音楽ナタリー Power Push - fox capture plan

「年内にアルバム3枚」有言実行した彼らの最高傑作

今年1月に「年内で3枚のアルバムを発表する」と宣言したfox capture planが、「UNDERGROUND」「COVERMIND」に続く今年3枚目の作品にして、通算4枚目のフルアルバム「BUTTERFLY」を完成させた。ストリングスカルテットを加えた華やかな曲から、菊地成孔をゲストに迎えたアバンギャルドな曲、ドラマーの井上司が初めて作曲した曲、おなじみの洋楽カバー、さらにはクリスマスソングに至るまで多彩な楽曲が収録され、これまで以上に攻めの姿勢がはっきりと表れた、文句なしの最高傑作だと言っていいだろう。

2012年のデビューから早3年。耳なじみのいいメロディを大切にしながら、常に変革を続け、リスナーの期待をいい意味で裏切り続けてきた現代版ジャズロックバンドの最初の到達点について、メンバー3人にその手応えを聞いた。

取材・文 / 金子厚武 撮影 / 関口佳代

2015年は濃密な日々でした

──2015年は年明けの「年内にアルバムを3枚リリースする」という宣言から始まり(参照:攻めるfox capture plan、年内にアルバム3枚&リキッド公演)、その間にはTBS系ドラマ「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」の劇伴を担当して(参照:fox capture plan、大島優子ドラマ「ヤメゴク」劇伴担当&タワレコ1日店長)、さらにはツアーもありました。ここまで相当忙しかったんじゃないですか?

fox capture plan

岸本亮(Key) 家にいる時間はいつもより短かった気がしますね(笑)。常に何かやりながら考えるみたいな、劇伴の曲をレコーディングしながらカバーアルバム(「COVERMIND」)のことを考えたり、ずっと何かを並行して作っているような、濃密な日々でしたね。

井上司(Dr) ちょうど1年前が「WALL」のリリースツアーのファイナルで、UNITが何度目かで初めてソールドアウトしたんですけど、もう1年以上前な気がする(笑)。それぐらい内容の濃い1年を過ごしてきたっていうことでしょうね。

カワイヒデヒロ(B) 今年は頭からけっこう動いてて……休みとかあったかな?(笑) とにかく曲はいっぱい作りましたね。

——1年でこんなに曲を作ったことはないんじゃないですか?

カワイ 個人ではいつも曲を作ってるんですけど、バンドとしては一番多いと思います。

岸本 年内にもう1つ別のオファーが来てるんですけどね(笑)。

──曲作りの日々はもう少し続くと(笑)。先ほど岸本さんから「常に何かやりながら考える」という話がありましたが、ニューアルバム「BUTTERFLY」に関してもそうやって徐々に構想が固まっていったんでしょうか?

岸本 ストリングスを入れて華やかにしたいっていうのは2013年くらいからカワイくんが言ってたんですけど、去年はあえてロックっぽいニュアンスの曲をやりたいと思って、それで「WALL」を出したんです。なので、ストリングスの構想は1回見送って、今年に持ってきたんですけど、それが結果的にはよかったと思います。ただ、めっちゃ考えてここに照準を合わせてきたわけじゃなくて、曲作りまくって、出しまくって、ライブもやりまくって、徐々に成長してきたバンドなのかなって。人前に出さずにじっくり考えるんじゃなく、出しながらいろいろ試していくみたいなところがありますね。

──「UNDERGROUND」のインタビュー(参照:fox capture plan「UNDERGROUND」インタビュー)のときに、「今年はディスコやファンクの流れが来てるから、次作はそういうエッセンスが入ってくるかも」っていう話をしましたよね。

岸本 聴くぶんにはそういうのをけっこう聴いてたんですけど……。

カワイ そんなにブラック(ミュージック)要素ないよね(笑)。

岸本亮(Key)

岸本 リード曲の「Butterfly Effect」とか「Supersonic」は、ドラムンベースとか今どきのロック寄りですね。[Alexandros]とかゲスの極み乙女。とかいろいろなアーティストの曲を聴いて、今はダンスロックというよりも、よりファストなロックが求められてる感じがして、そういうのとうちらがこれまでやってきたドラムンベースは親和性があるなって思ったのでシンクロさせた感じです。カワイくんは「Butterfly Effect」を今年の頭ぐらいから書いてたと思うんですけど、今の時代にすごくマッチする曲だなって。

カワイ 時代性は特に意識してなかったんですけど、年内に3枚出すっていう中で、3枚目にはストリングスを入れたいねって話をチョロッとしてたので、そういう曲を書いてみようと思って。ピアノトリオだけでも演奏は成り立つけど、ストリングスが入ることでさらに広がりが出るようなアレンジというか。

ピアノトリオと弦楽4重奏

──アルバムの頭3曲はがっつりとストリングスが入っていて、アルバムのムードを決定付けていますよね。

カワイヒデヒロ(B)

カワイ 「ピアノトリオなのにストリングスから始まるんかい」っていう(笑)、そういう裏切りもありですよね。

──しかも、1曲目のタイトルが「the beginning of ....」で、過去2作に収録されている「the beginning of the myth」シリーズのタイトルに倣って「ep.III」と来るかと思いきや、次の曲が「the last story of the myth」っていう、これもある種の裏切りですよね。

岸本 組曲の最終楽章って感じですね。これまでの2曲はどっちもアルバムの最後の曲で、もしかしたら今回もカワイくんは最後の曲のつもりで書いてきたのかもしれないけど、今回は頭にしようって僕が言って。そうすることで、「WALL」から「BUTTERFLY」へのストーリー性が感じられると思ったんです。

カワイ なので、2曲目で1回ストーリーを区切ってる感じはあるかも。

──確かに、3曲目の「Butterfly Effect」から改めて始まる感じはありますね。ストリングスのアレンジに関してはどんなことがポイントでしたか?

カワイ ピアノがメロを弾くので、歌モノのポップスに入ってる弦のつもりで書いてます。

岸本 ピアノトリオと弦楽4重奏でこういう形って、わりと珍しいと思うんですよ。ピアノがメロを弾いてストリングスがバッキングをやるって、曲としては王道路線だと思うんですけど、手法としては実は斬新で、よくできた曲ですよね(笑)。

──「Butterfly Effect」はドラムもものすごいことになってますね。プレイもそうだし、ミックスの感じも面白い。

井上 デモのときからAメロはドラムンベースで、手の動き的に「その順番でそれやる?」みたいな、変なふうにハットが入ってたりします。ミックスに関してはエンジニアの上原(翔)さんが勝手にやってくるんですけど(笑)、それを面白がってる感じですね。

──フレーズを作るときは、何かを参照したりするんですか?

井上 いや、レコーディング当日とか、そのちょっと前に音を合わせたときに、自然とそうなるというか……。

岸本 いい意味で出たとこ勝負っすよね。そのへんジャズっぽいなって。

カワイ 「心意気がジャズ」みたいなね(笑)。

ニューアルバム「BUTTERFLY」 / 2015年11月4日発売 / 2376円 / Playwright / PWT-018
ニューアルバム「BUTTERFLY」
収録曲
  1. the beginning of ....
  2. the last story of the myth
  3. Butterfly Effect
  4. 混沌と創造の幾何学
  5. ...with wind
  6. inchoate
  7. Plug In Baby(※オリジナル:Muse)
  8. Kaleidoscope
  9. In the darkness
  10. Christmas comes to our place
  11. Supersonic
fox capture plan "LIKE A BUTTERFLY TOUR"
  • 2015年11月13日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2015年11月28日(土)福岡県 Early Believers
  • 2015年11月29日(日)広島県 HIROSHIMA 4.14
  • 2015年12月1日(火)京都府 METRO
  • 2015年12月2日(水)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2015年12月4日(金)大阪府 梅田ZEELA
  • 2015年12月5日(土)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2015年12月6日(日)静岡県 MESCALIN DRIVE
  • 2015年12月9日(水)宮城県 enn 2nd
  • 2015年12月11日(金)東京都 LIQUIDROOM
  • 2015年12月16日(水)長野県 ALECX
  • 2015年12月17日(木)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2015年12月18日(金)福井県 福井CHOP
  • 2015年12月19日(土)石川県 Manier JAZZPRESSO
fox capture plan(フォックスキャプチャープラン)
fox capture plan

岸本亮(Key / JABBERLOOP)、カワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)というトリオ編成によるバンド。それぞれ違った個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年に結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドは、数回のライブからじわじわと話題を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで発売したCD-R「Sampleboard」がノープロモーションにも関わらずフロアデイリーチャート1位を記録。2013年5月には初のフルアルバム「trinity」、2013年12月に2ndアルバム「BRIDGE」をリリースした。2015年はfox capture planとして3枚のアルバムをリリースすると宣言し、4月にミニアルバム+ライブDVD作品「UNDERGROUND」、7月にカバーアルバム「COVERMIND」、11月にオリジナルアルバム「BUTTERFLY」を発表した。

撮影協力:The AIRSTREAM GARDEN
東京都渋谷区神宮前4-13-8
OPEN 11:00 / CLOSE 18:00