ナタリー PowerPush - FreeTEMPO
ラストアルバムで表現された半沢武志のネクストステージ
美しいメロディとスタイリッシュなハウスサウンドで、クラブミュージックシーンに確固たる地位を築いたFreeTEMPOこと半沢武志。しかし彼は2年半ぶりのオリジナルフルアルバム「Life」の発売をもって、10年間続いたFreeTEMPO名義での活動に幕を下ろすという。
FreeTEMPOにとってラストアルバムとなる「Life」は、青柳拓次(LITTLE CREATURES)、堀込泰行(キリンジ)、blanc.、ザビエル・ボイヤー(TAHITI 80)、畠山美由紀など、これまで以上に多彩なゲストボーカルを迎えて作られた意欲作。ナタリーでは半沢にインタビューを実施し、最後の作品に込められた彼の想いや、FreeTEMPO終了の真意、そして今後の活動の展望などについて語ってもらった。
取材・文/橋本尚平 インタビュー撮影/中西求
クラブミュージックの先にあるもの
──一般的にFreeTEMPOの音楽として多くの人がイメージするのはハウスだと思うので、これまでの作品を考えると「Life」は異色ですね。全体的に生音っぽくて、どの曲もバンドで再現できそうなアレンジで。
そうですね。ずっとクラブミュージックをベースにやってきたんですが、最近ちょっとバンドものを聴いていたり、自分でもバンドをやりたいなって思うようになってきたんです。だから今回は、打ち込みではあるんですけど、今までよりも生音を使ったり、バンド的なニュアンスを多く取り入れながら作ったんです。
──1枚の中にAORやシティポップス、R&B、ソフトロック、ネオアコなどさまざまな曲調の楽曲が収録されていますが、一方でフロアをガンガン盛り上げていくような四つ打ちの曲はほぼなくなりましたよね。
(笑)。
──そういった「踊らせる音楽」に対して興味が薄くなってきた、なんてことはありますか?
いや、それはないですね。興味あるバンドサウンドをちょっと多めに採り入れたので、クラブ的な成分がその分だけ薄れていったんだと思います。
──音楽性がこのように変化したことに、何かきっかけはあったんですか?
今までいろんなジャンルを取り入れながらいくつかの作品を作ってきたんですけど、まだやってない音楽もこの機会なんで挑戦してみようと。それでAORやR&Bの要素も取り入れてみたんです。
──例えばそこにたどり着くまでに、何か気になる音楽を聴いてそれがきっかけになったとか、そういうことではなく?
それもあるのかな。僕はリスナーとしては結構雑食でいろんな音楽を聴いてきたんですけど、最近はちょっと意識してクラブミュージックだったり新しい音楽を聴かないようにしていて。例えば10年前に流行ったフリーソウルとかソフトロックとか、昔に聴いてた音楽を思い出しながら聴き返していたので、そういう音楽を自分の曲に注入したところはあります。
──ということは音楽性の舵を新しい方向に切ったというよりは、むしろ原点に戻ったというほうが正しいのかもしれませんね。
うーん。原点回帰に近いっちゃ近いんですけど、ただ僕はこういうサウンドをクラブミュージックの先にあるものって捉えていて。これは長い間クラブミュージックを消化した結果、自分なりに出した答えなんです。クラブミュージックを超越すると生音なのか? っていったらそうとも言えないんですけどね。例えば、今回のアルバムの「Time Machine」って曲は今までだったら四つ打ちのハウスにしていたと思うんだけど、BPMは一緒ぐらいで生演奏にアレンジしたらどうなるのかなって興味が湧いてきたんです。四つ打ちを超えた、次のアプローチとして生の表現を選んだっていうのが正しいでしょうね。
CD収録曲
- Tomorrow feat. Takuji Aoyagi (Little Creatures / Kama Aina)
- Breezin' feat. Yasuyuki Horigome (Kirinji / Uma No Hone)
- Heart feat. blanc.
- a Walk feat. Xavier Boyer (Tahiti 80)
- 逆光
- Mistake feat. Elizabeth Ziman (Elizabeth & The Catapult)
- Holiday feat. Tomoko Mitsuda (achordion)
- メモライズ feat. Satokolab
- 時代 feat. Miyuki Hatakeyama (Port of Notes)
- Time Machine feat. another side
- Family feat. Ichiko Aoba
- My Song feat. another side
FreeTEMPO(ふりーてんぽ)
仙台を拠点に活動する、アーティスト/DJ/リミキサーの半沢武志によるソロプロジェクト。2000年より活動を開始。イタリアのIRMA RECORDSからリリースされたコンピレーション盤への参加を経て、2002年1月に1stミニアルバム「Love affair」に発表する。翌2003年7月には1stフルアルバム「The World is Echoed」をリリースしている。2007年2月に発表した配信楽曲「HARMONY」がiTunes Storeや各FM曲で1位を記録する快挙を達成。2008年6月にはSAWAのデビューミニアルバム「COLORS」のプロデュースを手がけ、プロデューサーとしての手腕も発揮する。2009年9月には自分の曲を歌ってほしいアーティストを指名する異色のカバー集「COVERS」を発表し話題となった。ボサノバやAOR、ハウスの要素を取り入れたクラブミュージックが特徴で、クラブ系音楽ファンを中心に好評を博している。