音楽ナタリー Power Push - fox capture plan

「年内にアルバム3枚」有言実行した彼らの最高傑作

菊地成孔さんはジャズとの向き合い方が僕と近い

──4曲目の「混沌と創造の幾何学」は一転してアバンギャルドな曲調で、菊地成孔さんがソプラノサックスで参加されていますね。

岸本亮(Key)

岸本 最初に出した「FLEXIBLE」って作品が特にそうだったんですけど、結成当初からバンドのコンセプトを「コンテンポラリージャズとポストロックの融合」って言ってたんですよね。「混沌と創造の幾何学」はそこから1歩踏み込んだものというか、ピアノもダビングして重ねまくって編集して、そこにジャズミュージシャンの筆頭みたいな方に参加してもらって、即興で長いソロを吹いてもらうって、聴いたことないなって。

──菊地さんはバンドにとってどんな存在だと言えますか?

岸本 ジャズっていうジャンルとの向き合い方が僕らとけっこう近いと思うんです。菊地さんのインタビューを読むと、ジャズがクラシック化して、崇高な、わかる人にしかわからない音楽になりつつあるのをすごい懸念してるんですよね。雑誌「JAZZ JAPAN」の編集長とかと話すと、昔はもうちょっと市民権を得た音楽で、下北沢に行けばライブハウスに人がいっぱい集まってて、ロックシーンとももうちょっと親和性があり、サブカルチャーの一部だったという話になって。だから、菊地さんは昔のジャズの立ち位置を今の時代にも残してる、数少ない人だなって。

カワイ 定石のジャズをやる人が多い中で、とがった存在ですよね。

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岸本 dCprGでやってる音楽にも近さを感じますし、常に最先端を求めていく感じとか、大衆に近いところのイメージで活動をされてるのかなって思っていて。そういうところにも影響を受けているので、今回思い切ってオファーしてみたんです。そうしたら僕らのことも知っていただいていて、快く引き受けてくださいました。レコーディングは1時間半ぐらいで終わったんですけど、ソロに関しては「ここからここに入れてください」っていう尺よりも長く吹かれて、でもそれがすごくよかったのでそのまま使わせてもらいました。演奏してるときのテンションはすごかったですね。何か降りてきてる感じがして、やっぱりレジェンドだなって(笑)。

初作曲・井上司のドラム論

──6曲目の「inchoate」は井上さんが初めて作曲されていますね。

井上 バンドでジャムって曲を作ることはありましたけど、もとの形を自分で作るっていうのは今回が完全に初めてです。去年くらいから作りたい欲求はあったんですけど、マイペースに考えていて、今回やっとできたって感じですね。

岸本 ドラムのパートを最後に考えたらしいです。

井上 ドラマーだからドラムのフレーズから曲を作ったって思う人も多いと思うんですけど、もともとすごい好きで聴いてる曲にもドラムが入ってなかったりするので。

岸本 僕の曲とカワイくんの曲も色が違うし、そこにカバーも入ってて、さらに別の人(井上)が作った曲が入ってても、アルバムとしては不思議なまとまりがあるんですよね。同じ音楽をやってるメンバーが作る曲なんで、もともと心配はそんなにしてなかったんですけど。

──曲自体はどんなイメージで作ったんですか?

井上司(Dr)

井上 もともと音楽アプリとかをいじくり回して遊んでて、その中でできたのがメインのメロディなので、何かを聴いて「こういう感じを作りたい」っていうよりは「できちゃった」って感じです(笑)。ドラムに関しては、いつも以上にレコーディング当日にフレーズをいじったり、いろいろ考えながら録りましたね。

──ぜひ井上さんのドラム論もお伺いしたいのですが、現代ジャズの流れだとクリス・デイヴ以降のドラマーが注目されていて、打ち込みと生演奏の関係性が改めて議論されていますよね。そのあたり、何か井上さんが意識していることがあれば教えてください。

井上 そんなに「こうしよう」と頭で考えてドラムを叩く人間ではないんですけど、J・ディラの作品とかはずっと愛聴してて、そしたらクリス・デイヴみたいな人力でブレイクビーツをやる人が出てきて、すげえなって思いました。でも、あれを自分のドラムでやりたいかっていうとまたちょっと違って、もしクリス・デイヴみたいな音楽をやるんだったら、自分は打ち込みでやりたい(笑)。

──なるほど(笑)。

井上 最近だとマーク・ジュリアナも大好きですけど、あの人のインタビューを読んだら、ドラムを始めたきっかけがNirvanaのデイヴ・グロールらしくて、それが意外すぎて。でも、自分もデイヴがドラムに触れたきっかけなんで、それでさらに興味を持ちました。

カワイ ツカッちゃんのドラムって、「この人が好きなんだろうな」っていうのをあんまり感じさせないよね。

井上 自分が好きな人がいたら、その人に近いことはやりたくないっていうか、好きだって思った時点で、それはその人がやってるからカッコいいわけで、俺が同じことをやってもしょうがないと思うから、違うことをやりたいんですよね。

岸本 おー、名言やな!

井上 まあ、好きな人からの影響は自然と何かしら入ってると思うけど、それを違う形にできればいいなって思いますね。

──5曲目の「...with wind」と8曲目の「Kaleidoscope」はカワイさんの作曲ですが、過去作の尺の長いプログレッシヴな曲に比べると、今回の曲はわりとコンパクトですよね。

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カワイ 尺に関してはあんまり意識してなくて、自然とこれくらいがちょうどいいかなって思いました。「...with wind」はかなり初期に作った曲で、当時の僕らにはこれは難しくて弾けなかったんですけど、いつかはやろうと思ってて。

井上 「4枚目くらいに入れよう」って言ってたよね(笑)。

カワイ 最近は変拍子の曲が少なかったし、そういう意味でもいいかなって。「Kaleidoscope」は珍しくリフから作った曲で、リフとピアノのアルペジオを思いついて、ミニマルっぽくずっとループさせて。後半の展開は自分で聴いてて飽きてきた頃に、「ここで違う展開にしたいな」って変えていく感じでした。

ニューアルバム「BUTTERFLY」 / 2015年11月4日発売 / 2376円 / Playwright / PWT-018
ニューアルバム「BUTTERFLY」
収録曲
  1. the beginning of ....
  2. the last story of the myth
  3. Butterfly Effect
  4. 混沌と創造の幾何学
  5. ...with wind
  6. inchoate
  7. Plug In Baby(※オリジナル:Muse)
  8. Kaleidoscope
  9. In the darkness
  10. Christmas comes to our place
  11. Supersonic
fox capture plan "LIKE A BUTTERFLY TOUR"
  • 2015年11月13日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2015年11月28日(土)福岡県 Early Believers
  • 2015年11月29日(日)広島県 HIROSHIMA 4.14
  • 2015年12月1日(火)京都府 METRO
  • 2015年12月2日(水)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2015年12月4日(金)大阪府 梅田ZEELA
  • 2015年12月5日(土)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2015年12月6日(日)静岡県 MESCALIN DRIVE
  • 2015年12月9日(水)宮城県 enn 2nd
  • 2015年12月11日(金)東京都 LIQUIDROOM
  • 2015年12月16日(水)長野県 ALECX
  • 2015年12月17日(木)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2015年12月18日(金)福井県 福井CHOP
  • 2015年12月19日(土)石川県 Manier JAZZPRESSO
fox capture plan(フォックスキャプチャープラン)
fox capture plan

岸本亮(Key / JABBERLOOP)、カワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)というトリオ編成によるバンド。それぞれ違った個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年に結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドは、数回のライブからじわじわと話題を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで発売したCD-R「Sampleboard」がノープロモーションにも関わらずフロアデイリーチャート1位を記録。2013年5月には初のフルアルバム「trinity」、2013年12月に2ndアルバム「BRIDGE」をリリースした。2015年はfox capture planとして3枚のアルバムをリリースすると宣言し、4月にミニアルバム+ライブDVD作品「UNDERGROUND」、7月にカバーアルバム「COVERMIND」、11月にオリジナルアルバム「BUTTERFLY」を発表した。

撮影協力:The AIRSTREAM GARDEN
東京都渋谷区神宮前4-13-8
OPEN 11:00 / CLOSE 18:00