CD世代の思い

──カマタさんとオグラさんは「midori」の収録曲の中で特に好きな曲はどれですか？

オグラ　2曲挙げてもいいですか？ 僕は「80%」と「wave」です。「80%」はドラムから始まるのですが、ドラムから始まる曲が今まであまりなかったのでうれしくて。歌詞は寂しい感じなのに、曲調はポップで爽快感もあって、曲としてもすごく好きです。

──曲調がポップで歌詞が切ないというのはFOMAREの真骨頂でもありますが、そういった曲でドラマーとして意識していることはありますか？

オグラ　それこそさっき言った、歌を聴かせること。「80%」なんかは特に、ドラムをバンバン鳴らしたら歌がつぶれちゃうので。この曲はまだライブで演奏していないので、ライブでやるとどんなふうになるのかも楽しみです。

──もう1曲好きな曲として挙げたのは「wave」。直球のポップパンクですね。

オグラ　はい。これはもう自分のルーツなので。僕はトラヴィス・バーカーが大好きなのですが、この曲は思いっきりトラヴィス・バーカーのドラムに寄せました。パクリだと思われるくらいかも（笑）。

カマタ　僕は新曲ではないですが、「雪あかり」。自分たちの曲ですけど「こんなにいい曲あるんだ」と思うくらい、めちゃくちゃいい曲だと思っています。メロも歌詞もアレンジも全部、めちゃくちゃクオリティが高い！ ただ……この曲は去年末に配信でリリースしたのですが、正直、あまり聴かれなくて。アルバムの中に入れたらどうなるのかというのも楽しみです。

アマダ　これから冬も来るしね。

カマタ　そう。これから冬も来るので、ぜひ聴いてもらいたいです。あと「優しさでありますように」も聴き応えのある曲になったなと思っています。シンガロングもあるし、これからかなりライブでやっていく存在になるんだろうという予感がしています。歌詞で好きなのは「CDケース」。泣いちゃいます。

アマダ　わあ、うれしいなあ。

カマタ　自分たちは“ラストCD世代”なのかなと思っていて。これはアマダがCDの気持ちになって歌詞を書いた曲なのですが、自分も引っ越すタイミングでCDを実家に置いてきちゃったので、自分が置いてきたCDたちが泣いているのかなと思うと沁みます。

──TikTokで人気に火がついたFOMAREがCDについて歌うというところに、意志のようなものも感じます。

アマダ　TikTokやサブスクに対してアンチな気持ちがあるわけではないですけど、やっぱりバンドを組んだときからずっと「CDを出したい」と思って活動してきたし、配信が当たり前になった今でも、CDを出すということには価値をすごく感じているんです。データと違ってCDはずっと残るものだと思うし、貸し借りした思い出とかも一緒に残りますよね。実際、この曲は返せないままになったCDを見つけて、そのときに感じた思いをもとに書いたんですよ。最近TikTokやサブスクでFOMAREを知った人が、この曲までたどり着いたときに、この曲の意味を少しでも感じてもらえたらいいなと思っています。

──FOMAREのファンの中にはCDを買ったことないリスナーも多くいるでしょうしね。

カマタ　そうなんです。でもだからこの曲の意味がどこまでわかってもらえるかわからないですけど、本当にこの曲の通りだから。

アマダ　「歪んだギター」という歌詞がありますけど、配信だとどうしても音圧の関係で軽くなってしまうからか、最近ほかのアーティストの曲を聴くと、歪んだギターがあんまり入っていない曲も多いんですよね。でも僕らはこれからも歪んだギターの音を入れていきたいし、そういうロックバンドとしての骨みたいな部分があるということも、わかってもらえたらうれしいです。

──その思いも汲んだうえで、CDで「CDケース」を聴くとよりグッときそうですね。

アマダ　そうなんですよ！ マスタリングもCD用と配信用で違っていて。CD用のマスタリングのほうがいい音なので聴いてほしいです。

下克上、狙っていきます！

──アルバムには「FORCE」（2019年6月にリリースされた1stフルアルバム）以降にリリースされた楽曲のほかに、「タバコ」「夕暮れ」というインディーズ時代から歌い続けている楽曲も収録されています。改めてこれらの楽曲と向き合うことで見えた自分たちの変化などはありますか？

アマダ　変化というよりも、当時の気持ちをキープしていたいという気持ちが大きくて。特に最後に入れた「タバコ」は、FOMAREにとって一番古い曲。この曲を作った当時は、メジャーデビューどころか、CDをリリースできるかどうかすらわからなかったけど、ただ上だけを目指してた。あのときのハングリー精神って、歳をとったり、環境が変化したりすると変わっていってしまう。それは成長とも言えるかもしれないけど、僕はあの頃の自分の気持ちを守り続けたい。素直に歌を作る感覚を忘れなくない。そう思って入れました。

カマタ　僕たちにとっては、昔の曲というよりも、昔からずっとある大事な曲という感覚です。メジャー1stアルバムの最後に「タバコ」を入れることで、最近FOMAREを好きになった人にも、この曲がFOMAREにとって大事な曲だということをわかってもらいたいという気持ちもあります。ライブでもずっとやっていますし。

──オグラさんにとっては「タバコ」や「夕暮れ」はどのような楽曲ですか？

オグラ　音源になった当初はメンバーじゃなかったですが、再録してメジャー1stアルバムにも収録してもらえて、うれしいです。「タバコ」「夕暮れ」と、「かぼちゃ列車」は特にすごく群馬を感じる曲だなというのはずっと感じています。この3曲があるからこそ、「midori」というタイトルの意味も引き立つのかなと。

アマダ　そうそう、アルバムのタイトルの「midori」というのは、群馬を連想させる言葉なんですよ。「北風」や「焼きまんじゅう」みたいな感じで、「緑」というのも群馬を連想させる単語で……って、僕らも知らなかったんですけど、ネットで調べたら出てきて（笑）。群馬は自分たちの原点だし、さっき話したような初心を忘れないように群馬を連想させる言葉をタイトルにできないかなと思って調べているときに出てきていいなと。

カマタ　これは後付けですけど、みんながよく使う連絡手段のLINEのアイコンも緑だし。アルバムタイトルはもう「midori」しかないなと思いました。

──まさにアルバムタイトルにも群馬を思わせる単語を冠するなど、地元・群馬へのリスペクトを持って活動をしているFOMAREですが、アルバム発売後の10月22日には、主催イベント「FOMARE大陸」を群馬・Gメッセ群馬で開催しますね。

カマタ　初回ですし、アットホームなフェスにしたいと思っています。6バンド出ますが、自分たちの目が届くように1ステージ制にして。

オグラ　あとは、お世話になっているブランドや地元の飲食店のコラボ出店もあります。地元を盛り上げられたらいいなと思っています。「らーめん酒場 福籠」という高崎で人気のラーメン屋が出店してくれるのでぜひ食べてもらいたいですね。あとはアーティストやスタッフ用のケータリングでは「登利平」という群馬で有名なとりめし屋さんのお弁当が出ます。

アマダ　ぐんまちゃん（群馬県のマスコットキャラクター）とFOMAREのコラボグッズも出ます！

カマタ　僕はカレー屋を出店するので、楽しみです。

──出店もずいぶん豪華ですね。競演者にはMONGOL800、G-FREAK FACTORYなどの先輩も、後輩であるTETORAもいますが、そんな中でFOMAREはどんなライブをしたいと思っていますか？

アマダ　いつも通りのライブがしたいです。別に「負けたくない」みたいな気持ちもないですし、いつものFOMAREを群馬で見せるだけという感覚です。みんなと楽しめたらと思っています。

──では最後に、この先のバンドの展望を教えてください。

アマダ　メジャーで戦いながらも、バックグラウンドにライブハウスがあるバンドで居続けるという今の形は理想的です。ただせっかく、ライブハウスじゃないところで出会ってくれた人もいるので、そういう普段ライブハウスに行かない人もライブに行きやすいような大きな会場でも年に1回くらいはワンマンをやれるバンドになっていきたいなと思っています。

オグラ　そうですね。自分たち主催のイベントもやりつつ、いろいろなイベントにも出ていけたら。

カマタ　あと最近は先輩と絡む機会が増えてきたので、先輩たちにも認めてもらえるようにということも大事にしていきないなと思っています。周りとの関係値を気にせず勝手に突き進んでいくバンドにはなりたくない。ロックバンドとして、ロックバンドとの絆を深めながら進んでいきたいと思っています。認めてもらうだけじゃなくて、もちろん逆転も狙ってるんで。下克上、狙っていきます！