より多くの人がいるところにアプローチしていきたい

──では、今回ライブDVDも付いているので、ライブについても聞かせてください。「WALL」では意図的にダンスロック寄りのアプローチをしたわけですが、それによって何かライブにおける変化がありましたか？

井上　若いお客さんは増えましたね。

カワイ　ヴィレヴァン（ヴィレッジヴァンガード）好きの高校生みたいな人たちが注目してくれたのかなって。

岸本　「『衝動の粒子』をヴィレヴァンで聴いて知りました」みたいな人は前からいたんですけど、「疾走する閃光」に対するリアクションはそれを上回るものがありましたね。あと最近の変化で言うと、俺のMCがイケイケになりだしてる（笑）。

カワイ　DVDではカットしちゃってるけどね（笑）。

岸本　「WALL」は勢いのある曲が多かったんで、僕のMCも勢いづいて……そのへんは実際にライブに来ないと観れないですよっていう（笑）。

──急に宣伝になりましたね（笑）。去年は「SYNCHRONICITY」とか「MINAMI WHEEL」とか、歌モノも含めたいろんなバンドが出るイベントへの出演も多かったと思いますが、そういう場所での手応えはいかがでしたか？

カワイ　インスト好きはもちろんですけど、歌モノが好きな人も聴いてくれてる感じはありましたね。

井上　「ジャズも変拍子もインストも聴かないけど、フォックスは好きです」って言ってくれる人がいたり。

──それってやっぱりフォックスのメロディやライブのパフォーマンスに惹かれてるんでしょうね。

岸本　この前の「Sing Your Song!」の対談（参照：ライブイベント「Village Vangurd presents Sing Your Song! 2015」座談会）でも言いましたけど、ロックバンドのギターボーカルみたいなイメージでピアノを弾いてるっていうのはあるんですよね。左手がギターの伴奏で、右手がボーカルのメロディでっていう。だからこそ、「SYNCHRONICITY」とか「MINAMI WHEEL」みたいなイベントにはどんどん入り込んでいきたいです。やっぱり、玄人目線の人に認められたいっていうよりも、より多くの人がいるところにどんどんアプローチしていきたいんですよね。玄人からは「あいつら大衆路線に行きやがって」って言われるかもしれないですけど、そこはあんまり気にせず。

カワイ　出る場所とかが多少変わっても、やってること自体は変わってないですからね。

パイオニアと呼ばれるような存在に

──井上さんはライブに関して意識していることはありますか？

井上　あんまりライブ中の記憶ないんですよね……。

カワイ　それだけ入り込んでるんだ（笑）。

井上　CDだけ聴いてた人がライブに来ると、けっこうイメージ違うんじゃないかと思います。叫びながら叩いてたりとかするし。

岸本　司くんのドラムの熱量はCDには収まりきってないと思うから、そこはライブじゃないとね。

カワイ　DVDにも収まりきってないよね。

岸本　うん、想像以上だと思いますよ。

井上　俺らのエンジニアが、フォックスのライブ観て「つかっちゃん、スネアに爆竹かなんか入れてるの？」って言ってました（笑）。

──（笑）。カワイさんはいかがですか？ ライブについて。

カワイ　なんだろう……あんまり何かを考えてはやってないですね。

岸本　このガツガツしてない人間性がベースにもすごい出てると思いますね。最近よく思うんですけど、もっとブリブリな、前に出たい人だったら、このバンド成立してなかったと思うんですよ。俺も司くんもガンガン前に行くんで、バランスがよかったなって。

──前に出たいと思うことってないですか？

カワイ　あんまりないですね。そう思うんだったらギターとかやればいいと思うし。楽器の役割の範囲でやることをやるみたいな。

井上　ステージの並びもいいんですよね。昔ながらのピアノトリオって、ドラムじゃなくてベースがランニングベースで曲を支える役目だから、ステージでもベースが真ん中にいるんです。僕らはその見た目にならって同じ立ち位置にしただけで、音楽的には全然別モノのはずなんですけど、実は楽器の役割的にも王道のジャズを受け継いでたんだなって。

──では最後に改めて、2015年の展望を話していただけますでしょうか？

岸本　来年になって2015年を振り返ったときに、「去年は攻めたな」ってなればいいですね（笑）。「去年は完璧やった」って思えるところまで状況を持っていきたい。

カワイ　2016年にそう思うために、今年がんばるみたいな（笑）。

井上　今年はあっという間に過ぎそうだなあ（笑）。

岸本　「『UNDERGROUND』から始まって、結果的にオーバーグラウンド行ったなあ」ってなったら面白いですよね。メンバーそれぞれのやりたい音楽性とか持ち味とか人間性と、今の時代性とをうまくシンクロさせることができれば、パイオニアと呼ばれるような存在になれるんじゃないかと思います。