ナタリー PowerPush - fox capture plan

ピアノトリオの“現代版ジャズロック”がリスナーを射止める理由

「そんなに売れてるの?」みたいな(笑)

──そうして2012年に発表したタワーレコード新宿店限定シングル「Sampleboard」と全国のタワレコ限定ミニアルバム「FLEXIBLE」。これがすごく売れて今年5月に1stアルバム「trinity」をリリースしました。ナタリーのニュースでも盛り上がりましたが(参照:新感覚ピアノトリオ・fox capture planが初フルアルバム)、実際リスナー受けがめちゃくちゃよかったわけですね。

左からカワイヒデヒロ(B)、岸本亮(Key)、井上司(Dr)。

岸本 はい。予想以上でした。

カワイ 「そんなに売れてるの?」みたいな(笑)。新宿店限定のCDを出したときも超弱気に「100枚売れたらいいよね」なんて言ってたのに。

──fox capture planの音源はなぜ多くの人に刺さったんだろうと思いますか?

井上 いいタイミングだったんですかね。

カワイ うん、たぶんこの2013年だからとか。今の音楽ってあるじゃないですか。

岸本 5年前に今の自分たちの音楽をやってウケてたかって考えると、ちょっと早すぎたかもしれないですね。

カワイ レジェンドぶってる!(笑)

岸本 時代がついてこれてないっていう。ははは(笑)。

──(笑)。でも時代って確かに関係ありそうですよね。例えば口コミ、ニコニコ動画、ヴィレッジヴァンガードなどからヒット作が生まれるのは今や珍しいことではありません。

岸本 そうですね。下北らへんのインディーズシーンだったり、秋葉原系のシーンだったり、サブカルチャー色の少し強いアンチポップな人たちにまんべんなく刺さったのかもしれないですね。

常に次の一手を考えてる

──作品発表のペースもすごいですよね。最初はもっとラフなプロジェクトだったものが、あまりの状況のよさを見てリリースペースが上がったのかな、なんて。

岸本亮(Key)

岸本 2ndに関しては完全にそうですよ(笑)。なんかもう……ね。ちょっとプレッシャーっすよ(笑)。

──でも毎作ちゃんと良粒がそろっていてすごいと思います。

岸本 実は最初から、新宿店限定とタワーレコード限定ミニと1stフル、その3ステップでいこうってディレクターと一緒にいろいろ考えてたんです。それに向けて曲数も用意して、この曲はこれ、この曲はこれ、この曲はこれって振り分けて。出してから世間の反応を見るんじゃなくて、あらかじめプログラムを組んでおくという。

井上 コンセプトを貫くみたいな意味でもね。

岸本 だからこそ今のスピードでリリースできてるんです。

──なるほど、そうなんですね。確かに、出してから「よし、もっと作ろう」では追いつかないし、クオリティも保てないですよね。

岸本 「これウケたから次もこれでいこう」「これあんまりウケへんかったからやめとこう」じゃなくて、常に次の一手を考えてるんです。

──策略家ですね、岸本さん。

カワイ 昔は3年後ぐらいの構想も考えてたね。

岸本 そうそう、ちょうど今くらいを想像して。

カワイ なんか計算しながら紙に書いてたよね(笑)。

岸本 「シングルみたいなの出してからフルアルバム出して、同じ年にフルアルバムもう1枚出そうか」「それちょっと早くない?」とかしゃべってましたね。それが現実になってるって、わからへんもんですね(笑)。

──じゃあ反響が予想以上だったとは言え、このバンドにはそのくらい労力を注ぎ込んで、何枚も盤を作ろうと当初から思っていたと。

岸本 そうですね。最初の段階で先を見据えてたからこそうまく来れてるとは思います。でもこれからっすね。がんばりたいと思います。

カワイ あと僕ら人数少ないっていうのもあるんですけど、スタジオ作業がけっこう早いんですよ。だからペース早くいけるのかなって。

岸本 都合のいいことを言うと、まあジャズなんで(笑)。パッと瞬間的にできたものを録ってそのときのノリで「いいやん」って思えば。レコーディングに関してはいい意味で理想を作り過ぎてないから早いんでしょうね。

今のバンドの勢いをパッケージに

──今回の「BRIDGE」はどんな作品になったと言えますか?

岸本 前作の「trinity」はイントロとアウトロがあったりしてストーリー性があったんですけど、今回は今の自分たちの……自分たちも付いていけないぐらいのバンドの勢いをパッケージしたみたいなところがあります。インタールードが3つ入ってるのも、アルバムとしての流れを作りやすくするためでもありますし。

カワイ 意味合い的にも「BRIDGE」は橋渡しということで、これの次、3枚目のアルバムへの布石というか。

岸本 そうですね。あと、アルバム全体を通して聴くとミディアムテンポの曲がわりと多めなんですけど、ロックっぽかったり、ヒップホップっぽかったり、ファンクっぽかったり、トリップホップっぽかったりして、同じミディアムテンポでも違いを感じてもらえると思います。特に1曲目、2曲目はなかなかキラーチューンだと思いますよ。

井上司(Dr)

井上 このアルバムは自分のカウントとフィルから始まってるんです。1曲目の「Attack on fox」はレコーディングもロックな気持ちでやれたし、できてから聴いてもfoxの中で一番ロックを感じる曲ですね。それが頭だから、再生してすげーテンション上がります。

──それから、今作ではMassive Attack「Teardrop」をカバーしています。これまでにもビョークやOasisのカバーをしていますが、この選曲やアレンジはどのように決めてるんですか?

岸本 俺とかが提案して、ディレクター含めて相談して決めてますね。カバーは、リスナーとの距離を縮めるために入れてるんです。1990年代の曲が多いんですけど、30(歳)前の自分たちが若い頃に聴いてたOasisなりビョークなりMassive Attackなりのカバーをやることで、同世代の人に刺さってくれて、何か引っかかりになるというか。「あ、Massive Attackのカバー入ってるやん」「アルバム、ほかの曲もいいやん!」みたいな入口になってくれたらうれしいし、逆に若い人には「俺らはこういうものを聴いて影響を受けて音楽やってるんですよ」って提示する1つの方法になればと。メロディアスで素晴らしい90年代の曲がたくさんあるんで、微力ですけど、それを自分たちが後世に伝えていきたいなと思います。

ニューアルバム「BRIDGE」2013年12月4日発売 / 2000円 / Playwright / PWT-007
収録曲
  1. Attack on fox
  2. RISING
  3. Bridge #1
  4. Far out
  5. 閉ざされた青い空間
  6. Bridge #2
  7. Pictures
  8. 3rd Down(Alternate Take)
  9. Bridge #3
  10. Teardrop(Massive Attack)
「BRIDGE」リリース記念ライブ&サイン会

2013年12月26日(木)19:00~ タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO
参加方法はこちら

「BRIDGE」レコ発ワンマンライブ

2014年3月26日(水)東京都 代官山UNIT
※詳細後日発表

LIVE INFORMATION
TRIO RIOT

2013年12月16日(月)神奈川県 powers2元住吉
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カルメラ presents 東京ギンギンBATTLE

2013年12月20日(金)東京都 新代田FEVER
詳細はこちら

TRI4TH×fox capture plan tour

2014年1月17日(金)大阪府 CONPASS
2014年1月18日(土)愛知県 CLUB SARU

bohemianvoodoo & fox capture plan presents "color & monochrome"

2014年2月23日(日)東京都 a-bridge

fox capture plan(ふぉっくすきゃぷちゃーぷらん)
fox capture plan

岸本亮(Key / JABBERLOOP)、カワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)というトリオ編成によるバンド。それぞれ違った個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年に結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドは、数回のライブのみからじわじわと評判を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで発売したCDR「Sampleboard」がまったくのノープロモーションにも関わらずフロアデイリーチャート1位の売り上げを記録。同年10月にタワーレコード限定でミニアルバム「FLEXIBLE」、2013年5月には初のフルアルバム「trinity」をリリース。ロングヒットを記録する中、2013年12月に2ndアルバム「BRIDGE」を発表した。