音楽ナタリー Power Push - flumpool

月9出演、映画主題歌、武道館2DAYS めまぐるしい2017年の近況報告

忘れることがどんな意味を持っているんだろう

──「ラストコール」の歌詞は「未来への願い」というテーマで書かれたそうですね。

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山村 はい。映画には“すべてを忘れない”という能力を持つ(浅井)ケイという主人公が出てくるんですね。この曲はそんなケイの歌にしたかったので、まずは人間にとって忘れることがどんな意味を持っているんだろうっていうことから考え始めて。

──ケイの持つ能力って、すごくいいもののような気がしますよね。学生ならテストで最強の武器になるでしょうし。

山村 素直に考えるとそう思いますよね。でも、誰しもが人生の中で忘れたい過去や忘れたい経験を持っているし、実際それを忘れることで気持ちをラクにしながら生きているところもある。だから、そういったつらく悲しい過去さえも忘れることができないケイは、実はすごくかわいそうだなって僕は思ったんですよ。

──なるほど。

山村 ただ、一方では忘れないからこその強さもあると僕は思っていて。例えば好きな人と出会ったときの気持ちとか、僕らで言えばこの4人で夢を追いかけていこうと決めたときの気持ちとか、そういったものを忘れずに、大切に持ち続けることの強さは絶対にあると思うんです。だからこの歌詞ではケイの抱いている強さと脆さを描くことで、すべての人にとっての明日を生きていくための希望や力になればいいなと思ったんですよね。僕ら自身、デビュー10周年を間近に控えるバンドとして、その強さと脆さをしっかり背負い、過去を否定することなく今を、明日をどう生きていくかを考えることが重要だなとも思ったので。

──タイトルになっている「ラストコール」という言葉にはどんな思いが込められているんですか?

山村 映画には世界を最大3日分巻き戻せる“リセット”という能力を持った春埼美空という子が出てくるんですけど、彼女に向かってケイが「春埼、リセットだ」って言うセリフがあって。それを聞いたときに、リセットっていうのは終わりの言葉ではなく、始まりを告げる最後の言葉のような気がしたんです。そういうこともあって、この歌が未来を生きていく人たちにとって大切なラストコールになればいいなと思ったんですよね……と言いつつ、その意味はあと付けで。実はこのタイトル、一生のデモの仮タイトルだったんです。

尼川 うん、歌詞もまだ付いてない段階での仮タイトル。

──阪井さんはどうしてこの言葉をタイトルにしていたんですか?

阪井一生(G)

阪井 今、山村が言った意味と一緒です。

尼川 嘘付け!

阪井 ホントだって。映画の原作を読んだときに、ラストコールという言葉の響きがカッコいいなと思ったっていうのもありましたけど。僕にしては珍しく原作から受け取ったものを仮タイトルにしていたんですよ。

山村 それを見て俺もいいなって思ったし、映画のプロデューサーさんもすごく気に入ってくださったしね。このタイトルでよかったと思います。

──壮大なスケール感のあるこの曲は劇中で感動的に使われそうですよね。完成した映画はご覧になりました?

山村 僕は観ました。この映画の主人公たちは強い信念をぶつけ合っているんですけど、そのぶつかり方がすごくさわやかというかね。透明感のある感じなんですよ。どこか美しい川の流れを見ているような、心にスッと入ってくる映画なんです。その最後に、ちょっと激しいイントロを持ったこの「ラストコール」が流れるところにはいい意味でのミスマッチさもあると思うし、その雰囲気が登場人物たちの感情の裏側をどんどんまくり上げていき、次の物語に続いていく感じがしたんですよ。

──映画「サクラダリセット」は5月に後篇の公開が控えていますからね。「ラストコール」がそこへの橋渡し的な役割も担っていると。

山村 そうですね。うん。登場人物たちがどうなっていくか、物語はどんな結末を迎えるのかっていう期待感を煽るように曲を使ってくれているので、僕らとしてもそれはすごくうれしかったですね。

ピアノ1本でも歌えるような、とにかくいい曲にしよう

──そして、今回のシングルのカップリングに収録されるバラード「ナミダリセット」が、映画「サクラダリセット」後篇のエンディングテーマとして使われるという流れですね。

阪井 はい。「ラストコール」がスケールの大きな曲になったので、後篇のエンディングを飾るこっちの曲は逆にすごく狭い世界を描くようなバラードがいいなと思ったんです。これも“ザ・flumpool”な曲だと思いますけど、いつも以上にメロディを意識して作ったところはありましたね。ピアノ1本でも歌えるような、とにかくいい曲にしようと。

──メロディを意識すると曲の作り方にも変化はあるものですか?

阪井 いつもはだいたいギターを弾きながらそこで降りてきたメロディを拾っていく感じなんですけど、今回は何もない中でメロディを考えて、そこにあとからコードを乗せていく作り方をしました。そういう作り方はひさしぶりかもしれないです。

──大切に紡がれた美しいメロディを引き立てるように、アレンジはすごくシンプルですが、アウトロには感動的な展開が待っていますね。

小倉誠司(Dr)

小倉 音数少なく始まってサビで世界観を広げるというバラードの定番ではあるので、演奏に関しては全体的にいい意味で抑え気味にはなってると思います。ただ、アウトロではそこまで抑えていた感情を一気に爆発させる感じもあって。あのアウトロは僕もすごく好きっすね。子供のコーラスがいい雰囲気だし。

阪井 子供たちの声で合唱のようなコーラスを入れるっていうは先方のアイデアでしたね。未来につながっていく雰囲気を出したいということだったので。

──ライブではオーディエンスみんなと歌い、いい景色が生まれそうです。

阪井 そうですね。みんなで合唱できればいいですよね。

ニューシングル「ラストコール」 / 2017年3月15日発売 / A-Sketch
初回限定盤 [CD+DVD] / 2160円 / AZZS-62
通常盤 [CD] / 1296円 / AZCS-2061
初回限定盤CD収録曲
  1. ラストコール
  2. ナミダリセット
  3. キズナキズ
<BONUS TRACK>
  1. 花になれ
  2. MW ~Dear Mr. & Ms. ピカレスク~
  3. 大切なものは君以外に見当たらなくて
初回限定盤DVD収録内容
  • flumpool COUNTDOWN LIVE 2016→2017 「FOR ROOTS」~シロテン・フィールズ・フォーエバー~@大阪城ホール Special Live Digest & Making of Live
通常盤CD収録曲
  1. ラストコール
  2. ナミダリセット
  3. キズナキズ
  4. ラストコール(Instrumental)
  5. ナミダリセット(Instrumental)
  6. キズナキズ(Instrumental)
flumpool(フランプール)
flumpool

山村隆太(Vo)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の4人からなるバンド。2008年10月に配信シングル「花になれ」でメジャーデビュー。2009年にシングル「星に願いを」のヒットで注目を集め、10月には初の東京・日本武道館公演、年末には「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。デビュー5周年を迎えた2013年10月には日本武道館で2日間にわたりスペシャルライブを行い、2014年5月に初のベストアルバム「The Best 2008-2014『MONUMENT』」を発表。2015年8月にバンド初の単独野外公演を故郷である大阪・大泉緑地で開催した。アニメ映画およびテレビアニメ「亜人」主題歌「夜は眠れるかい?」を含むシングルを2016年2月にアルバム「EGG」を3月に発表し、4月よりライブツアーを実施。11月にニューシングル「FREE YOUR MIND」をリリースした。12月31日には大阪では初となる単独でのカウントダウンライブ「flumpool COUNTDOWN LIVE 2016→2017『FOR ROOTS』~シロテン・フィールズ・フォーエバー~」を開催。2017年3月に映画「サクラダリセット」の主題歌「ラストコール」をシングルとしてリリースする。5月に3度目となる東京・日本武道館2days公演を行い、その後、全国ツアー「flumpool 8th tour 2017『Re:image』」をスタートさせる。また山村は、フジテレビ系ドラマ「突然ですが、明日結婚します」で俳優デビューを飾った。