なんで俺らこんな出したがるんだろうね?
──そして新作「UИTITLƎD」が完成したわけですが、相変わらずのリリースペースの速さで「いつ作ったんだろう?」って思いました(笑)。
井上 去年くらいから「10月にアルバムを出そう」っていう話はしてたんです。で、スタジオを押さえたあとに「ROCK IN DISNEY ~fox capture plan」の話とかがあって……。
カワイ アルバムのために押さえてたスタジオを、全部ディズニー用に使うことになるっていう(笑)。
井上 今やってるNHKのドラマ「この声をきみに」の劇伴のお話もあとからいただいたので、「ヤバいんじゃないの?」ってなりつつ(笑)。
岸本 ただ、今回は曲ごとに録音の時期がバラバラで「FRAGILE」のときに録りためていた曲もあったんです。あと「PLASTIC JAM」は別件の制作のレコーディングのときに時間が余ったので、ジャムセッションで作ったり。
──立ち止まって考えるのではなく、動きながら作っていくのはフォックスらしいですね。
カワイ なんで俺らこんな出したがるんだろうね?
井上 1年にアルバム2枚出しても別に出し過ぎって感じはしないんですよね。まあサントラとかも混ぜると、確かにすごい枚数になってるんですけど(笑)。
岸本 インストのオリジナルアルバムを作って、ワンマンツアーをやってっていうのが一番ベーシックな活動なので、それありきでバンドを回していたら、結果的にいろいろ入ってきてる感じなんですよね。「どうしても立て込んでて無理」っていうときはあるけど「これはイメージが違うんで」って断ることはほとんどない。自分たちと全然違うフィールドでやってる人こそ、一緒にやることに意味があるのかなって。
自由にアルバムを作ってみたかった
──「曲を録った時期はバラバラ」というお話でしたが、そんな中でもアルバムとしての青写真のようなものはあったのでしょうか?
カワイ いや、まずは録りためていたものをまとめるところからだったので、「BRIDGE」(2013年リリースの2ndアルバム)のときと状況が似ていたって言うか。
井上 コンセプトを決めて作ったという感じではないですね。
岸本 前作、前々作とコンセプチュアルな流れで来ていたので、そうじゃない形で作ってみたかったのかもしれない。去年録っていた曲も、クオリティに納得がいってなかったわけじゃなくて「『FRAGILE』のコンセプトとは合わないから入れないほうがいいかな」と思っただけなので。そこに「Theme from quartet」や「PLASTIC JAM」が加わったときに「あとはこういう曲が欲しいね」って、穴埋め式にハメていきました。
──ストリングスを加えた前々作、電子音を導入した前作を踏まえて、より自由に曲を作って行ったと。
岸本 その2枚はアルバムの導入からして色をはっきり打ち出してたんですけど、今回は1曲1曲のキャラクターが濃くなりそうだなっていうのが見えてたんで、自由なアルバムにしようかなって。
──コンセプトありきの作品ではないからこそ、タイトルも「UИTITƎLD」なわけですよね。
岸本 そうですね。いつも曲のタイトルから選んでるんで、今回も「VIEW」とか「PLASTIC」が候補には挙がったんですけど、全員が納得するタイトルが浮かばなくて。じゃあ「UИTITLƎD」だねって。まさか、嵐と被るとは予想外でしたけど(笑)。
作曲者、プレイヤー、エンジニアがアイデアを投げ合う
──オープニングを飾っているのはカワイさん作曲の「Cross View」で、1曲目らしいドラマチックな展開が印象的です。
カワイ マニアックな感じなんで、4曲目くらいかなって思ってたんですけど(笑)。
岸本 でも、俺らは「これ1曲目やな」って。
カワイ 「FRAGILE」をリリースしたあとに作ったので、もうストリングスも電子音もアリになってる状態で、それらをもっとふんだんに使っちゃおうと思って作りました。この曲ではLでシンセ、Rでストリングスが同じメロディで鳴っていて、途中でクロスしてLがストリングス、Rがシンセになるんです。なので「Cross View」というタイトルになりました。
──途中の強烈なシンセベースからガラッと曲調が変わりますね。
カワイ もともとはシンセベースの部分から思い付いたんです。でも最初からこれは重いと思って、前半部分を考えました。Aphex Twinを聴いたのがヒントになりましたね。「こういう浮遊感いいな」って。
井上 “FRAGILE期”を越えた「capture the Initial "F"」(2012年発売の1stミニアルバム「FLEXIBLE」収録曲)みたいなイメージがある。
岸本 そうそう。今までの活動を踏まえたうえで音を更新してる感じがしたので、「Cross View」が1曲目だなって。
──さっきのシンセとストリングスがクロスするっていう話もそうですけど、ミックスはこれまで以上に面白いことになっていて、ドラムの音作りもかなり個性的ですよね。
カワイ エンジニア(上原翔)がけっこう勝手に「このドラムダブルで欲しいんだけど」とか言うんですよ。「ドラムでダブル?」っていう(笑)。
岸本 曲を作った人、プレイヤー、エンジニアがお互いアイデアを投げ合って、結果どうなるかわからないけど楽しみながらやってるって部分はあるかも。最初からある完成形を目指すんじゃないっていうのは、よく言えばクリエイティブだなと。
カワイ 遊びと言うか、伸びしろがあると言うかね。
岸本 面白半分で作ってるところもあるかもしれないけど、自分の理想以上の出来になることがすごく多いんですよね。
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レコーディングでバンドの熟成を感じる
- fox capture plan「UИTITLƎD」
- 2017年10月4日発売 / Playwright
-
[CD]
2500円 / PWT-038
- 収録曲
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- Cross View
- 行雲流水
- 繰り返される時空のワルツは千の夢を語り
- Theme from quartet
- No End
- seafrost
- PLASTIC JAM
- UИTITLƎD SCENES
- Viva La Vida
- Real, Fake
- Pain
ツアー情報
- fox capture plan "UИTITLƎD Tour"
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- 2017年10月29日(日)沖縄県 Output
- 2017年11月3日(金・祝)中国 西安市
- 2017年11月4日(土)中国 成都市
- 2017年11月5日(日)中国 重慶市
- 2017年11月7日(火)中国 武漢市
- 2017年11月8日(水)中国 杭州市
- 2017年11月9日(木)中国 上海市
- 2017年11月10日(金)中国 北京市
- 2017年11月15日(水)神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA
- 2017年11月18日(土)北海道 DUCE
- 2017年11月19日(日)宮城県 HooK SENDAI
- 2017年11月23日(木・祝)福岡県 INSA
- 2017年12月1日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2017年12月3日(日)愛知県 伏見JAMMIN'
- 2018年2月2日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
- fox capture plan(フォックスキャプチャープラン)
- 岸本亮(Key / JABBERLOOP)、カワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)からなるトリオ編成のバンド。それぞれ違った個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年に結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとしたサウンドで話題を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで発売したCD-R「Sampleboard」はフロアデイリーチャート1位を記録する。2013年5月には初のフルアルバム「trinity」、2013年12月に2ndアルバム「BRIDGE」をリリースした。2015年は「fox capture planとして3枚のアルバムをリリースする」と宣言し、4月にミニアルバム+ライブDVD作品「UNDERGROUND」、7月にカバーアルバム「COVERMIND」、11月にオリジナルアルバム「BUTTERFLY」を発表。2016年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演を果たした。2017年1月に5thアルバム「FRAGILE」をリリース後、TBS系ドラマ「カルテット」やNHKドラマ「この声をきみに」の劇伴を担当。同年10月に6thアルバム「UИTITLƎD」を発売した。