音楽ナタリー PowerPush - FOLKS

フロントマン岩井郁人の目覚め

恵庭から受けるインスピレーション

──歌詞はどういうきっかけでできることが多いんですか?

岩井郁人(Vo, G)

自分の身の回りにあったこととか、自分の感じたこととか。だから「こういう歌詞が書きたい」というよりは、感情がすごく高ぶったときに、「今の気持ちを書きたい」と思って書くことが多いですね。今回「それぞれの日々へ」という曲で兄ちゃん(岩井豪利)がイントロとAメロとなんとなくのアレンジを持ってきて、「それ以上作れないから任せるわ」って俺に投げてきて(笑)。俺としてはなんとなくイメージが湧いてきたから引き受けたんです。ピコピコいってる音が電話のプッシュフォンを押す音に聞こえたりして、ちょうど身近に遠くに行ってしまった人がいるから、その人に向かって電話で励ましているような、そんな感じの曲にしようと思って書き始めたんですね。

──なるほど。

なので面白い音を録り溜めてるんです。共同生活している家の中の音をサンプリングしたり、コンロを点けるスイッチの音やワイングラスのカーンって音をサンプリングして音階を付けてみたりとか。そういう実験は大好きで、その結果できた音からインスピレーションを受けて歌詞を書くというのは変わらずにやってますね。恵庭の環境音……滝の音とか落ち葉を踏みしめる音とか雪を踏みしめる音とか、そういう音のフィールドレコーディングにも挑戦してて。それらを素材に作った曲が「Northern Lights」ってインスト曲なんです。鳴らす音にも自分たちらしさみたいなものを投影させたい。既存の楽器じゃなくて、住んでる土地の空気だったり、恵庭の雰囲気やそこに住む自分の体験とかを込めてオリジナリティのある音を作りたい。今まではそれが借り物だった気がするんですけど、そこを突き詰められないかなと思って、環境音を録ってそれを加工したり。“あのバンドのあの感じ”じゃなく、自分たちの地域に根ざした音にしていきたい。そうすることで使う音が統一されてきてる。例えばダイヤモンドダストがキラッと光る、その空気感を表すためにチェレスタみたいな音を今回はたくさん使ったし。

「ちょっと外面を気にしすぎてないか」

──インディーズで作った「Take off」は、FOLKSとしてライブをやったことがない状態で作ったんですよね。1年間ライブをやってきて、気付いたことや変わってきたことはありますか。

リズムに関して、お客さんをノらせるためにはどういうリズムがいいのかっていうのがだいぶ固まってきましたね。個人的な歌になってきたのはライブも関係してて。メンバーそれぞれが楽器に対する自我っていうか自分の存在感みたいなものを考え始めていて。僕も自分の存在を歌で伝えたいと思ったし。だから個人的な歌が多くなってきたんですね。そうしてお互いの役割がはっきりして、よりバンドっぽくなったというか。

──お客さんの反応は変わってきました?

岩井郁人(Vo, G)

変わってきましたね。今まではライブで楽曲に肉体性を持たせるために、だいぶアレンジを変えなきゃいけなかったんです。その作業は楽しいんですけど、変換にすごく時間を取られて。なのでライブを想定して曲を作り始めてますね。今回もそういうことを考えて、全部120から130BPMぐらいの間になんとなく収めて作ろうと考えましたね。

──それぐらいのテンポがノリやすい。

そうですね。ライブを通して同じノリでカラダを揺らしていけるように意識しました。ライブももっとシンプルにしたいと思ってるんです。けっこういろんな楽器を使ってるんですけど、使いたいというよりは使わなきゃ再現できなかった。でもライブを重ねるうちにやることも明確になってきたので、今後はもっとシンプルになってくると思います。

──なるほど。今回はまりん(砂原良徳)が2曲でプロデュースしてますね。

今回「冬の向日葵」と「それぞれの日々へ」を一緒にやったんですけど、その前に別の曲で試しにやってみたんです。そのときからまりんさんはFOLKSのいいところを伸ばしたいと言ってくれてて。インディーズで出した「Take off」をすごく気に入ってくれてたんですよ。

──「Take off」はまりんがマスタリングをやったんですよね。

そうです。で、まりんさんはそのあとの作品を聴いて、「ちょっと外面を気にしすぎてないか」って言ってくれて。「よそ行きの歌だしアレンジだし、FOLKSらしさを取り戻そう」と。

──よそ行きってどういう意味でですか?

岩井郁人(Vo, G)

レコーディングのとき、まりんさんが僕があまり肩に力を入れずに普通に歌ったときのテイクを生かすことが多くて。カッコよく歌おうとすると、「ちょっと力入りすぎだよ」って言うんです。けっこう素朴な部分を使おうとしてましたね。それで「あ、そういうことなのか」と。いろいろなことがリンクしてるんですよ。個人的な歌がいいって言われることにも関係してる。まりんさんがFOLKSらしいって言うのもそういうところだったり。

──つまりは「人間味」ってことですかね。

うん。たぶんそうだと思います。あとは音もまりんさんと一緒にリズムトラックを作ったりシンセの音をセレクトしたりとかして……まりんさんってすごく音にこだわるじゃないですか。シンセの音を曲に合わせて(プリセットではなく)波形から作るくらいの感じなんで。それで音に対するスタンスみたいなものも、まりんさんから教わって変わりましたね。さっきも言ったように、まりんさんとやっていく中でどのジャンルのどのアーティストに近付けるとかいうんじゃなく、もっと自分のイメージで作っていくことの大切さとその可能性に気付きましたね。

──だいぶ勉強になりましたね。

かなり。今までは自信がないから音を詰め込みがちだったんです。ごちゃごちゃしてるというか。そういうことが最近徐々に少なくなってきた。今回もROVOの益子(樹)さんにミックスをお願いしたんですけど、まりんさん、益子さんと一緒に作業していく中で、一個一個の音のよさというか重要性みたいなものを重視するようになってきたんです。なので曲自体もシンプルになって、音も研ぎ澄まされてきたんじゃないかって思うんです。

ミニアルバム「SNOWTOWN」 / 2015年2月25日発売 / 2376円 / Ki/oon Music / KSCL-2654
ミニアルバム「SNOWTOWN」
収録曲
  1. CAPITAL MORNING
  2. CARVE OUT
  3. Northern Lights
  4. 冬の向日葵
  5. それぞれの日々へ
  6. UNIVAS
  7. キャスカ
FOLKS "In Bloom" Tour 2015
2015年5月5日(火・祝)愛知県 APOLLO BASE
2015年5月6日(水・祝)大阪府 Shangri-La
2015年5月9日(土)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
2015年5月15日(金)北海道 Sound Lab mole
FOLKS(フォークス)

FOLKS

2013年1月に結成された岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、野口一雅(B, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)からなる5人組。メンバー全員が楽曲制作を行い、ライブではサポートドラムを加えた6人編成でパフォーマンスを行う。2013年3月に初ライブを開催し、同月に自主制作盤「Take off」をリリース。一般公募枠で「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」にも初出演し、北海道内で着実にその名を広める。2014年2月にキューンミュージックよりメジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」を発表。2015年2月に地元北海道の冬をモチーフにしたミニアルバム「SNOWTOWN」をリリースした。なお岩井郁人と岩井豪利は兄弟で、メンバー全員が北海道恵庭市で共同生活をしながら音楽活動を行っている。