音楽ナタリー PowerPush - FOLKS

フロントマン岩井郁人の目覚め

自分たちの住んでる場所は特別

──そういう意識転換があって、自分の作る曲は変わってきました?

岩井郁人(Vo, G)

そうですね。今まではその……「あの曲のあの感じ」とか、「あのアーティストが使ってるシンセの音色」とか、ほかのアーティストが使ってる楽器をマネてみたり。そういういわば借り物的なところがあったんです。それが僕の個人的な部分だったり、自分たちが住んでる町の雪景色を音に変換したらどうなるだろうかって意識に変わってきた。別の音を聴いて、マネて音を作るんじゃなく、音以外の景色や映像や感情を音に変えて作っていくってやり方を最近するようになったんです。「氷を楽器で表現するとしたらどうすればいいだろう、ワクワクする気持ちをリズムで表現するにはどうすればいいだろう」って、そういう意識に変わってきましたね。

──つまり個人的なことを歌ったという「冬の向日葵」だったら、歌詞に寄り添ったような曲調になり、それに相応しい音を作っていくということですね。

そうですね。

──そこが以前とは違うところですね。

はい。「冬の向日葵」は弾き語りの状態からアレンジで肉付けをしていったという、言ってみれば当たり前の形で作ったんですけど、今まではアレンジの世界観設定が最初だったんです。例えば「吹雪のあとに恋人に会いにいく曲」という設定からアレンジを作っていって、そのアレンジからインスピレーションを受けてワードをチョイスしたりしていた。でも今は逆にチョイスしたワードからインスピレーションを受けてアレンジを変えてみたりしてる。だいぶ作り方は変わりました。

──音もそうだけど、歌詞は自分自身と向き合わないと、なかなか出てこないじゃないですか。

そうですね。

──そういう作業が好きじゃなかったというのがあるんですか。

岩井郁人(Vo, G)

ありますね。歌詞と自分個人の感情を切り離して考えてましたから。もともと歌詞を書くのは得意じゃないし、自分に向き合うこともしてこなかった。自分としては個人的な歌詞は書きたくなくて、アレンジを聴いてほしいし、アレンジで歌詞の世界を表現するみたいに歌詞は抽象的にしたいと思っていた。でもそうじゃない、「冬の向日葵」みたいな自分の個人的な歌というか……ある人を喜ばせたいとか、特定の誰かにいいと思ってもらいたくて作った曲をみんながいいって言ってくれる。僕としてはそういう歌詞を書けないわけじゃないけど、書きたくなかったんです。

──ふむ。じゃあ「冬の向日葵」を作ったとき、どこで歌うつもりだったんですか。

これは……人にプレゼントした曲で。

──彼女とか?

そうですね。友達にプレゼントするために曲を作ったりとか昔からしてたんですよ。母さんに作ったりとか。気恥ずかしいんですけど(笑)。そういうのはFOLKSの音楽とは別のものとして考えてたんです。それは“FOLKSの俺”じゃないし、FOLKSではできないと、まったく切り離して考えてたんですね。

──じゃあお母さんに作った曲だと、お母さんに向かって歌ったらおしまい、みたいな。

はい、自分で歌うのも恥ずかしいから、録音したものをあげる、みたいな。

──(笑)。それは面白いですね。

歌を作るときはけっこうそういう動機が多いですね。遠くに行く人に「大丈夫だよがんばれよ」って書いたのが「それぞれの日々へ」という曲だし。個人的な思いが歌になることが多いんです。

──ちゃんと歌う対象がはっきりしてて、歌いたいことも明確で、自分の真情がそこにこもっている。つまり嘘偽りない自分の心が投影されている。「いい歌」の条件がそろってますね。

岩井郁人(Vo, G)

でもそれをバンドでやることを避けてたっていう……(笑)。それができるようになってからアレンジの仕方も変わってきたし、歌詞と歌とアレンジがよりリンクして、歯車がかみ合った感じがしてて。

──歌いたいこと、表したいことがはっきりしていると、メンバーも音が付けやすいというのがあるんじゃないですかね。

それはたぶんありますね。

──なるほど。

だから今回はまず「冬の向日葵」を世に出そうと。じゃあどういうアルバムにするか。今の北海道の季節……冬から春にかけての北海道を切り取りたいなと。そういう気持ちで「冬の向日葵」を真ん中にしてほかの曲も書いていきました。この1年間、東京行ったり大阪行ったりライブでいろんな場所を回ってきたけど、自分たちの住んでる場所がほかの地域とは違う特別な場所だって再認識したんですよ。冬の雪景色も俺たちにしてみれば日常的な風景だけど、ほかの地域の人からは非日常的なものなんだなって。だったらそれを切り取ったら面白いかも、と思ったんです。

ミニアルバム「SNOWTOWN」 / 2015年2月25日発売 / 2376円 / Ki/oon Music / KSCL-2654
ミニアルバム「SNOWTOWN」
収録曲
  1. CAPITAL MORNING
  2. CARVE OUT
  3. Northern Lights
  4. 冬の向日葵
  5. それぞれの日々へ
  6. UNIVAS
  7. キャスカ
FOLKS "In Bloom" Tour 2015
2015年5月5日(火・祝)愛知県 APOLLO BASE
2015年5月6日(水・祝)大阪府 Shangri-La
2015年5月9日(土)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
2015年5月15日(金)北海道 Sound Lab mole
FOLKS(フォークス)

FOLKS

2013年1月に結成された岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、野口一雅(B, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)からなる5人組。メンバー全員が楽曲制作を行い、ライブではサポートドラムを加えた6人編成でパフォーマンスを行う。2013年3月に初ライブを開催し、同月に自主制作盤「Take off」をリリース。一般公募枠で「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」にも初出演し、北海道内で着実にその名を広める。2014年2月にキューンミュージックよりメジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」を発表。2015年2月に地元北海道の冬をモチーフにしたミニアルバム「SNOWTOWN」をリリースした。なお岩井郁人と岩井豪利は兄弟で、メンバー全員が北海道恵庭市で共同生活をしながら音楽活動を行っている。