昨年10月にデビュー15周年という節目を迎え、現在周年イヤーを駆け抜けているflumpool。今年3月からは約3年ぶりとなるライブツアー「15th Anniversary tour 2024 This is flumpool !!!! ~15の夜に逢いましょう~」で全国を回り、それと並行して「君に恋したあの日から」「いきづく feat. Nao Matsushita」「SUMMER LION」という新曲を精力的にリリースしてきた。15周年という大きな節目を噛みしめつつも、彼らの視線はすでに未来へと向けられている。それを証明するように、7月14日に開催された全国ツアーの東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演では、ニューアルバムを制作中であること、来年5月からZeppツアーを開催することを発表した。
「15th Anniversary tour 2024 This is flumpool !!!! ~15の夜に逢いましょう~」は残すところ、山村隆太(Vo)の急性声帯炎により延期になった福岡・福岡サンパレスホテル&ホール公演の振替公演1本のみとなった。最終公演を前に、音楽ナタリーではメンバー4人へのインタビューを実施。15周年を迎えた気持ちから、15周年記念ツアーの手応え、今年リリースされた新曲の制作エピソード、そしてニューアルバムに向けた思いを聞いた。言葉の端々に滲む、16年目のflumpoolとしての決意を感じ取ってほしい。
取材・文 / もりひでゆき
今のflumpoolはすごくいい状態
──flumpoolは昨年10月にメジャーデビュー15周年を迎えました。改めて節目を迎えたお気持ちを聞かせてください。
小倉誠司(Dr) 一番は感謝の気持ちが大きいですね。ファンの方、スタッフの方、支えてくれた方々がいてくれたからこそ、ここまで来れたんだなと思います。約3年前に所属事務所から独立したこともあり、音楽を長く続けていくことの大変さを改めて認識することも多いですけど、ここから先、20周年、25周年と自分たちの音楽をちゃんと届けていくことができたらいいなと。そんな気持ちが強くなりました。
山村隆太(Vo) 僕らは今、15周年ツアーを回っているので、これまでのことをいろいろ振り返ったりとか、自分たちが何を成し遂げられたのかを考えることが多いんです。そんな自問自答に対して、明確な答えが見えたわけではないんですけど、ライブのときに楽曲を聴いて涙してくれるファンの方の姿を見たときに、自分たちが15年やってきた意味はそこに詰まってるような気がしたんですね。ファンの方々の人生の一部分になれていることにこそ、15年分の意味や価値があるんじゃないかなと。大きな節目のタイミングで、そんなミュージシャン冥利に尽きる思いをさせてもらえたことがすごくうれしいです。
尼川元気(B) 感無量であることは間違いないですよね。デビュー当時、15年後の自分たちの姿なんてまったく思い描けてなかったですから。言ったら、そんな長いこと続けられているとも思えていなかったし。逆に、もし生き残れているとしたら、もっとすごいミュージシャンになってると思ってました(笑)。
山村 あははは。
尼川 当時はもう0か100かで考えてましたからね。消えるか超ビッグになるかっていう。そういう視点で見れば今の自分らは微妙な立ち位置かもしれない(笑)。でも15年続けてこられたことはホンマに素晴らしいことだと思うし、僕らなりの価値みたいなものはちゃんと作れてきたような気はしますね。
阪井一生(G) 気付けば15年……あっという間な感じがしますよね。周りに「昔聴いてました!」と言ってくれる後輩が増えてきたりして。個人的にはそれがめっちゃイヤなんですけど(笑)。
尼川 わかる! めっちゃうまい後輩のバンドマンに「聴いてました」とか言われたくないよな(笑)。
阪井 そうそう。「いやいや、僕らなんか」となっちゃうんですよ。
──あははは。flumpoolの謙虚さたるや(笑)。
阪井 でも、山村はけっこうオラオラいくんですよ。
尼川 ちゃんと先輩として後輩に接してるよね。だから俺らは助かってる(笑)。
山村 いや、別にオラオラしてるわけではないですよ(笑)。でも自分らには少なくとも15年分の経験値があるわけだから、「俺はこうしたで」ということを話してあげたい気持ちはあるじゃないですか。
阪井 先輩アドバイスな。
山村 慕ってきてくれる後輩の期待に応えられないと、自分に対して悔しくなるときもありますからね。できる限り、下の世代を導ける存在でいたいなとは思ってますよ。なかなかうまくはいかないですけど。
阪井 まあでも15年経ってみて思うのは、flumpoolは今が一番いいんじゃないかなということで。メンバーの関係性もね、1周回ってまた友達的な感覚になれている実感もあるし。これだけ長いこと一緒にいれば、お互い死ぬほどキライな時期とかもありましたからね(笑)。あったやろ?
小倉 あははは。
山村 死ぬほどキライはないけど(笑)。
阪井 尼川はあるやろ?
尼川 そうね。そもそも今がそうじゃないとも言ってないしね。
阪井 そうか、そうやな(笑)。
──こういうやりとりを見ても、いい状況だというのは伝わってきますね。
阪井 うん。今のflumpoolはすごくいい状態やと思いますよ。
常に緊張感があって飽きる暇がないツアー
──3月からスタートした約3年ぶりの全国ツアー「15th Anniversary tour 2024 This is flumpool !!!! ~15の夜に逢いましょう~」も残すところ1公演。ここまで各地を巡って、どんな思いを抱いていますか?
阪井 15周年の“ベストツアー”のような意味合いだったので、セトリを考える時点でやりたい曲がありすぎて。1本のライブで収めるには時間が全然足りなかったんですよ。なので、今回はツアー中にセトリがどんどん変わっていきました。曲を入れ替えたり、流れを一気に変えたりしたので、常に緊張感があって飽きる暇がないというか。すごくいいツアーになっている実感があります。
尼川 1本のツアーの中で今回ほどセトリが変わるのは珍しいよな。
阪井 そうね。だからこそ15年分の軌跡を僕ら自身もたどれている感覚がある。
尼川 ツアーは公演を重ねていく中で、いい意味でどんどん煮詰まっていくじゃないですか。そこがすごく好きだし、それを15周年のタイミングで味わえているのもうれしいんですよね。途中、山村がまた止まりそうになってしまった瞬間もありましたけど。
──山村さんの急性声帯炎により、6月9日の大阪公演と6月15日の福岡公演が延期になってしまいましたね。
尼川 MCで「10周年はお祝いできなかったから」と言いつつ、15周年でもまた休みかけてしまったという。山村は周年に弱いんやなと感じました(笑)。
山村 何かあるのかもな(笑)。10周年のときも僕の喉のことで活動休止になってしまいましたからね。今回もツアーが順調に進んでいる最中での声帯炎発症だったので、ものすごく悔しかった。僕らとしてもこのツアーに懸ける思いは並々ならぬものがあったし、ファンの方からのお祝いの気持ちもたくさん届いていたので、本当に申し訳ない気持ちで。ただ、2公演を延期したあと、復帰後初となった6月22日の石川公演で大きな気付きがあったんですよ。正直、喉に関してはまだ本調子ではなかったんですけど、メンバーやファンの方々の力を素直に頼ることができて、ライブ自体を心から楽しめた自分がいた。音楽をやっていると完璧なものを見せたいという気持ちが強くなるけど、大切なのは決してそれだけではないなと改めて感じることができて。プロとして最低限クリアしなきゃいけないラインはもちろんありますけど、ライブにおいてはその瞬間、その空間を楽しみ尽くすという視点でいることもやっぱり大事なんだなと思いましたね。
──ある種、音楽家としての初心に戻れたところがあったのかもしれないですね。小倉さんは今回のツアーをどう楽しんでいますか?
小倉 改めて思ったのは、お客さんの爆発力のすごさなんですよ。コロナ禍以前を超える歓声をどの会場でも聞いていますし、盛り上がり方、ノリ方がもう日本のライブじゃないような感じで(笑)。コロナ禍でファンの方が抱えていたストレスって、俺ら以上だったのかもなとすごく感じました。そんな皆さんの盛り上がりによって僕らのテンションも上がって、演奏やパフォーマンスも変わってきますからね。残る1公演に参加してくださる方は、どんどん声を出して、ストレス発散してもらいたいですね。で、また翌日からの日常をがんばろうと思ってもらえたら最高だなと。
山村 うん。僕らも最後まで全力で駆け抜けますので。
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