flumpool「A Spring Breath」インタビュー|王道と新たな一面を詰め込んだ、独立後初のアルバム

flumpoolがニューアルバム「A Spring Breath」を3月16日にリリースした。

「A Spring Breath」はタイトル通り“春の息吹”がコンセプトの11曲入りのアルバム。新曲に加えて「君に届け」「花になれ」といった既発曲のリアレンジバージョンが収録され、全曲にアコースティックアレンジが施されている。共同アレンジャーとして杉本雄治(WEAVER)が参加し、作品のサウンドに彩りを添えている。

昨年7月に新会社を設立し、自らの足で新たな旅をスタートさせたflumpool。音楽ナタリーでは彼らにとって独立後初のアルバムとなる「A Spring Breath」のリリースを記念してインタビューを行い、4人にアミューズからの独立を決めた理由や現在のバンドの状況、そしてアルバムの制作エピソードを聞いた。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 曽我美芽

ファンと僕らの関係性は独立しても変わらない

──まずは昨年7月に発表された、株式会社アミューズからの独立(参照:flumpoolがアミューズから独立、新会社設立しA-Sketchと業務提携)にまつわるお話から聞かせてください。新体制で活動をすることを選んだ裏にはどんな思いがあったのでしょうか?

山村隆太(Vo) 独立に関しては発表の2年以上前から考えていたことではあったんですよ。オフィシャルのコメントでも書きましたけど、僕らを育ててくれたアミューズは豪華客船みたいなもので、どんなに遠い目的地であっても素早くたどり着くことができる。それはデビューから1年で日本武道館に僕らが立てたことが証明していると思うんですけど。そんな恵まれた環境にはすごく感謝していました。ただ、flumpoolがバンドとしてもうひと皮剥けるため、新たなステージに立つためには、改めて自分たちの足で前へ踏み出すことが大事だなと思ったんです。夢を叶えたいならばアミューズにいたほうが近道ではあるけど、そうじゃなく、失敗したり転んだりということも含めて自分たちでちゃんと経験しなければ学べないものがこの先にはきっとあるはずじゃないかなと。そこで、ある種原点に立ち返る気持ちで、4人だけでやってみることを決めたんです。

山村隆太(Vo, G)

山村隆太(Vo, G)

阪井一生(G) コロナ前からけっこう話し合ったもんな。珍しく4人だけで集まって話し合ったことが何度もあったし。

尼川元気(B) うん。話し合いの過程ではそれぞれにいろんな考えがあったけど、でも最終的には独立という形で一致して。もちろんそこには不安もありましたけどね。

小倉誠司(Dr) 不安は当然あったよな。ただ、独立に関しての発表をしたときに、ファンの方たちが僕らの背中をしっかり押してくれたんですよ。「これからもついていきます。がんばってください」といった、前向きなメッセージをたくさんいただけて。お互いに支え合うファンと僕らの関係性は独立してもなお変わらないものなんだなと気付けたことは、大きな力になりましたね。

小倉誠司(Dr)

小倉誠司(Dr)

──独立から約8カ月が経ちましたが、今の状況はいかがですか?

尼川 日々、やることや考えることがめちゃくちゃ多くなったので、8カ月しか経ってないとは思えない感じですね。「これを使うといくらかかる」とか、お金についてまで4人で考えていくのは正直めんどくさいことなんですけど(笑)、その反面、知らない世界に飛び込んでいく感覚にワクワクしているところもあります。

──活動にまつわるバジェットに関して、今まではノータッチでも進んでいけたわけですもんね。

尼川 そうそう。そこに関してはまったく知らなかったですから。でも今はそこもしっかり考えていかないといけないという。30代後半になってまた新しいことができている喜びはありますよ。「生きてるなー!」って実感してます。

──デビュー直後にブレイクを果たしたflumpoolは一見、順風満帆に歩んできたように見えると思うんですよ。でも、実際は多くの人に認知された“flumpoolらしさ”みたいな部分に縛られ、そこを壊そうとたくさんもがいてきたバンドでもあるような気がしていて。だから独立のニュースを見たときは、ここからより自由に、柔軟に音楽活動をしていく決意を固めたんじゃないかなと思ったりしたんですよね。

山村 確かにそうかもしれないですね。僕らは最初の滑り出しがよかった分、そのイメージにとらわれてしまうところはありました。昨日の自分が敵になる、みたいな。だからこそ僕らは常に変化を求めながら活動をしてきたし、その一方で変われない、変わってはいけない自分たちが見えてきたところもあって。その中で、flumpoolとして表現するにふさわしいものを作るために葛藤をしてきたところはありましたね。

阪井 もっといろんなことができるのにという思いはあったかな。イメージを崩そうと努力していた時期も確かにあった。正直、提供曲でデビューしたことも含め、当初はバンドマンとは思われていないような印象でしたからね。「いやいや俺たちバンドマンやで」みたいな思いを提示したかったんやと思う。ここ数年でその思いは払拭されて、自分たちをナチュラルに出せるようになってはきたんですけどね。

小倉 そのうえで、ここからはいろんな表情のflumpoolを見せていける可能性が広がったように思いますね。自分たちの王道を突き進みつつ、一方では今まで手を出していなかったような新しい僕らの姿もちゃんと見せられるというか。独立をしたことでフットワークが軽くなったところは間違いなくあると思うので。

阪井 確かにフットワークはだいぶ軽くなった気がする。ここからはやりたいことにどんどんチャレンジしていきたいと思いますね。

阪井一生(G)

阪井一生(G)

今の4人のやりたいことをやろう

──独立後、初となるアルバム「A Spring Breath」がリリースされました。これは昨年12月に大阪、神奈川、東京のBillboard Liveで開催されたアコースティックライブ「ROOF PLAN ~Acoustic in Billboard Live~」からの流れを汲んだコンセプトアルバムになっているんですよね。

山村 はい。独立を経て「今の4人のやりたいことをやろう」という話になったときに、路上ライブからスタートした自分たちの原点に戻る意味も込めて、アコースティックを軸に作品を作ることを決めて。そんな中でBillboard Liveでライブができることも決まったので、そこでやる過去曲のリアレンジバージョンも含め、ライブの準備とアルバムの制作を並行して進めていった感じでした。

阪井 結果的には全然原点じゃない作品になったけどな。ただアコギが鳴ってるだけ(笑)。

尼川 全然アコースティックちゃうもんな(笑)。

尼川元気(B)

尼川元気(B)

──あははは。何をもってアコースティックと呼ぶかという定義の話になってきますけどね。でも、ホーンやブラス、ストリングスを織り交ぜた楽曲はどれも柔らかで心地よいムードを持っていて。アコースティックと呼んでも違和感がない仕上がりだと思います。

山村 そういった雰囲気になったのは今のご時世も影響したのかなとは思いますね。コロナ禍においてはみんなで歌ったり踊ったりすることができないので、自然とゆったり聴けるものになっていったというか。

──Billboard Liveという会場の雰囲気にもマッチするものですし。

山村 そうそう。食事やお酒を楽しみながら静かに座って音楽に身を委ねてもらうにはこういうサウンド感がマッチするとも思ったので。自分たちとしてもね、ちょっと大人の余裕を感じさせるような音楽を鳴らせる年齢になったんだなという感慨みたいなものもありました。ただ、アレンジに関しては一生がかなり試行錯誤したみたいですけど。

阪井 もともと、アコースティックなサウンドが好きなので、4人だけの世界を聴かせていくのも面白いなと思って取りかかったんですけど、アレンジはまあ大変でしたね。過去曲のリアレンジバージョンに関してはかなりガラッと変えたんで、それをライブで演奏するのもめっちゃ大変でしたし。

──アコースティックと呼ぶには豪華すぎるサウンドにしたのはどうしてだったんでしょう?

阪井 シンプルなアコースティックアルバムじゃファンは喜んでくれないと思ったんですよ。僕自身も、それじゃおもんないなって思っていたし。だったら既発曲のリアレンジは原型がわからんくらいのものにして、新曲に関してもしっかり大人な世界を作り上げたいなと。とは言え、ジャズとかそういった音楽を僕らは通ってきてないので、まずはそういったサウンドの研究から始めなきゃいけなくて。いろんな曲を聴きながら、「こういうコード進行を使うとおしゃれになるんやな」みたいな(笑)。

──今回、アレンジにはWEAVERの杉本雄治さんが参加されていますよね。

阪井 杉ちゃんはクラシックの知識があるので、今回はいろいろ勉強させてもらう意味でアレンジに入ってもらうことにしました。その流れでBillboard Liveでのライブにも出てもらいました。ストリングスや普段あまり使うことのないホーンは今回のアレンジにはすごくマッチするもので、曲に温かみが出たような気がします。そこは杉ちゃんの助けを借りながらいろいろチャレンジできた部分だと思います。