ナタリー PowerPush - FreeTEMPO
逆指名トリビュート「COVERS」発売記念 MONKEY MAJIKメイナードとみちのく仙台ジモティ対談
初めて半沢さんと会ったときに運命を感じた
──お互いその頃の印象はどうだったんですか?
半沢 メイナードはそのとき僕が住んでた家から近いところの専門学校で働いてたんですよ。だから結構ちょくちょく遊びに来てて。だからこう、ナイスガイだな、っていうのはありましたけど。
メイナード ナイスガイ(笑)。
半沢 でもその頃から「今後、この人といろいろ仕事するのかもしれない」っていうのをちょっと思ってたんですよ。音楽だけじゃなく、考えていることにも僕と共通点が見える人なんで。
メイナード 結局イメージどおりになってるよね。いろんな曲で一緒にコラボやったし、ライブで歌わせてもらったりもしたし、今回の「COVERS」に参加できたし。
──メイナードさんは半沢さんにどういう印象を持ってたんですか?
メイナード 半沢さんは本当に音楽そのままの人。全然変わってないんですよ。アーティストっていうと話しづらいオーラがありそうじゃないですか。でもそれがなくて本当に気さくで。マンションで大きい音でいろんな音楽を聴かせてもらってるときとか、その一緒にいるときのリラックス感がすごい好き。
──ホントに仲が良いんですねえ。
メイナード MONKEY MAJIKとFreeTEMPOは音楽性は違うけど同じシーンにいると思ってる。地方の音楽シーンっていうのはロックとかハウスとかみたいなジャンルごとに分かれてるんじゃなくて、パーソナリティーやヒューマニティーでつながってできてるんですよ。よくイギリスのマンチェスターシーンって言うけど、当時そのエリアで流行った音楽を聴くとやっぱりそれぞれ違うじゃない? 仙台もまだこれからもっと盛り上がらなきゃいけないけど、この10年間でそういうシーンができ始めたんじゃないかと思う。それを初めて感じたのがたぶん半沢さんと会ったとき。「あっ、だから僕は仙台を選んだのかな」って、運命的になんか感じたんだよね。
半沢 確かに僕だけじゃなくて、2000年ぐらいから仙台の中でもバンドだったりクリエイターだったりで、これから世に出てくるんじゃないかなみたいな人が増えてきたんですよね。未来を感じさせるようなタイプの人が芽を出し始めて。たとえば「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」みたいなイベントがあって市民みんなの音楽への興味が高まったり、そういうことで小さな芽がどんどん形になってきて、ここ10年間でひとつのシーンとして形になったのをすごく身近で感じてますね。
──メイナードさんは今、MONKEY MAJIKのほかにソロでハウスユニットblanc.をやっていますが、やっぱりFreeTEMPOからの影響はありますか?
メイナード そもそも「Sky High」を歌ったのがblanc.名義のスタートなんです。だから影響どころか、はっきり言ってFreeTEMPOがなければblanc.はないんです。ちなみに僕はカナダにいるときから日本のエレクトロニカが好きで興味があって。たとえばCORNELIUSさんとかね。そういうカッコイイ音楽で溢れてるんだろうなと思って日本に来たら、「チャートに入ってる曲が僕の知ってる日本の音楽と違ーう! 何これー!」みたいな(笑)。
半沢 ははは、そんなこと言っていいの?(笑)
メイナード まあ、僕もチャートに入ってる人なんですけどね(笑)。そういうところから日本に興味持ったので、誰でも楽しめるようなワールドワイドな音楽を作ってる半沢さんと初めて会ったときは、やっとこういう人に会えたって思って本当にうれしかった。もしかしたら「Sky High」を歌う前からソロプロジェクトやりたいって気持ちが自分の中にあったのかもしれないけど、FreeTEMPOがきっかけを作ってくれたおかげでblanc.が生まれたんです。
“バタフライエフェクト”って言葉知ってる?
メイナード blanc.ってもう10年間やってるんだけど、自分のCD出せるようになったのがつい最近で。せっかくやっとDJ活動スタートしたのに、半沢さんDJやめちゃったんだよね?
半沢 うん、終了(笑)。
メイナード おいおい何それ! 一緒にイベントやりたかったのに! って思ったよ(笑)。でも本当に同じタイミングでさ、それもまた面白い話だよね。たまたまこないだ仙台のSHAFTで半沢さんがDJやるって聞いたから、じゃあ飛び入りで出ようかなと思って、俺マジメだから歌詞カードまで用意して行ってさ(笑)。そしたらそこで「DJは今日で終わり」って発表したんだよね。えっ? 最後なの? ってビックリした。
半沢 ずっとDJやってきたから、新しいことをやりたくなって。昔はバンドもやってたから、またバンド的なこともやりたいし。DJも続けることはできるんだけど、やめることでまた違うことができると思ったんだよね。活動最後の日はメイナードに来てもらえてすごいうれしかったな。「Sky High」も歌ってもらったし。
メイナード 楽しかったよねホント。最後に全部出し尽くしてね……。まあ、またやってくださいよ!
半沢 じゃあ、何十年後か(笑)。
メイナード はははは(笑)。でもそれはわかるよ。半沢さんってバンドやっても何やってもすごいパワフルにできる人だから。確かにバンドとDJってぜんぜん違うからね。僕の場合は逆にずっとバンドやっててDJに興味を持ち始めたので、半沢さんがずっとやってきたDJを一旦やめるって気持ちはよくわかるんだよね。
半沢 もともとDJやってた人がバンド方面に行って、バンドやってた人がDJもやるようになってっていう、そのクロスしていくところがすごく不思議だよね。自分なりに自由にやろうとしてるからおのずとそうなるんだけど、クロスするタイミングまで合っちゃうっていうのが、それもまた不思議な仙台マジック。
──面白い話ですよね。お互いに影響を与えあった結果ということなんでしょうかね。
半沢 んー、こうやってたまに会ったりとか、普段の活動を見て「あっ、MONKEY MAJIK頑張ってんなー。こういうふうに進んでいくんだー」みたいなことを自分と比較したりはしてますけど。
メイナード “バタフライエフェクト”って言葉知ってる? どっかの国で蝶が羽ばたくと、どっかの国で津波になるっていう。大げさな話なんだけど、でもそういう意味での影響はあるかも。やっぱり同じ街に住んでるわけだし、何かが動くとなんだかんだでこっちも動くっていうか、そういうのは感じるね毎回。
半沢 うん、そうやって僕らの知らず知らずのうちに新しいものが作られていくっていうのはあると思うね。例えば、流行も大事だから「こういう音楽が流行るかもしれない」って考えながら曲を作ることもあるんだけど、そうじゃなくて自分たちでも気付かないうちに今までにないものができていることがあって。他の人がこういうものを作っている、だったら自分はこういうものを作る、とか、そんなふうにアーティスト同士がそれぞれ頑張ってるうちに、いつのまにか新しいものが生まれているっていうのはあるんじゃないかな。
DISC1 "COVERS"
- HARMONY / TAHITI 80
- Birds / 空気公団
- Kindly / 羊毛とおはな
- Trees / MONKEY MAJIK
- You and Me / キセル
- Stars / コトリンゴ
- Universe Song / 土岐麻子
- Feeling / paris match
- Sky High / 曽我部恵一
- TIME & LOVE FreeTEMPO ver. Tomita Lab Remix / Tomita Lab
DISC2 "WORKS" (BONUS CD / 初回盤のみ)
- POWER OF LOVE feat. MINKI LEE / FreeTEMPO × SHEEAN
- Last Letter FreeTEMPO Remix / 青山テルマ
- RADIO / 半沢武志 (FreeTEMPO)
- Lovespace FreeTEMPO Remix / 名取香り
- 月の裏で会いましょう (Let‘s go to the darkside of the moon) / bird (オリジナル:ORIGINAL LOVE)
FreeTEMPO(ふりーてんぽ)
アーティスト/DJ/リミキサーの半沢武志によるソロプロジェクト。仙台を拠点として活動を行っている。ボサノバやAOR、ハウスの要素を取り入れたクラブミュージックが特徴で、クラブ系音楽ファンを中心に好評を博している。また、日本だけでなく海外でも高い評価を受けており、イタリアのIRMA RECORDSからのリリースも行っている。