fox capture planが前作アルバム「FRAGILE」から約8カ月ぶり、通算6枚目のアルバム「UИTITLƎD」を完成させた。バンドはこの間にテレビドラマ「カルテット」の劇伴を担当して大きな話題を呼び、さらに大森靖子の楽曲に参加するなどして新たなファン層を獲得。「UИTITLƎD」がこれまで以上に注目を集めることは間違いないだろう。相変わらずのハイペースで作品を発表し続けるメンバーに、充実の2017年について語ってもらった。
取材・文 / 金子厚武 撮影 / 相原舜
ストリングスを封印した「カルテット」劇伴
──2017年の上半期を振り返ると、劇伴を担当したドラマ「カルテット」が大きな話題を呼びましたね。
カワイヒデヒロ(B) 評判はすごくよかったですね。特に業界内の評判がめちゃめちゃよくて、「『カルテット』観てたよ」って言われることがすごく多かったです。
──そもそもはどういった形での依頼だったのでしょうか?
カワイ 前に劇伴を担当した「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」(2015年に放送されたTBSドラマ)の音楽制作にも関わってた人からの依頼だったんですけど、打ち合わせのときに「特殊なドラマだから、音楽も特別な感じにしたくて、普通の劇伴作家じゃない人がよかった」って言われました。
岸本亮(Key) コメディの要素もあればサスペンスっぽい要素もあって、今までにないようなドラマだからこそ、音楽でも新しい風を入れてほしいって。
──以前演出の土井裕泰さんとお話ししたときに「弦楽四重奏が主役のドラマだからすでにメインの音楽があるわけで、そこにさらに劇伴を書く難しさはあったと思う」とおっしゃってました。
岸本 ストリングスが題材で演奏シーンが出てくるからこそ、劇伴のほうはあえてストリングスは封印するっていう制約ありきでやったんです。
カワイ ストリングスが使えないのはなかなか手痛いですよね(笑)。でも逆にその制約があったから、普段あんまり使わない木管楽器やストリングス以外の楽器をふんだんに使って曲が作れて、自分的には収穫が大きかったです。
井上司(Dr) 「ヤメゴク」の前まではそもそも「ストリングスをバンドに入れる」っていう発想がなかったんですけど、劇伴をやったことで「これはバンドでやってもアリだな」って思って。それが「BUTTERFLY」(2015年リリースの4thフルアルバム)につながったんです。今回も「カルテット」をやったことで今までと違う感じが出せるようになったし、劇伴をやるとバンドの可能性が広がるんですよね。
岸本 「カルテット」の劇伴の制作期間は「FRAGILE」(2017年1月発売の5thアルバム)と近くて。「FRAGILE」はエレクトロニカが1つのコンセプトだったのに対して、「カルテット」ではスタッフさんから「アコースティックサウンドにプラスして新しい側面を打ち出してください」っていう要望があったんです。
カワイ シンセはほとんど使わなかったもんね。
──ちょうど「FRAGILE」との住み分けができたと。
岸本 そうですね。「Theme from quartet」(「カルテット」挿入歌)みたいなラテンジャズもやってみたら意外とハマって、ライブでもキラーチューンになったんで、挑戦する機会をもらえてよかったなって。あと今回のアルバムに「Real, Fake」っていう曲が入ってるんですけど、あれは「FRAGILE」と同時期に作ってた曲なんです。それをTBSの選曲家の人に聴いてもらったら「こんな感じの曲が欲しい」って言われて、それで作ったのが「カルテット」のサントラに入ってる「Truth, Lies」っていう曲で。「Real, Fake」と双子みたいな関係ですね。
“カルテット”を集約した新録版「Theme from quartet」
──「Theme from quartet」は今回のアルバムに新録音源で収録されていますね。
カワイ もともとラテンジャズっていうテーマはあったんですけど、そこに寄せ過ぎても合わない気がして、もう少しロックに寄せた感じにしました。最後にギターをリードっぽく弾いてるところは、ギタリストに「(カルロス・)サンタナっぽい音で」って言ったり(笑)。パーカッションの人はサンタナと共演したことがある方だったり、ブラスの人の中にはキューバの人もいたり、その時点でなんとなくラテン要素はそろってたんです(笑)。
岸本 前作アルバムのリリースツアーのときがちょうど「カルテット」の放送時期だったので「ライブでもやんなきゃ」って思って、ツアーファイナルでカルテットを交えて「Theme from quartet」を演奏したら、そのバージョンがけっこうよくて。劇伴ではあえて管楽器やギターをメインにしてたけど、実際にストリングスを入れることで自分たちのドラマ「カルテット」への思いがここに集約された感じがして、これはパッケージ化したいなって。スペシャル版のオンエアがあるときには、ぜひこれをかけてほしいですね(笑)。
カワイ スピンオフとかね(笑)。
──メインの4人ではなく、ちょっとだけ出た大森靖子さんとかが主役だったら面白いかも(笑)。ちなみに大森さんとは去年からコラボレーションが続いていたわけですが、ドラマでも一緒になったのは偶然なんですよね?
カワイ たまたまですね(笑)。「バズリズム」の収録で共演したときに「どうして出ることになったの?」って聞いたら、プロデューサーか誰かと知り合いで、たまたま頼まれたって言ってました。
──大森さんとは昨年7月発売の「ROCK IN DISNEY ~Season of the Beat」(ディズニーの名曲をロックサウンドでカバーするコンピレーションCD)収録の「不思議の国のアリス」でのコラボに始まり、今年3月には大森さんの「ドグマ・マグマ」(大森靖子の最新アルバム「kitixxxgaia」収録曲)にフォックスが編曲で参加しました。
岸本 「ドグマ・マグマ」は最初に大森さんからメロディとピアノの伴奏が入ったトラックが送られてきて、それをもとにいろいろ肉付けしていった感じです。「Aメロはこんな感じ」「サビはこんな感じ」っていう大森さんの中のはっきりしたイメージもあったんですけど、逆にけっこうざっくりした部分もあって。サビのメロディは特殊だから「どうしようかな」って思ったんですけど、面白い形になったなと。
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なんで俺らこんな出したがるんだろうね?
- fox capture plan「UИTITLƎD」
- 2017年10月4日発売 / Playwright
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[CD]
2500円 / PWT-038
- 収録曲
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- Cross View
- 行雲流水
- 繰り返される時空のワルツは千の夢を語り
- Theme from quartet
- No End
- seafrost
- PLASTIC JAM
- UИTITLƎD SCENES
- Viva La Vida
- Real, Fake
- Pain
ツアー情報
- fox capture plan "UИTITLƎD Tour"
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- 2017年10月29日(日)沖縄県 Output
- 2017年11月3日(金・祝)中国 西安市
- 2017年11月4日(土)中国 成都市
- 2017年11月5日(日)中国 重慶市
- 2017年11月7日(火)中国 武漢市
- 2017年11月8日(水)中国 杭州市
- 2017年11月9日(木)中国 上海市
- 2017年11月10日(金)中国 北京市
- 2017年11月15日(水)神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA
- 2017年11月18日(土)北海道 DUCE
- 2017年11月19日(日)宮城県 HooK SENDAI
- 2017年11月23日(木・祝)福岡県 INSA
- 2017年12月1日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2017年12月3日(日)愛知県 伏見JAMMIN'
- 2018年2月2日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
- fox capture plan(フォックスキャプチャープラン)
- 岸本亮(Key / JABBERLOOP)、カワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)からなるトリオ編成のバンド。それぞれ違った個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年に結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとしたサウンドで話題を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで発売したCD-R「Sampleboard」はフロアデイリーチャート1位を記録する。2013年5月には初のフルアルバム「trinity」、2013年12月に2ndアルバム「BRIDGE」をリリースした。2015年は「fox capture planとして3枚のアルバムをリリースする」と宣言し、4月にミニアルバム+ライブDVD作品「UNDERGROUND」、7月にカバーアルバム「COVERMIND」、11月にオリジナルアルバム「BUTTERFLY」を発表。2016年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演を果たした。2017年1月に5thアルバム「FRAGILE」をリリース後、TBS系ドラマ「カルテット」やNHKドラマ「この声をきみに」の劇伴を担当。同年10月に6thアルバム「UИTITLƎD」を発売した。