WOWOW flumpool年末ライブ「FOR ROOTS」~シロテン・フィールズ・ワンスモア~|過去と未来をつないだ故郷でのリベンジライブ

「HELP」歌い納め?

──ファンの方に観てほしいシーンを教えてもらえますか?

尼川 俺は「素晴らしき嘘」の演出が好きなんで観てほしいです。リリックムービーが映し出される演出は、言葉がバシーンと伝わってきてすごいカッコよかった。

──演者としても映像演出が入るとテンションが上がりますか?

尼川 上がりますね。やっているときは観られないので、本番前にいろいろ詰めて想像しながらやる感じですけど、心強い演出というか。

──中盤以降は映像演出が入って、よりダイナミックに楽曲のメッセージやイメージが伝わるような内容でした。

尼川 はい。そういう意味では「夜は眠れるかい?」とかも観てほしいな。

阪井一生(G)

阪井 俺は「隠れた名曲シリーズ」のコーナーを観てほしい。

尼川 え? あそこ失敗コーナーじゃない?(笑)

阪井 歓声を4倍増しくらいにしてもらいたい……盛り上がると思ったのに。

尼川 盛り上がってなさをちょっと見てもらおうかな(笑)。

──見どころをお聞きしてるのに、ダメ出し大会になってますよ……でも「隠れた名曲シリーズ」のコーナーは、演出を含めて皆さんとしてはかなり気合いを入れてらっしゃいましたよね。

阪井 何年ぶりかに披露する曲ばかりだったので、リハではけっこう手こずったんです。でも、自分たちとしては楽しくやらせてもらったので、オンエアではぜひ観てもらいたいです!

山村 (笑)。僕は「HELP」のパフォーマンスですね。このライブをやるって決めた瞬間に本編の最後にやりたいと思ってたんです。これまで本編のラストではアンセムというか、シンガロングがある、盛り上がるようなタイプの曲を選んでたので不安もあったんですけど。ただ、今回は「HELP」で終わったほうがいいんじゃないかなと思って。

──どうしてですか?

山村 「HELP」は個人的な孤独を歌っているんですが、孤独なところから成長していくというメッセージも込めていて、去年1年を物語っているような歌なんですね。最初は1人だったのが、一歩を踏み出して助けを求めたことでいろんな人とつながることができて、最後はバンドとして大阪城ホールのステージに立つことができた。MCでも話したんですが、10年前にシロテンでライブをしてた頃の4人だったら、自分たちの弱さを見せるようなことはできなかったと思うんです。それが10年経って、自分たちの弱さを見せられる強さを得ることができた。それが歌として成り立った感覚があったんです。自分だけの歌だったのが、あの場で披露することでみんなの歌になったという実感もあったし。

尼川 ハマりすぎて、今後歌わないような雰囲気だったよ。歌い納めみたいな。

山村 ああ、それくらいの思いはあったかな。

尼川 じゃあ、10年後の「隠れた名曲コーナー」でやろう(笑)。

一同 ははははは(笑)。

「FOR ROOTS」は次に進むためのライブ

──「FOR ROOTS」というタイトルを冠した公演は過去3回とも大阪で行われていて、皆さんにとってこだわりのあるライブだと思うんです。その「FOR ROOTS」は、flumpoolにとってどういうものですか?

山村 タイトル通りルーツや根っこをたどるという意味もあるんですが、そのときの自分たちのリアルを表すようなライブにもなっている気がします。だからこそ緊張感もありますね。

──flumpoolはデビュー当時からライブをコンスタントに開催していますが、flumpoolにとって“いいライブ”の定義とはなんですか?

阪井 自分が楽しかったのはいいライブかな。

尼川 それは大事だな。あとは演奏がうまくいったライブ。でも、いいライブの定義は年々難しくなってるな。昔は自分が楽しければよかったんですけど、今はほかのメンバーやお客さんの雰囲気も気になってきた。

小倉誠司(Dr)

阪井 「自分が楽しい」とか言ってる俺はまだまだやん。

尼川 メンバーが楽しんでいるというのも大事だよ。例えば山村の声が出てるとか、すべてがうまいこといってないといいライブだとは思えない。まあ、誰かの調子がよかったらそれに引っ張られるところもあるんだよね。

山村 ああ。

小倉 俺はまだ自分では「いいライブ」の定義がわからないんですよね。変な話、それはずっとわかんないかもしれない。逆にそれがわかっちゃうと、「こうすればいいライブになるんだ」と型にハマってしまうし、バンドとして面白くなくなっちゃう気がする。

──正解がないからこそ、1回1回が真剣勝負ということですよね。

小倉 ええ。だから正解に向かっていくというより、昨日の自分たちを超えられたらいいし、昨日よりもお客さんが楽しんで笑ってくれたら幸せだし……1つでも前のライブよりも自分がいいと思える部分があったらいいんじゃないかな。

今回は脱がへん!

──さて、すでにニューアルバム「Real」のリリースも発表されていますが、2020年のflumpoolの展望を教えていただけますか?

山村 活動休止したことは自分たちにとってすごく大きなことで、その休止期間中に挫折や悔しさを経験したことで地に足が着いたんですよね。アルバムには等身大の自分たちがもう一度どんな夢を見ていくか、どう前に進んでいくかを表現した曲が入ると思います。「HELP」もそうですし、やっぱりそういう自分たちのリアルな部分が出るんじゃないかな。「Unreal」という非現実を意味するタイトルの1stアルバムをリリースした僕らが、10年経って自分たちの足でちゃんと立って、リアルな夢を追いかけていこうとしている感じ。

──そのつながりは面白いですね。

山村 「Unreal」とは対照的にしようという意図があるんです。

尼川元気(B)

尼川 まあ、昔に比べたらちょっとお尻は垂れちゃったけどね。

──そうだ、「Unreal」はジャケットが全裸の4人の後ろ姿でした(笑)。

山村 そんなリアルはいらんよ(笑)。

尼川 楽しみにしておいてもらおうかな。

山村 いやいや、今回は脱がへん!

──(笑)。アルバムをリリースしたあとはツアーも決まっています。

山村 はい。新鮮なツアーになると思います。去年のホールツアーや大阪城ホール公演では自分たちのこれまでの集大成的なセットリストを組んでいたので、それとは違うライブを打ち出していけたらと思っています。

──デビューから10年以上を経てまた新しいものを見せるというのは、なかなか大変なところもありますよね。

山村 でも、器用にやられても面白くないじゃないですか。それはやってるほうも観てるほうも一緒で、「これいけるかな?」というギリギリのバランスのほうが楽しいし。コケたらコケたで笑い話にすればいいだけ。この10年でそう思えるようになりました。

──以前は器用にやろうという感じがあったんですか?

山村 そうですね。コケたら終わりみたいなことは思ってたかも。

尼川 それが、今じゃコケまくってるもんね。

山村 (笑)。でも、それでいいと思えるようになった。そういうところも含めて、これからのflumpoolに期待してほしいです。

「flumpool年末ライブ『FOR ROOTS』~シロテン・フィールズ・ワンスモア~」の様子。