストを指名する異色のカバー集「COVERS」を発表し話題となった。ボサノバやAOR、ハウスの要素を取り入れたクラブミュージックが特徴で、クラブ系音楽ファンを中心に好評を博している。