ナタリー PowerPush - flumpool

フロントマン山村隆太が振り返る5年

flumpoolがキャリア初のベストアルバム「The Best 2008-2014『MONUMENT』」を発表した。

本作にはau「LISMO」のCMソングとして使用され、バンドの知名度を一気に広げた「花になれ」、同名映画の主題歌としても話題を呼んだ「君に届け」、フジテレビ系朝の情報番組「めざましテレビ」の月曜日のデイリーテーマソング「明日への賛歌」、アニメ「キャプテン・アース」のオープニングテーマとして制作された「ビリーバーズ・ハイ」など、ヒット曲、代表曲、最新曲をコンパイル。デビューから5年間の彼らの軌跡──数多くの葛藤や悩みと向き合いながら、バンドとしてのアイデンティティを手に入れるまで──が刻み込まれている。

今回ナタリーでは、山村隆太(Vo, G)にインタビュー。代表曲のビデオクリップを観ながら、時代をさかのぼる形でこれまでのキャリアをじっくり振り返ってもらった。

取材・文 / 森朋之

2014年「明日への賛歌」「ビリーバーズ・ハイ」

明日への賛歌
ビリーバーズ・ハイ

──まずは現在行われている全国ツアー「flumpool 5th Anniversary tour『MOMENT』」について。ツアーも中盤に差し掛かってますが、ここまでの手応えはどうですか?

大変ですね、いろんな意味で。「MOMENT」と題したからには、その日、その瞬間にしか観れないライブをやろうと思ってるんですけど、そのぶん大変でもあり、手応えもあるっていう。

──アレンジを変えている楽曲もあるそうですね。

そうなんですよ。具体的なことは会場に来ていただいたときのお楽しみにしておきたいんですけど(笑)、すごくこだわってアレンジしていて。今回はバイオリンの方も入っていて、キーボーディストと合わせて6人でツアーを回ってるんですね。ストリングスは自分たちの楽曲にとってもすごく重要だし、それを生の音で表現することで臨場感も増すんじゃないかな、と。バンドとの兼ね合いもあるし、1曲1曲バランスを考えながらやってます。

──ベストアルバムの曲順は年代順ではなく、ライブのセットリストのような構成ですよね。

そうですね。DISC 1は「花になれ」、DISC 2は「明日への賛歌」を1曲目にしたいっていうのは決まっていて。今のツアーの1曲目は「花になれ」ではないんですけどね。もしかしたらアリーナ(※8月に行われる横浜アリーナおよび大阪城ホール公演)はそうするかも……って、あんまり言わないほうがいいか(笑)。

──「明日への賛歌」はツアーのテーマソングにもなっているそうで。

“5年目のスタート”という意味もあるんですよね、この曲は。ここから自分たちが成長していく上での、芯になるメッセージというか。自分たちに対する応援ソングみたいな感じもあって……明日が見えなくなった時期もありましたからね、実際は。去年の11月の武道館ライブが終わったあと、「これから先、どうしていくか?」ということが見えなかったんですよね。スタジオに入って曲を作ったんですけど、なかなかうまくいかなくて。苛立ったり、モチベーションが下がったり、メンバーともケンカみたいになったりして、「逃げ出したい」っていうときもあったし。

──かなりシリアスな状況ですね、それは。

でもそこから「もう1回、この4人で明日を夢見たい」と思うようになったんですよね。変わることに対して臆病になっていた自分たちもいたし。変化したり、壁にぶつかることから逃げてたらダメだという気持ちも生まれてきて。「明日への賛歌」の2番のサビで「僕を 縛り付けてよ もう逃げられないように」という歌詞があるんですけど、それも強い決意の表れというか。あと、曲の作り方も変わったんですよね。今までは(阪井)一生が曲を作って、僕が歌詞を書くという分業制だったんですけど、この曲を作ったときは一生の家に泊まり込んで、合宿みたいな感じでやっていて。「このメロディにハマる歌詞は何だろう?」って2人で考えたり、その場で仮歌を入れたり……。

──より密接な共同作業になった、と。「明日への賛歌」のPVからも“ここから新しい日が始まる”というイメージが伝わってきました。

これ、朝日をバックに歌ってるんですよね。夕方の6時くらいから撮り始めて、最後は朝日が昇ってくるっていう。それが希望の象徴にもつながってると思います。風が強くて大変でしたけど(笑)。

──一方「ビリーバーズ・ハイ」のPVは近未来的な映像ですね。

監督が新宮良平さんという僕らと同じ歳くらいの人なんですよ。宇宙と地球をつないで物資を運ぶ“宇宙エレベーター”がモチーフになっていて。その中に自分たちが乗ってるイメージですね。で、最後に太陽に照らされて燃え尽きるっていう勢いで。撮影中、監督さんに「もうすぐ死ぬぞ!」って宣告されながら撮影していました(笑)。

──歌詞の中に出てくる“君”はファンのことをイメージしてるんですか?

僕らにとってはファンの方ですね。どんなに悩んでいても、ライブをやることで報われる感じがあって。「君がいるから、僕らも明日を信じていられる」という気持ちも込められてます。

2013年 「強く儚く」「大切なものは君以外に見当たらなくて」

強く儚く
大切なものは君以外に見当たらなくて

──続いて2013年。山村さんにとって、この年の印象は?

大きい場所でライブをやった印象がありますね。年始にアリーナライブ(※横浜アリーナ、大阪城ホール)があって、10月には武道館でやって。フェスでも大きいステージでやらせてもらったし……。

──特に2009年に続く2度目の武道館ライブは強く印象に残ってます。武道館で5年間の集大成を見せるんだという気合いがみなぎっていて。

そうですね。武道館の前にも、いろいろあったんですよ。ちょっとモメたというか、(尼川)元気が「バンドとして“まだまだ”なところがあるのに、そこに向き合わずに来てしまったんじゃないか」ということを言い出して。バンドとしての骨格っていうんですかね? グルーヴ、音作り、レコーディングに関しても足りない部分がたくさんあるのに、今までの馴れ合いで見過ごしてきたんじゃないか、と。

──ものすごく真っ当な意見じゃないですか。

そうなんですよ。そういう話がリハーサルの真ん中であったんで、その後リハを再開したときはどこかスッキリした感じもあって。元気ってときどきそういうことを言い出すんですよね。年に1回くらいだけど。

──年に1回って(笑)。「大切なものは君以外に見当たらなくて」はどんなテーマで制作されたんですか?

この曲を作ってるときもいろいろありましたね。「曲作りが順調だったことなんてなかったんじゃないか」と思うくらいなんで。この曲については……バンドもそうですけど、身の回りにはいろいろな問題があるじゃないですか。その中には、自分だけの力では解決できないことも含まれていて。それでも僕たちは生きていかなくちゃいけないんだけど、例えばライブに来てくれた人たちが楽しんだり、笑っているところを見ると「自分の悩みなんて小さいな」と思えることがあって。まさにそういう気持ちを表現しているんですよね。

──やはりファンとの関係の中で生まれた曲なんですね。

アリーナや武道館でライブをやったり、フェスで大きいステージに立たせてもらうと、もちろん光栄に思うし「ありがとう」という感謝の気持ちがあるんだけど、同時に「1人ひとりの人に1対1で向き合うことも大事だな」と思うんですよね。そういう関係が持てているからこそ、ステージでも胸を張っていられるので。……ただねえ、「大切なものは君以外に見当たらなくて」の時期は一生さんが見当たらなかったんですよ(笑)。

──ダイエット企画でしばらくバンドを離れてましたからね(笑)。同年に発表された「強く儚く」については?

5年間の総括ではないですけど、自分たちの真ん中にあるメッセージを伝えたいという気持ちはありました。「花になれ」という曲は「花のように、散ることを恐れないで咲き誇ろう」という曲だったんですけど、5年経っても同じことを思ってたんですよ。「儚く散ることがあったとしても、花のように強く咲きたい」っていう。「強く儚く」って反対の言葉が並んでるように聞こえますけど、実は表裏一体だと思うんですよね。

ベストアルバム「The Best 2008-2014『MONUMENT』」/ 2014年5月21日発売 / A-Sketch
初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 3996円 / AZZS-21
通常盤 [CD2枚組] 3456円 / AZCS-1030~1
DISC 1 収録曲
  1. 花になれ
  2. 星に願いを
  3. どんな未来にも愛はある
  4. 春風
  5. 君をつれて
  6. 微熱リフレイン
  7. Belief ~春を待つ君へ~
  8. MW ~Dear Mr. & Ms. ピカレスク~
  9. 「labo (Re-format)」
  10. two of us
  11. 強く儚く
  12. Over the rain~ひかりの橋~
  13. ビリーバーズ・ハイ
  14. 覚醒アイデンティティ
DISC 2 収録曲
  1. 明日への賛歌
  2. reboot ~あきらめない詩~
  3. 大切なものは君以外に見当たらなくて
  4. 今年の桜
  5. 残像
  6. Because... I am
  7. Touch
  8. Answer
  9. イイじゃない?
  10. 見つめていたい
  11. Hydrangea
  12. Snowy Nights Serenade~心までも繋ぎたい~(Choral Xmas Ver.)
  13. 夏Dive
  14. 君に届け
  15. フレイム
初回限定盤DVD 収録内容
  • 「Music Heartbeat~Recording Documentary & Studio Live~」
DVDシングル「ビリーバーズ・ハイ」/ 2014年5月21日発売 / A-Sketch
[DVD] 1080円 / AZBS-1019
収録内容
  1. 「ビリーバーズ・ハイ」ミュージックビデオ
  2. テレビアニメ「キャプテン・アース」ノンテロップ オープニング映像
flumpool(フランプール)
flumpool

山村隆太(Vo)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の4人で2007年に結成。2008年10月にメジャーデビュー作となるダウンロードシングル「花になれ」を発表し、10日間で100万ダウンロードを記録した。同年11月にはデビューミニアルバム「Unreal」をリリース。2009年にはシングル「星に願いを」のヒットで注目を集め、10月には初の日本武道館公演、年末には「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2010年12月には4日間に渡るアリーナライブも大成功に収め、2011年9月に「第78回NHK全国学校音楽コンクール」中学校の部課題曲に起用された「証」をシングルとしてリリースし、3年連続で「NHK紅白歌合戦」に出演。2012年3月からは過去最大規模となる全国ツアー「5th tour 『Because... I am』」を行い、12月にアルバム「experience」を発表した。2013年に入ってからは横浜アリーナと大阪城ホールでアリーナ公演を、アジア圏でのCDリリースおよび海外ライブも行う。7月にシングル「大切なものは君以外に見当たらなくて / 微熱リフレイン」を、10月にシングル「強く儚く / Belief ~春を待つ君へ~」を発表。デビュー5周年を迎えた10月には、日本武道館で2日間にわたりスペシャルライブを行った。2014年4月からは全国ツアー「5th Anniversary tour 2014『MOMENT』」を開催。5月に初のベストアルバム「The Best 2008-2014『MONUMENT』」とDVDシングル「ビリーバーズ・ハイ」を同時リリースした。8月には神奈川・横浜アリーナと大阪・大阪城ホールで、全国ツアーのアリーナ公演を控えている。